「ソフテックだより」では、ソフトウェア開発に関する情報や開発現場における社員の取り組みなどを定期的にお知らせしています。
さまざまなテーマを取り上げていますので、他のソフテックだよりも、ぜひご覧下さい。
ソフテックだより(発行日順)のページへ
ソフテックだより 技術レポート(技術分野別)のページへ
ソフテックだより 現場の声(シーン別)のページへ
最近PLCソフトウェア開発においてオープンフィールドネットワーク(※1)機器を扱う機会が多くなってきました。
今回の技術レポートでは、デバイスレベルフィールドネットワークの主要機器であるリモートI/Oの中からM-SYSTEM Rシリーズを取り上げ、M-SYSTEM Rシリーズを使用したPLCソフトウェア開発について紹介したいと思います。
株式会社エム・システム技研が製造/販売しているリモートI/Oです。
詳細な製品仕様につきましてはリンク先の製品サイトを御覧ください。
<エム・システム技研 リモートI/Oシリーズサイト>
ユーザーの立場として、私が感じている特長を記載します。
SYSTEM Rシリーズは8種類あり、それぞれ異なる特性を備えているため、様々なシステムに対して柔軟な対応が可能です。
たとえば、計測器を分散させてその近くにリモートI/Oを設置したいシステムには電源部/通信部/IO部が一体となった「一体形」のシリーズが有効ですし、リモートI/Oを一箇所に集中させたいシステムにはベースユニットに複数枚のI/Oユニットが装着できる「組合せ形」のシリーズが有効です。
信号変換機メーカーのI/Oユニットらしく、I/Oユニットの種類が豊富で、様々なシステムが要求するI/O仕様に十分応えることができます。特にアナログI/Oユニットが強いと思います。
複数のオープンフィールドネットワークに対応しています。そのため接続相手が限定されることはありません。各メーカーPLCに接続することも出来ますし、ネットワーク変換器を経由してパソコンに接続すること出来ます。
また、「組合せ形」シリーズは、システム更新などでフィールドネットワーク切替が発生ことになっても、通信ユニットだけの交換で済み、I/Oユニットを交換する必要はありません。
「組合せ形」のシリーズは、システムに応じて最適なI/Oユニット構成を組合せることができます。また、システムに新規I/O信号が追加となったときに空きスロットがあれば、空きスロットにI/Oユニットを追加するだけで済み、新しいローカル局を増やす必要もありません。
エム・システム技研では、特殊仕様にも柔軟に応えてくれます。
当社で開発協力した案件でも、全く新しいユニットの開発をしていただきました。
今回は、PLCに三菱電機製Qシリーズ、CC-Linkを使用したソフトウェア開発について、M-SYSTEM Rシリーズを使用する上でポイントとなる点をまとめます。
CC-Link のマスタ局となるQJ61BT11Nのパラメータ設定を行います。
パラメータ設定は三菱電機製ラダー編集ツールGX-Developerから行います。
M-SYSTEM Rシリーズを使用する上で気をつけなくてはならないパラメータについて説明します。
CC-Linkのリモートネットモードには、Ver.1(リンク点数拡張不可)モードとVer.2(リンク点数拡張可)モードが存在します。
M SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)対応するVer.が異なりますが、Ver.2モードではVer.1対応局とVer.2対応局の混在が出来ますので、Ver.1にしなければならない理由がない限り、Ver.2モードを設定します。
Ver.1対応局/Ver.2対応局混在時にVer.2モードを設定した場合、Ver.1対応局のデータも、「Ver.2対応バッファメモリ」にリフレッシュされますので注意してください。
M-SYSTEM Rシリーズでは、一体形シリーズはユニット単体で1台となり、組合せ形シリーズはIO/通信/電源/ベースユニット一式で1台となります。
M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)局種別が異なりますので、マニュアルを参考に正しい設定を行う必要があります。
M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)占有局数が異なりますので、マニュアルを参考に正しい設定を行う必要があります。
