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ソフテックだより 第149号(2011年11月2日発行)
技術レポート

「リモートI/Oを使用したPLCソフトウェア開発 〜M-SYSTEM Rシリーズ編〜」

1. はじめに

最近PLCソフトウェア開発においてオープンフィールドネットワーク(※1)機器を扱う機会が多くなってきました。
今回の技術レポートでは、デバイスレベルフィールドネットワークの主要機器であるリモートI/Oの中からM-SYSTEM Rシリーズを取り上げ、M-SYSTEM Rシリーズを使用したPLCソフトウェア開発について紹介したいと思います。

2. M-SYSTEM Rシリーズについて

2-1. M-SYSTEM Rシリーズとは

株式会社エム・システム技研が製造/販売しているリモートI/Oです。
詳細な製品仕様につきましてはリンク先の製品サイトを御覧ください。
エム・システム技研 リモートI/Oシリーズサイト

2-2. M-SYSTEM Rシリーズの特長

ユーザーの立場として、私が感じている特長を記載します。

  • 様々なシステムに柔軟に対応できる

    SYSTEM Rシリーズは8種類あり、それぞれ異なる特性を備えているため、様々なシステムに対して柔軟な対応が可能です。
    たとえば、計測器を分散させてその近くにリモートI/Oを設置したいシステムには電源部/通信部/IO部が一体となった「一体形」のシリーズが有効ですし、リモートI/Oを一箇所に集中させたいシステムにはベースユニットに複数枚のI/Oユニットが装着できる「組合せ形」のシリーズが有効です。

  • I/Oユニットの種類が豊富

    信号変換機メーカーのI/Oユニットらしく、I/Oユニットの種類が豊富で、様々なシステムが要求するI/O仕様に十分応えることができます。特にアナログI/Oユニットが強いと思います。

  • 多彩なフィールネットワークに対応

    複数のオープンフィールドネットワークに対応しています。そのため接続相手が限定されることはありません。各メーカーPLCに接続することも出来ますし、ネットワーク変換器を経由してパソコンに接続すること出来ます。
    また、「組合せ形」シリーズは、システム更新などでフィールドネットワーク切替が発生ことになっても、通信ユニットだけの交換で済み、I/Oユニットを交換する必要はありません。

  • システムに応じた最適な構成が容易に組める

    「組合せ形」のシリーズは、システムに応じて最適なI/Oユニット構成を組合せることができます。また、システムに新規I/O信号が追加となったときに空きスロットがあれば、空きスロットにI/Oユニットを追加するだけで済み、新しいローカル局を増やす必要もありません。

  • 特殊仕様対応

    エム・システム技研では、特殊仕様にも柔軟に応えてくれます。
    当社で開発協力した案件でも、全く新しいユニットの開発をしていただきました。

3. ソフトウェア開発

今回は、PLCに三菱電機製Qシリーズ、CC-Linkを使用したソフトウェア開発について、M-SYSTEM Rシリーズを使用する上でポイントとなる点をまとめます。

3-1. CC-Linkマスタ局パラメータ設定

CC-Link のマスタ局となるQJ61BT11Nのパラメータ設定を行います。
パラメータ設定は三菱電機製ラダー編集ツールGX-Developerから行います。
M-SYSTEM Rシリーズを使用する上で気をつけなくてはならないパラメータについて説明します。

  • モード設定

    CC-Linkのリモートネットモードには、Ver.1(リンク点数拡張不可)モードとVer.2(リンク点数拡張可)モードが存在します。
    M SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)対応するVer.が異なりますが、Ver.2モードではVer.1対応局とVer.2対応局の混在が出来ますので、Ver.1にしなければならない理由がない限り、Ver.2モードを設定します。

    Ver.1対応局/Ver.2対応局混在時にVer.2モードを設定した場合、Ver.1対応局のデータも、「Ver.2対応バッファメモリ」にリフレッシュされますので注意してください。

  • 総接続台数

    M-SYSTEM Rシリーズでは、一体形シリーズはユニット単体で1台となり、組合せ形シリーズはIO/通信/電源/ベースユニット一式で1台となります。

  • 局情報−局種別

    M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)局種別が異なりますので、マニュアルを参考に正しい設定を行う必要があります。

  • 局情報−占有局数

    M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによって(もしくは同シリーズ内でも通信ユニットによって)占有局数が異なりますので、マニュアルを参考に正しい設定を行う必要があります。

  • 局情報−拡張サイクリック設定

    CC-Linkにおいて、通常1局あたりのリンク点数は、リモート入出力(RX,RY)が32点、リモートレジスタ(RWr,RWw)が4点です。

    1局占有の場合。4局占有の場合は、リモート入出力(RX,RY)が128点、リモートレジスタ(RWr,RWw)が16点となります。

    複数枚のI/Oユニットを組み合わせる「組合せ形」シリーズを使用するときは、組み合わせるI/Oユニットの総入出力点数を考慮し、リンク点数が足りない場合は拡張サイクリック設定を行い、リンク点数を拡張する必要があります。

