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2008年に三菱電機株式会社より「CC-Link IE」(※1) に対応したシーケンサユニット、パソコン用ボードが発売されました。
CC-Link IEは、従来のMELSECNET/Hと同様の用途で、より高速・大容量のPLC間ネットワークを構築できるようになっています。
今回は、CC-Link IEとMELSECNET/Hの機能比較や、昨年当社でCC-Link IEを採用し、実際に使用して気づいた点などについてご紹介します。
CC-Link IEとMELSECNET/Hの機能について、表1に示します。
(MELSECNET/Hは「光ループ型」を例としています)
項目 | CC-Link IE | MELSECNET/H |
---|---|---|
通信速度 | 1Gbps | 25Mbps |
最大リンクリレー(B)点数 | 32K点(0〜7FFF) | 16K点(0〜3FFF) |
最大リンクレジスタ(W)点数 | 128K点(0〜1FFFF) (ベーシックモデルCPU除く) |
16K点(0〜3FFF) |
最大接続局数(管理局含む) | 120台 (QnUCPU以外は64台まで) |
64台 |
最大局間距離 | 550m | SI光ケーブル : 200m H-PCF光ケーブル : 400m 広帯域H-PCF光ケーブル : 1km QSI光ケーブル : 1km GI光ケーブル : 2km |
リンクスキャンタイム(※2) (B/W0〜3FFF、64局時) |
約 6ms | 約 47ms |
コネクタ形状(ユニット側) | ||
コネクタ形状(ケーブル側) |
表1. CC-Link IE と MELSECNET/H の機能比較
表1では比較のためMELSECNET/Hの最大構成でのリンクスキャンタイムを記載しています。
さらに、CC-Link IEの最大構成(B0〜7FFF・W0〜1FFFF・120局)でも、リンクスキャンタイムは14ms(計算値)となり、台数や点数が増えても大幅にリンクスキャンタイムが延びない仕様となっています。
GX Developer(Ver.8.62Q以降、またはGX Works2)にて「CC IE Control診断」を行うとネットワーク図が表示され、異常局やIN/OUTの逆挿しなどの状態を視覚的にわかりやく確認することができます。
図1. CC-Link IE 診断画面
CPU標準のデバイスメモリでは、「デバイス合計で29Kワード」の壁があるため、CC-Link IEの特徴である大容量のリンクレジスタは格納できません。
そのため、ファイルレジスタにリフレッシュする必要があります。
図2. ファイルレジスタリフレッシュ
しかし、アドレス表現の違い(10進/16進)や、単にファイルレジスタとして使っているのかリンクレジスタの代わりで使っているのかわかりにくい、という難点があります。そこで、ユニバーサルモデルQCPU(QnUシリーズ)では、「拡張リンクレジスタ」を使用できるようになりました。
図3. 拡張リンクレジスタ設定
図4. 拡張リンクレジスタリフレッシュ
ファイルレジスタは、標準RAMまたはメモリカード(RAM/ROM)に格納できます。
それぞれのメリット/デメリットを 表2 に記載します。
比較項目 | 標準RAM | メモリカード | 備考 |
---|---|---|---|
読み書き速度 | ◎ | × | 標準RAMはデバイスメモリと同等の速度 |
追加・変更 | × | ○ | メモリカードは後からサイズ変更しやすい |
保守性 | ○ | △ | SRAMメモリカードはバッテリー交換必要 |
容量 | △ | ○ | 最大容量 標準RAM / 1.75MB、メモリカード / 8MB |
表2. 標準RAMとメモリカードの比較
ファイルレジスタ(拡張リンクレジスタ)をリンクデバイスのリフレッシュ先とするには読み書き速度が重要になるため、できるだけ標準RAMを使うのがお勧めです。
CPUのグレードにより内蔵RAMの容量が異なります。
(2010年6月現在で最新の機能バージョンを対象としていますので、旧バージョンでは容量が異なる場合があります)
CPUグレード | 標準RAM 容量 |
最大レジスタ 格納点数 |
ファイルレジスタ 範囲 |
リンクレジスタ 範囲 (※3) |
---|---|---|---|---|
Q00J / Q00UJ | なし | − | − | − |
Q02 | 64kバイト | 32k点 | 0 〜 32767 | − |
Q00 / Q01 / Q02H / Q06H/ Q00U / Q01U / Q02U |
128kバイト | 64k点 | 0 〜 65535 | 0 〜 FFFF |
Q03UD / Q03UDE | 192kバイト | 96k点 | 0 〜 98303 | 0 〜 17FFF |
Q12H / Q25H / Q04UDH / Q04UDEH |
256kバイト | 128k点 | 0 〜 131071 | 0 〜 1FFFF |