CC-Linkにおいて、通常1局あたりのリンク点数は、リモート入出力(RX,RY)が32点、リモートレジスタ(RWr,RWw)が4点です。
1局占有の場合。4局占有の場合は、リモート入出力(RX,RY)が128点、リモートレジスタ(RWr,RWw)が16点となります。
複数枚のI/Oユニットを組み合わせる「組合せ形」シリーズを使用するときは、組み合わせるI/Oユニットの総入出力点数を考慮し、リンク点数が足りない場合は拡張サイクリック設定を行い、リンク点数を拡張する必要があります。
CC-Linkマスタ局パラメータ設定が完了したら、M-SYSTEM Rシリーズのリフレッシュデバイスにコメントを割り付け、ラダープログラムを作成します。
M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによってリフレッシュされる内容が異なります。
接点入出力ユニットの場合、入出力データがリフレッシュされます。
アナログ入出力ユニットの場合、入出力データ異常状態/故障状態がリフレッシュされます。
各ユニットの入出力データ異常状態/故障状態がリフレッシュされます。
基本的には上記内容となりますが、詳細はマニュアルを御参照ください。
アナログ入出力ユニットの入出力データがリフレッシュされます。
ラダープログラムには、計器仕様とユニット仕様を考慮し、レンジ換処理を作成する必要があります。
現地立ち上げでは、ソフトウェアが設計どおりに動作するように、M-SYSTEM Rシリーズを立ち上げます。
組合せ形シリーズでは、リモートレジスタにリフレッシュされるアドレスの並び順は、ユニット装着順と同じになります。従って、まずユニット装着順を確認します。
ベースユニットの左側(スロット1)から、設計どおり順番にI/Oユニットが装着されているか確認します。
アドレス可変形ベースユニットを使用すれば、装着順に関わらずアドレスの並び順を任意とすることが可能です。
次に、通信設定を行います。
設定はユニットのロータリースイッチ、及びディップスイッチで行います。
ロータリースイッチで局番を設定します。
ロータリースイッチで設定します。
まずは一番遅い速度「0(156kbps)」を設定し、高速性が求められる場合には徐々に速度を上げながら様子を見ていきます。
ディップスイッチで設定します。
各スロットのI/Oユニット入出力点数に合わせて設定します。
ディップスイッチで設定します。
マスタ局パラメータ『局情報−拡張サイクリック設定』と同じ設定とします。
次に、I/O設定を行います。
設定はユニットのディップスイッチで行い、設定内容はユニットにより異なります。
例として以下の設定があります。
計器仕様に合わせて「DC -10V〜+10V/DC 4〜20mA」等を設定します。
計器仕様に合わせて「Pt100/Pt50/Ni100」等を設定します。
計器仕様に合わせて「℃/゚F/全体温度」等を設定します。
ユニットの設定を全て完了したら、電源を投入して通信確認を行います。
ユニットの状態表示ランプ、及びGX-DeveloperのCC-LINK診断機能にて確認を行います。
まず、ユニット前面のRUNランプ、ERRランプを確認してください。
正常状態では、RUNランプ:緑色点灯、ERRランプ:消灯となります。
正常に通信できない場合は、
を確認すれば、経験上9割方解決します。解決しない場合は、ソフト側に間違い(マスタ局パラメータ設定等)がないか確認します。
前項の参考例として、具体的な設備に関するソフトウェア開発を例として紹介します。
FA設備の一例として取り上げられるような比較的簡易な設備を想定します。
設備I/O仕様を表1に示します。
I/O項目 | 点数 | 計器仕様 |
---|---|---|
DI(※2)信号 | 16点 | 接点入力 |
DO(※3)信号 | 16点 | 接点出力 |
液位計アナログ信号 | 8点 | 0〜2000L DC 4〜20mA |
圧力計アナログ信号 | 8点 | 0〜200kPa DC 4〜20mA ディストリビュータ入力 |
測温抵抗体アナログ信号 | 8点 | -100.0〜200.0℃ Pt100(JIS’97) 測温抵抗体入力 |
表1. 設備I/O仕様
PLCは三菱電機Qシリーズ、フィールドネットワークにはCC-Linkを採用します。
M-SYSTEMリモートI/Oには組合せ形の R3シリーズを採用します。
システム構成を図1に、R3シリーズの補足説明を表2に示します。
図1. システム構成
I/Oユニット | 対応する信号 | データ変換 |