3-2. デバイスコメント、ラダープログラム作成

CC-Linkマスタ局パラメータ設定が完了したら、M-SYSTEM Rシリーズのリフレッシュデバイスにコメントを割り付け、ラダープログラムを作成します。

  • リフレッシュデバイス−リモート入出力(RX,RY)

    M-SYSTEM Rシリーズでは、シリーズによってリフレッシュされる内容が異なります。

    • 一体形シリーズ

      接点入出力ユニットの場合、入出力データがリフレッシュされます。
      アナログ入出力ユニットの場合、入出力データ異常状態/故障状態がリフレッシュされます。

    • 組合せ形シリーズ

      各ユニットの入出力データ異常状態/故障状態がリフレッシュされます。

    基本的には上記内容となりますが、詳細はマニュアルを御参照ください。

  • リフレッシュデバイス−リモートレジスタ(RWr,RWw)

    アナログ入出力ユニットの入出力データがリフレッシュされます。
    ラダープログラムには、計器仕様とユニット仕様を考慮し、レンジ換処理を作成する必要があります。

3-3. 現地立ち上げ

現地立ち上げでは、ソフトウェアが設計どおりに動作するように、M-SYSTEM Rシリーズを立ち上げます。

(1) I/Oユニット装着順の確認(組合せ形シリーズのみ)

組合せ形シリーズでは、リモートレジスタにリフレッシュされるアドレスの並び順は、ユニット装着順と同じになります。従って、まずユニット装着順を確認します。
ベースユニットの左側(スロット1)から、設計どおり順番にI/Oユニットが装着されているか確認します。

アドレス可変形ベースユニットを使用すれば、装着順に関わらずアドレスの並び順を任意とすることが可能です。

(2) 通信設定

次に、通信設定を行います。
設定はユニットのロータリースイッチ、及びディップスイッチで行います。

  • 局番設定

    ロータリースイッチで局番を設定します。

  • 伝送速度設定

    ロータリースイッチで設定します。
    まずは一番遅い速度「0(156kbps)」を設定し、高速性が求められる場合には徐々に速度を上げながら様子を見ていきます。

  • スロット占有データ数設定(組合せ形シリーズのみ)

    ディップスイッチで設定します。
    各スロットのI/Oユニット入出力点数に合わせて設定します。

  • 拡張サイクル設定(組合せ形シリーズのみ)

    ディップスイッチで設定します。
    マスタ局パラメータ『局情報−拡張サイクリック設定』と同じ設定とします。

(3) I/O設定

次に、I/O設定を行います。
設定はユニットのディップスイッチで行い、設定内容はユニットにより異なります。
例として以下の設定があります。

  • 直流電圧/電流入力ユニット 入力レンジ設定

    計器仕様に合わせて「DC -10V〜+10V/DC 4〜20mA」等を設定します。

  • 測温抵抗体入力ユニット 測温抵抗体設定

    計器仕様に合わせて「Pt100/Pt50/Ni100」等を設定します。

  • 測温抵抗体入力ユニット 温度単位設定

    計器仕様に合わせて「℃/゚F/全体温度」等を設定します。

(4) 通信確認

ユニットの設定を全て完了したら、電源を投入して通信確認を行います。
ユニットの状態表示ランプ、及びGX-DeveloperのCC-LINK診断機能にて確認を行います。

(5) 正常に通信できないときは

まず、ユニット前面のRUNランプ、ERRランプを確認してください。
正常状態では、RUNランプ:緑色点灯、ERRランプ:消灯となります。
正常に通信できない場合は、

  • 局番設定が間違っている
  • 伝送速度設定が、マスタ局と同じ設定になっていない
  • マスタ局、ローカル局全てで伝送速度設定が同じ設定になっていない
  • ネットワークの両端に終端抵抗ついていない(CC-Link、DeviceNet等の場合
  • 配線が間違っている

を確認すれば、経験上9割方解決します。解決しない場合は、ソフト側に間違い(マスタ局パラメータ設定等)がないか確認します。

4. ソフトウェア開発 参考例

前項の参考例として、具体的な設備に関するソフトウェア開発を例として紹介します。

4-1. 設備I/O仕様

FA設備の一例として取り上げられるような比較的簡易な設備を想定します。
設備I/O仕様を表1に示します。

I/O項目  点数 計器仕様 
DI(※2)信号 16点 接点入力
DO(※3)信号 16点 接点出力
液位計アナログ信号 8点 0〜2000L
DC 4〜20mA
圧力計アナログ信号 8点 0〜200kPa
DC 4〜20mA
ディストリビュータ入力
測温抵抗体アナログ信号 8点 -100.0〜200.0℃
Pt100(JIS’97)
測温抵抗体入力

