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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、日本国内において緊急事態宣言が発令されていましたが、2020年5月25日に解除されました。
その間は政府からもテレワークやオンライン授業が推奨され、実際に色々な企業や学校で実施されたと思います。
ソフテックでも世の中の例に漏れず、東京にある本社事業所で在宅勤務を実施いたしました。
私は新宿区四谷にある本社事業所に勤務し、また勤務期間は20年を超えていますが、今回、初めて在宅勤務を体験しています。
今回のソフテックだよりでは社内ネットワークも含めた基幹システム担当グループの一人として、また実際に在宅勤務を行って感じたことを取り上げたいと思います。
中国で新型コロナウイルス感染症の報道が出始めたころはそうでもありませんでしたが、クルーズ客船ダイヤモンド・プリンセス号をはじめとした新型コロナウイルス感染症関連の報道がTVのニュース番組などで色々と取り上げられるにつれ、ソフテックでも何かしらの対策が必要ではないかという雰囲気が次第に増していきました。
ただ、ソフテックではパソコン用のソフトウェア開発であっても各種機器、マイコン基板、PLCなどといったデバイスと連携する開発が多く、またパソコン用のソフトウェア開発だけでなくマイコンやPLCなどのパソコン以外のソフトウェア開発も多数あります。そのため、単にパソコンだけ用意すればデバッグやテストを含めたソフトウェア開発を行えるようなケースは少なく、在宅勤務は難しいのではないかという意見が多くありました。また、在宅勤務が可能な環境を社員分用意できるかの課題もあり、これらをクリアする必要がありました。
さらに、本社事業所は今年の2020年3月23日に現在のYOTSUYA TOWER(CO・MO・RE YOTSUYA オフィス棟)に移転を行っています。その移転関連の作業もあってどう対策していくかについての取り組みにも最初はなかなか着手できにくい状況でした。
移転が完了して、ある程度落ち着き始めたところから、今度は緊急事態宣言の発令が現実味を帯びてきました。そこで本格的に何かしらの対策が必要だということで、本社のグループ長が集まって話し合いが行われました。
そこから在宅勤務の実施までにいくつか紆余曲折がありましたが、結論として次の通りに決まりました。
・都内で感染確認者が多く出ており、また公共交通機関を使って通勤する社員が多い本社事業所(東京都新宿区)では在宅勤務を行う。
・県内では感染確認者がほとんどおらず、また社員全員が車通勤している八戸事業所(青森県八戸市)では在宅勤務を行わない。
在宅勤務を始めるにあたって、実際に在宅勤務が可能かどうか、また在宅勤務の環境はどうなのかについて確認し、色々な準備を行いました。
ソフテックの主な業務はソフトウェア開発となりますが、ソフテックでは第2章で述べた通り、パソコンだけで開発が完結するソフトウェア開発は多くありません。
そのため、そもそも在宅勤務が可能か?の段階から検討を行っています。
結論としては、基板や機器をつなぎ変えたりする等の物理的な操作がなければ、リモートで作業できることが分かりました。そのため、基本的には社内にパソコンを立ち上げておき、そのパソコンにVPN(Virtual Private Network)経由でリモート接続(リモートデスクトップ接続)して操作する方法に落着きました。
しかし、それでも確実にリモートで作業できるかの確証がなかったため、まずは週1日の在宅勤務を行い、何とかなるようであれば順次その日数を増やしていく、模索も含めた形で在宅勤務を開始しています。
在宅勤務では、作業環境(机、椅子など)、作業するためのパソコンやインターネット通信環境などが必要となります。
そこで在宅勤務の対象となる社員に確認を取り、基本的には在宅勤務に耐えうる状況であることやセキュリティ対策や情報管理が問題ないことを前提とし、それが不足するようであれば補完する形で進めています。
在宅勤務自体の作業環境については各自での対応となりますが、作業するためのパソコンは出張への持ち出しとして運用していたセキュリティ対策済みのノートパソコンの貸し出しを行いました。また、インターネット通信環境が不足する場合はモバイル通信端末の貸し出しを行いました。
ソフテックでは、1996年からグループウェア製品の1つであるLotus Notes(現在はHCL Notes。以下、Notesと表記)を使って情報共有を行っております。
日々の報告や事務手続きといった処理もNotesデータベースを自社開発することで対応しており、また、だいぶ前からペーパーレスに取り組んでいます。そのため、情報共有に関してはそのままNotesを使用しています。
社内であれば声をかけるなどで簡単にホウレンソウができますが、在宅勤務ではそういうわけにもいきません。そうかといってメールではリアルタイム性にかけ、また携帯電話(個人携帯)だと通話料の発生や複数でのオンライン打ち合わせといったことが難しいなどの課題があります。
これらの課題をクリアするには、コミュニケーションツールの活用が必須となるため、どのツールを活用していくか?の検討を行っています。
しかし、検討期間をとる時間的な余裕がなかったため、4月上旬から開始した在宅勤務1回目では、まずは実際に在宅勤務でいろいろなツールを使ってみようという結論になりました。
具体的なコミュニケーションツールとしては、Microsoft Teams、Skype、Slack、Zoom、LINEなど多数のソフトウェアがあります。
基本的には在宅勤務中はパソコンを使って作業をするため、そのパソコン上で稼働するコミュニケーションツールが前提となり、まずはSkype、Slackあたりが候補となり、所属グループごとにコミュニケーションツールを検討して試用を行っています。