Q06UDH / Q06UDEH | 768kバイト | 384k点 | 0 〜 393215 | 0 〜 5FFFF |
Q10UDH / Q13UDH / Q10UDEH / Q13UDEH |
1024kバイト | 512k点 | 0 〜 524287 | 0 〜 7FFFF |
Q20UDH / Q26UDH / Q20UDEH / Q26UDEH |
1280kバイト | 640k点 | 0 〜 655359 | 0 〜 9FFFF |
Q50UDEH | 1536kバイト | 768k点 | 0 〜 786431 | 0 〜 BFFFF |
Q100UDEH | 1792kバイト | 896k点 | 0 〜 917503 | 0 〜 EFFFF |
表3. CPUごとの標準RAM容量/レジスタ点数
CC-Link IEのリンクレジスタ範囲はW0〜1FFFFですので、最大範囲で使用するにはハイパフォーマンスモデルではQ12H以上、ユニバーサルモデルではQ04UD(E)H以上が必要となります。
また、ファイルレジスタも併用する場合は、Q06UD(E)H以上が必要となります。
ラダーやSFCなどのプログラムの処理実行後、CPU側デバイス(B/W)とリンク側デバイス(LB/LW)のリフレッシュが行われます。
リフレッシュ時間が長くなると、そのぶんスキャンタイムが延びることになるため注意が必要です。(プログラムの処理が20msで終わっても、リフレッシュその他のEND処理に40msかかると、スキャンタイムとしては60msとなります)
弊社内にて動作確認を行った際の計算値(マニュアル記載の計算式による)と実測値(GX DeveloperのシステムモニタでのEND処理時間)は以下のとおりでした。
<環境条件>
<確認結果>
「実測値」はEND処理時間(リンクリフレッシュだけでなく、その他のI/Oユニット等とのリフレッシュ処理やGX Developerなどの通信処理も含む)のため、実際のリンクリフレッシュ時間はもっと短いということになります。
あまりに差があるため三菱電機へ問い合わせたところ、「計算値は様々な条件が重なった場合の最悪値の算出である」とのことでした。
あくまでも参考値として、実機構成での検証が必要ということがわかりました。
CC-Link IEにより大容量のデータが取り扱えるのはよいですが、パソコンを使って状態をモニタする際の通信データ量が増えることになり、リアルタイム性は問題ないか?という不安が出てきます。
参考として、弊社製のSCADAソフト「FAVIEW」を使用してPLCのデバイスをモニタした際の通信状況についてご紹介します。
なお、FAVIEWではPLCとの通信は、三菱電機製の通信ライブラリ「MX Component」を経由しています。
<環境条件>
<確認結果>
通信速度を改善するには、以下のようなシステム構成の見直しが有効です。
Q06UDEHなど、CPUにEthernetポートが付いている機種を使用すると、Ethernetユニットを使用した場合よりも高速に通信できます。
(Ethernetユニットの場合はベースユニットを経由してCPUユニットと通信を行う形となりますが、Ethernetポート付きCPUではCPUユニット内部だけで動作が完結するなど、構造的な違いがあります)
構成にもよりますが、通信時間が1/10程度になることもあります。
パソコンにCC-Link IE通信ボードを取り付け、パソコンをCC-Link IEネットワークの1局として構成します。
EthernetなどでPLCと直接やり取りする場合、1回の通信で読み出せるデータは960ワードに限られますが、CC-Link IEボードからの読み出しではそのような制限がありません。
また、監視ソフトはCC-Link IEボードとのやり取りとなるため、CPUのスキャンタイムに影響されず、その点でも高速に通信できます。
CC-Link IEの大容量のリンクデバイスや接続局数の増加により、従来のMELSECNET/Hではネットワークを分けざるをえなかった大規模システムでも、1つのネットワークで構築して一括監視が行えるようになるなど、いろいろなメリットがあります。
「3.CC-Link IE使用のポイント」に挙げたとおり、CC-Link IEにはユニバーサルモデルQCPUが適しています。
PLCによる制御システムの新設やリプレースの際に、参考にしていただければ幸いです。
(S.T.)
CC-Link IE コントローラネットワークリファレンスマニュアル
マニュアル番号:SH-080649-I
Q対応MELSECNET/Hネットワークシステムリファレンスマニュアル(PC間ネット編)
マニュアル番号:SH-080026-R
Qn(H)/QnPH/QnPRHCPUユーザーズマニュアル(機能解説・プログラム基礎編)
マニュアル番号:SH-080803-D
QnUCPUユーザーズマニュアル(機能解説・プログラム基礎編)
マニュアル番号:SH-080802-F
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