---|---|---|
接点入力 R3-DA16 | DI信号 | - |
接点出力 R3-DC16 | DO信号 | - |
直流電流入力 R3-SS8 | 液位計アナログ信号 | DC4〜20mA ⇒ 0〜10000 |
ディストリビュータ入力 R3-DS4 | 圧力計アナログ信号 | DC4〜20mA ⇒ 0〜10000 |
測温抵抗体入力 R3-RS8 | 測温抵抗体アナログ信号 | -100.0〜200.0℃ |
通信/電源/ベースユニット | 説明 | |
通信ユニット R3-NC3 | CC-Link Ver.2用の通信ユニットです。 | |
電源ユニット R3-PS1 | 電源ユニットです。通信ユニットとI/Oユニット合計の消費電力を考慮して選定する必要があります。 | |
ベースユニット R3-BS6 | I/Oユニット、通信ユニット、電源ユニットを装着するベースユニットです。 |
表2. R3シリーズ説明
CC-Linkマスタ局パラメータ設定の一覧を表3に示します。
設定項目 | 設定内容 | |
---|---|---|
モード設定 | 通信ユニットR3-NC3はVer.2対応なので「リモートネットVer.2モード」を選択します。 | |
総接続台数 | R3シリーズは、組合せ形なので、総接続台数は「1台」となります。 | |
局情報−局種別 | 通信ユニットR3-NC3は「Ver.2リモートデバイス局」となります。 | |
局情報−占有局数 | 通信ユニットR3-NC3は「4局占有」となります。 | |
局情報−拡張サイクリック設定 | 今回はDI信号を16点(ワード1点)、DO信号を16点(ワード1点)、アナログ信号を24点取り込むので、26点以上のリモートレジスタ点数が必要です。 通信ユニットR3-NC3は4局占有で、リモートレジスタ点数は16点であるため、点数を拡張するために、拡張サイクリック設定を行う必要があります。 拡張サイクリック設定を「2倍設定」として、リモートレジスタ点数を32点に拡張します。 |
表3. CC-Linkマスタ局パラメータ設定一覧
R3シリーズユニット設定の一覧を表4に示します。
設定項目 | 設定内容 | |
---|---|---|
通信ユニットR3-NC3 局番設定 |
「1」を設定します。 | |
通信ユニットR3-NC3 伝送速度設定 |
まずは一番遅い速度「0(156kbps)」を設定し、高速性が求められる場合には徐々に速度を上げながら様子を見ていきます。 | |
通信ユニットR3-NC3 スロット占有データ数設定 |
スロット1…「1」、スロット2…「1」、スロット3…「8」 スロット4…「4」、スロット5…「4」、スロット6…「8」 と設定します。 |
|
通信ユニットR3-NC3 拡張サイクル設定 |
マスタ局パラメータと同じ「2(2倍設定)」を設定します。 | |
直流電流入力 R3-SS8 入力レンジ設定 |
DC 4〜20mA/DC 0〜20mA/DC -20〜+20mA、 上記の中から計器仕様に合わせて「DC 4〜20mA」を設定します。 |
|
測温抵抗体入力 R3-RS8 測温抵抗体設定 |
Pt100(JIS’97,IEC)/Pt100(JIS’98)/JPt100(JIS’98)/ Pt50Ω(JIS’81)/Ni100/Cu10(25℃)/Pt1000/Ni508.4/Cu50/Ni1000 上記の中から計器仕様に合わせて「Pt100(JIS’97,IEC)」を設定します。 |
|
測温抵抗体入力 R3-RS8 温度単位設定 |
℃/゚F/全体温度 上記の中から計器仕様に合わせて「℃」を設定します。 |
表4. R3シリーズユニット設定一覧
今回はM-SYSTEM Rシリーズにスポットを当てたPLCソフトウェア開発を紹介させていただきました。紹介した内容はほんの一例にすぎませんが、皆様のお役に立てていただければ幸いです。
M-SYSTEM RシリーズはCC-Link以外にも、DeviceNet、Modbusなどのオープンフィールドネットワークに対応しています。
最近のオープンフィールドネットワークの普及・進歩は目を見張るものがあり、それに呼応して対応機器もこれからどんどん新製品が出てくるものと思います。
そこでマクロな視点として、オープンフィールドネットワーク同士の比較、及び、対応機器同士の比較をして考察してみるのもおもしろいかもしれません。それはまた別の機会にさせていただきたいと思います。
(S.T.)
関連ページへのリンク
関連するソフテックだより