私が所属するグループでは、Skypeを使って連絡を取り合い、定時連絡、グループ/個別チャット、Webミーティングなどを行いました。
社員側の準備だけではなく、会社側での通信環境の準備も並行して進めました。
元々、出張先などからリモート接続する環境がありますのでそれをベースに準備しています。
事前準備としてはインターネット通信環境の確認、VPN接続の確認、リモート接続の確認などを実施しています。
実際に在宅勤務を開始したのは緊急事態宣言が発令された4月上旬からです。
その在宅勤務も最初からすべてがうまく行った訳でもなく、いくつもの問題が出ました。
初めての在宅勤務であり慣れていないこともありますが、中には想定できていなかった問題もあります。
社内で報告された項目はおよそ次のようなものです。
ここではその問題の中で、複数の社員で作業効率の低下の原因となった通信問題を取り上げたいと思います。
まず、最初に挙がったのは、リモート接続が不安定になる問題でした。
症状としては、VPN接続が切れたり、つながらなくなったり、リモート操作の応答がなくなったりと様々でした。
最初は原因が分からず、サーバーの設定調整や社内ネットワーク調査などの社内環境の確認、そして各社員のインターネット環境などを確認していきました。
ある程度はそれで解決できたこともありましたが、しばらくすると再発するなど原因が突き止められない状態が続きました。ちょうど本社事業所はYOTSUYA TOWERに移転した直後の環境の変化もあり、以前の環境と比較することもできない状況がさらに調査を難しくしていました。
原因が分かったのは在宅勤務を始めてからしばらく経った頃です。結局、その原因はフレッツ光回線を使ったPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)接続の遅延によるものでした。この遅延についてはだいぶ前から言われている問題であり、ソフテックでもそれに漏れず同様の問題が発生していました。
遅延状況としては、次のグラフを見ていただくと分かるように在宅勤務の主な時間となる午前8時〜午後6時まで極端に速度が落ちている状況です。速いときは500Mbpsくらいの速度が出ていましたが、遅いときは50Kbpsを切る場合もあり、複数人での在宅勤務に耐えられない状況になっていました。
おそらく学校のオンライン授業や企業の在宅勤務も影響していたのではないかと考えています。(実際に緊急事態宣言が解除された後は、速度低下がある程度緩和しています)
図1. [改善前]フレッツ光ネクストPPPoE接続での1週間の速度変化
現在は、PPPoEを使わないIPoE(IP over Ethernet)を利用するv6プラスなどの接続方式に順次切り替えを行っており、それによって改善の傾向がみられます。
実際にIPoE(v6プラス)を導入したところ、時間帯によってある程度の速度変化はあるもの、ストレスになるほどの速度低下はなく在宅勤務の状況も十分に対応できるようになりました。
図2. [改善後]フレッツ光ネクストIPoE(v6プラス)接続での1週間の速度変化
※図1および図2はソフテック本社事業所において、今回の在宅勤務の期間中に実際に計測した1週間の速度変化です。
私の在宅勤務の環境としては以下のような感じです。
図3. 在宅勤務の環境
在宅勤務に使用しているパソコンについては、プライベートで使用しているパソコンを在宅勤務に使用するとセキュリティ的にもあまり良くないと考え、余っていたパソコンを在宅勤務専用のパソコンとしました。そのパソコンでは在宅勤務でのデータのみ格納するように注意しています。(例えば、社外データなどの機密性が求められるデータは在宅勤務パソコンに格納しないようにしています)
いざ在宅勤務してみると、リモート接続がときどき反応しなくなったり切断されたりで、その点は作業のストレスになりました。
また、最初はWebカメラを準備できませんでした。入手しようとした頃は既に品薄となっており、入手できたのは数週間経ってからでした。
実際に在宅勤務を行って、メリット・デメリットとして感じたことは以下の通りです。
メリット
デメリット
ソフテックでは、在宅勤務を開始したのは4月上旬からですが、まず在宅勤務を週1日だけ実施し、以後少しずつ対象日数を増やして最長週4日まで増やしています。
会社に届く郵便物や会社への電話などもあるため、少なくとも社員が数人くらいは出勤している状態にして無人になることを避けつつ、できる限り感染リスクを減らすためどうするかを考えた結果、この方法に落ちつきました。
4月上旬から開始した1回目の在宅勤務は緊急事態宣言が解除されて少し様子を見た後の6月中旬まで実施しています。
現在は、東京での感染者確認数が増加したことから、7月下旬より2回目となる在宅勤務を再開しています。
今回、入社後、初めてとなる在宅勤務で準備不足や慣れないことが色々とありました。
在宅勤務にもある程度慣れてきましたが、まだまだ改善の余地はあるのではないかと感じます。
なお、1年前は、まさか在宅勤務を行うなどと考えたこともありませんでした。
新型コロナウイルスで世の中がテレワークムードになった後、住宅展示場にて遠隔地からロボット経由で説明したり、東京にいながらVR(Virtual Reality)経由でロボットを使い沖縄の親戚と遊ぶ体験ができたり、テレワークを基本とする会社なども出てきたりという記事も見かけました。
こういった流れは、さらに今後、加速していくと思いますが、そのことは楽しみでもあり、また不安でもあります。世の中の流れに取り残されることがないよう、またそれを業務に生かしていけるように注意していきたいと思います。
(K.O.)
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