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2008年に最初の「CC-Link IE」として今の CC-Link IE Control製品が発売されてから、今では様々なCC-Link IEファミリー製品が存在します。
バリエーションが豊かになり色々な階層で使う機会が増えてきましたが、一方で「それぞれどういう違いがあるのか?」「使うためにはどういう機器を選定する必要があるのか?」を把握するのが難しくなってきています。
今回は、名前も似ている「CC-Link IE Field」と「CC-Link IE Field Basic」を比較し、それぞれの特徴や使い分けについて取り上げます。
各仕様についてはMELSEC iQ-Rシリーズを対象として記載していますので、iQ-FやQ等の他シリーズでは一部内容が異なる場合があることをご了承ください。
CC-Link IEファミリーについては以前のソフテックだよりでも取り上げていますので、併せてご覧ください。
ソフテックだより 第331号「産業用ネットワーク 〜CC-Link IEとは〜」
従来は「とあるネットワークに参加して他の装置と通信する」ためには、そのネットワークに対応した「専用のネットワークユニット」を使用することが一般的でした。
しかし、CC-Link IEは広く使用されているEthernetの技術をベースにしたネットワークであるため、必ずしも専用ユニットを使用せずともよいケースが出てきました。
ネットワークの種類と使用できるユニットは下表のとおりです。
表1. ネットワーク種別と使用できるユニット
種別 CC-Link IE\ユニット |
CC-Link IE Controlユニット RJ71GP21-SX RJ71GP21S-SX |
CC-Link IE Fieldユニット RJ71GF11-T2 |
Ethernetユニット RJ71EN71 RnENCPU ネットワーク部 |
CPU内蔵 Ethernetポート RnCPU, RnENCPU CPU部 |
CC-Link IE TSNユニット RJ71GN11-SX RJ71GN11-T2 |
---|---|---|---|---|---|
Control | ○ | × | ○ | × | × |
Field | × | ○ | ○ | × | × |
Field Basic | × | × | × | ○ | × |
TSN | × | × | × | × | ○ |
iQ-RシリーズのEthernetユニットはQシリーズの時よりも高機能化し、Ethernet通信機能に加えてCC-Link IE Control/Fieldの両方に対応したほか、Qシリーズでは専用ユニットとして存在していたModbus/TCPユニットの機能も取り込まれました。
また、CC-Link IE Field BasicはCPU内蔵Ethernetポートのみが対応している形ですが、「別途ユニットを追加することなくフィールドネットワークを構築できる」という点が最大の特徴になっています。
ようやく本題に入ります。
まず、CC-Link IE Field とCC-Link IE Field Basicは以下のように機能の実装方法に違いがあります。
図1. 実装方法の違いのイメージ
CC-Link IE Field Basicは「通信アプリケーションの一種」として実装されており、CC-Link IE Fieldに準ずる機能をソフトウェアで処理しています。
次に、ネーミングから「Field BasicはFieldの機能限定版」ということは想像がつきますが、具体的にどこが違うのか以下の比較表にまとめました。
表2. CC-Link IE Field / Field Basicの比較
|
CC-Link IE Field |
CC-Link IE Field Basic |
|
---|---|---|---|
1ネットワークあたりの台数 | マネージャ局:1台 リモート局:120台 |
マネージャ局:1台 リモート局:64台 |
|
1ネットワークあたりの 最大点数 |
RX/RY | 各16384点 | 各2048点 |
RWr/RWw | 各8192点 | 各2048点 | |
リモート局1局あたりの 最大点数 |
RX/RY | 各2048点 | 各256点 (4局占有時) |
RWr/RWw | 各1024点 | 各128点 (4局占有時) |
|
サブマスタ局機能 | ○ | × | |
ローカル局の接続 | ○ | × | |
通信速度 | 1Gbps | 100Mbps | |
最大局間距離 | 100m | 100m | |
伝送路形式 | スター型 | ○ | ○ |
ライン型 | ○ | ○ | |
リング型 | ○ | × |
CC-Link IE Field Basicではローカル局の接続ができないことから「PLC間の通信手段」とはならず、「入出力ユニットやインバータ等の機器類の接続」という本来の用途に特化しています。
接続できる台数や点数が少なめの部分はありますが、仕様をよく把握したうえで小規模ネットワークを構築することを考えれば特に問題にならないと感じます。
CC-Link IE FieldもField Basicも従来のシリアル通信型のCC-Linkの置き換えの候補に挙がると思います。
Field BasicはCC-Link Ver.2と比較するとRX/RYの点数が半分しかないものの、Field / Field BasicともCC-Linkよりも通信速度が速いことや、市販LANケーブルを挿していくだけという配線作業の省力化の点ではメリットがあります。
しかし、以下の点で完全に置き換えることはなかなか難しいのが実情と言えます。
CC-Link IE Field / Field Basicでは通信データを論理的に受け渡すため、ライン型接続の途中にある局に故障や電源断が発生すると、その局の後段にある局も通信ができなくなってしまいます。
図2. CC-Link IE Field / Field BasicとCC-Linkの接続性
局間の距離について、CC-Linkは通信速度を156kbpsにした場合は1.2kmまで延ばすことができます。
しかし、CC-Link IE Field / Field BasicではEthernetの仕様上、局間の距離は100mが最長です。
Field / Field Basicでもメディアコンバーター等を使用し、局間を光ケーブルで接続して延長を行うことなどは可能ですが、コスト面のデメリットは生じてしまいます。
「CC-Link IE」と名の付くものが多くなり、「Control」と「Field」までは「今までのMELSECNET/HとCC-Linkに相当するものだな」と比較的理解しやすかったのですが、「Field」と「Field Basic」の違いについては今回のソフテックだよりの執筆に際して仕様を確認・比較することでようやく理解できました。
私はCC-Link IE Fieldの使用経験はあるものの、CC-Link IE Field Basicを使用する機会には恵まれていませんが、今回を機にメリット/デメリットを理解した上でお客様へのシステム構成のご提案などもすることができそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(S.T.)
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