表1. 設備I/O仕様

4-2. システム構成

PLCは三菱電機Qシリーズ、フィールドネットワークにはCC-Linkを採用します。
M-SYSTEMリモートI/Oには組合せ形の R3シリーズを採用します。
システム構成を図1に、R3シリーズの補足説明を表2に示します。

システム構成
図1. システム構成

I/Oユニット  対応する信号 データ変換 
接点入力 R3-DA16 DI信号 -
接点出力 R3-DC16 DO信号 -
直流電流入力 R3-SS8 液位計アナログ信号 DC4〜20mA ⇒ 0〜10000
ディストリビュータ入力 R3-DS4 圧力計アナログ信号 DC4〜20mA ⇒ 0〜10000
測温抵抗体入力 R3-RS8 測温抵抗体アナログ信号 -100.0〜200.0℃
通信/電源/ベースユニット 説明
通信ユニット R3-NC3 CC-Link Ver.2用の通信ユニットです。
電源ユニット R3-PS1 電源ユニットです。通信ユニットとI/Oユニット合計の消費電力を考慮して選定する必要があります。
ベースユニット R3-BS6 I/Oユニット、通信ユニット、電源ユニットを装着するベースユニットです。

表2. R3シリーズ説明

4-3. CC-Linkマスタ局パラメータ設定

CC-Linkマスタ局パラメータ設定の一覧を表3に示します。

設定項目  設定内容 
モード設定 通信ユニットR3-NC3はVer.2対応なので「リモートネットVer.2モード」を選択します。
総接続台数 R3シリーズは、組合せ形なので、総接続台数は「1台」となります。
局情報−局種別 通信ユニットR3-NC3は「Ver.2リモートデバイス局」となります。
局情報−占有局数 通信ユニットR3-NC3は「4局占有」となります。
局情報−拡張サイクリック設定 今回はDI信号を16点(ワード1点)、DO信号を16点(ワード1点)、アナログ信号を24点取り込むので、26点以上のリモートレジスタ点数が必要です。
通信ユニットR3-NC3は4局占有で、リモートレジスタ点数は16点であるため、点数を拡張するために、拡張サイクリック設定を行う必要があります。
拡張サイクリック設定を「2倍設定」として、リモートレジスタ点数を32点に拡張します。

表3. CC-Linkマスタ局パラメータ設定一覧

4-4. R3シリーズユニット設定

R3シリーズユニット設定の一覧を表4に示します。

設定項目  設定内容 
通信ユニットR3-NC3
局番設定
「1」を設定します。
通信ユニットR3-NC3
伝送速度設定
まずは一番遅い速度「0(156kbps)」を設定し、高速性が求められる場合には徐々に速度を上げながら様子を見ていきます。
通信ユニットR3-NC3
スロット占有データ数設定
スロット1…「1」、スロット2…「1」、スロット3…「8」
スロット4…「4」、スロット5…「4」、スロット6…「8」
と設定します。
通信ユニットR3-NC3
拡張サイクル設定
マスタ局パラメータと同じ「2(2倍設定)」を設定します。
直流電流入力 R3-SS8
入力レンジ設定
DC 4〜20mA/DC 0〜20mA/DC -20〜+20mA、
上記の中から計器仕様に合わせて「DC 4〜20mA」を設定します。
測温抵抗体入力 R3-RS8
測温抵抗体設定
Pt100(JIS’97,IEC)/Pt100(JIS’98)/JPt100(JIS’98)/
Pt50Ω(JIS’81)/Ni100/Cu10(25℃)/Pt1000/Ni508.4/Cu50/Ni1000
上記の中から計器仕様に合わせて「Pt100(JIS’97,IEC)」を設定します。
測温抵抗体入力 R3-RS8
温度単位設定
℃/゚F/全体温度
上記の中から計器仕様に合わせて「℃」を設定します。

表4. R3シリーズユニット設定一覧

5. おわりに

今回はM-SYSTEM Rシリーズにスポットを当てたPLCソフトウェア開発を紹介させていただきました。紹介した内容はほんの一例にすぎませんが、皆様のお役に立てていただければ幸いです。

M-SYSTEM RシリーズはCC-Link以外にも、DeviceNet、Modbusなどのオープンフィールドネットワークに対応しています。
最近のオープンフィールドネットワークの普及・進歩は目を見張るものがあり、それに呼応して対応機器もこれからどんどん新製品が出てくるものと思います。
そこでマクロな視点として、オープンフィールドネットワーク同士の比較、及び、対応機器同士の比較をして考察してみるのもおもしろいかもしれません。それはまた別の機会にさせていただきたいと思います。

(S.T.)

[参考文献]
株式会社エム・システム技研
エム・システム技研ホームページ
[注釈]
※1
仕様が公開され、多くのユーザー、メーカーが共通に使用できるフィールドネットワーク(フィールドバス)のこと。
※2
「Discrete Input」デジタル信号入力
※3
「Discrete Output」デジタル信号出力

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