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私たちの身の回りには、ロボット、航空機、船舶、情報機器、ラジコンなど、モータを利用した製品が数多く存在します。
シーケンス技術者は、モータの知識を習得し、それをもとに様々な制御を行う必要があります。
そこで、今回はシーケンス技術にとって、切っても切れない関係にある、「ステッピングモータとサーボモータ」について紹介します。
「モータの回転制御(回転角度、回転速度)を一定角度(基本ステップ角)のパルス数とその周波数で制御するモータ」がステッピングモータです。
ステッピングモータは、パルスが一回送られるたびに一定の角度だけ回転します。この回転角はステップ角と呼ばれ角度(°)で表します。
ステップ角を小さくすればするほど位置決め分解能が高くなります。ステップ角度を小さくできることがステッピングモータの大きな特色となっています。
基本ステップ角は、標準的な5相ステッピングモータの場合、0.72°です。このモータを90°回転させるには125ステップの信号が必要となるわけです。
モータを選択することで細かな基本ステップ角が使用できます。(Fig1)
ステッピングモータの仕組みについて説明をしてきましたが、実際にはどのような構成でステッピングモータの回転制御を行うのでしょうか?
ステッピングモータの回転制御を行うにはFig2に示すような、PLC+コントローラ+ドライバ+ステッピングモータのシステム構成が必要となります。
PLCからコントローラに動作指示が入力されると、コントローラで動作指示のデータをパルス信号(Fig3)に変換し、さらにドライバでモータ駆動電流に変換されてモータを動かします。
このモータの回転を利用して様々な製品を動かすことが可能となるわけです。
ステッピングモータの回転角度と、回転速度は次の式で制御されます。
上記の式に、ステップ角/パルス発生周波数を代入して回転速度を求めると以下のようになります。
■基本ステップ角:0.72°、パルス発生周波数:100Hz
・回転速度=12(r/min)… 1分間に12回転
■ 基本ステップ角:0.72°、パルス発生周波数:1000Hz
・回転速度=120(r/min)… 1分間に120回転
同一のモータでは基本ステップ角は変化しないことを考えると、モータの速度を変更するときには、パルス発生周波数を変化させていることが分かります。
先ほどのステッピングモータも今回のサーボモータも、それぞれの名称がモータの特徴を示しています。
ステッピングモータは、ステップ状の(パルス状)の指令に応じて回転制御するモータです。
今回のサーボモータは、サーボの語源Servant(召使い…言いつけどおりに働く意味合い)のように回転制御できるモータといえます。
そのため、ステッピングモータにはない回転検出器(エンコーダ)がモータに組み込まれています。
このエンコーダでモータ軸の回転角度や回転速度を検知し、指令パルスと比較指定フィードバック制御を行います。(Fig4)
サーボモータはこのエンコーダが搭載されているため、モータに異常が発生した場合にアラームを出力することができます。
つまり、エンコーダの存在がモータをServant化させているわけです。
また、サーボモータの回転制御には、ステッピングモータと同様の構成にエンコーダが追加されます。
それぞれの特徴をしたところで、機能の違いを上表に示します。
表に示した機能の違いより、以下のことがいえます。
オープンループ方式とクローズドループ方式を簡単に説明すると、エンコーダがなくフィードバックが無い制御がオープンループ方式で、エンコーダがありフィードバックがある制御がクローズドループ方式といえます。
実際には、アンプ内部のデバイス構成が違うなど回路的な違いもありますが、その辺は専門書を参考にして下さい。
続いて停止精度に関してですが、これは制御方式に大きく依存します。
サーボモータは停止中もエンコーダにより位置の監視を行えるため位置がずれた時には異常を発生させることができますが、ステッピングモータは停止中に位置がずれたことを認識できません。
サーボモータは、低速域〜高速域まで安定してトルクを発生させることができるのに対して、ステッピングモータは低速域でのトルクが大きいのですが、高速域になるとトルクが減少していくことがわかります。(Fig5)(余談ですが、ステッピングモータの特徴として、高周波数[高回転]でモータを始動させようとすると動作が開始しない脱調という現象が発生します。)
このことより、低速では高いトルクを発生させることができるステッピングモータが適しており、中速〜高速ではサーボモータが適していることが分かります。
駆動機構は、稼動体が動くときの慣性力や摩擦力を受けます。精密な位置決め制御を行うためには、これらの力に影響を受けない程度の剛性が駆動機構に求められます。
サーボモータを使用した場合、駆動機構の剛性が不十分だとサーボモータ側の性能は発揮できません。
反面、ステッピングモータは機構部の剛性をあまり気にせずある程度バランスの取れた精度が期待できます。
また、価格の面ではサーボモータはステッピングモータに比べて非常に高価で、5倍以上の値段がします。
以上のことから、簡単な位置決めにはステッピングモータが、高速高精度な位置決めにはサーボモータが適しているわけです。
実際にはどのような用途で、ステッピングモータ、サーボモータが使用されているのかを説明していきます。
上図のように、物体に色をつける薬品: A〜薬品: D、薬品をノズルで物体に塗布するユニットBox: P、物体に塗布した薬品を定着させるユニットBox: A〜Box: Dから構成される装置があったとします。
この装置が行う処理は、Box: Pで薬品を物体塗布し、薬品の種類によって、それぞれ専用のBoxで(薬品: A → Box: A、薬品: B → Box: B、…)薬品の色を物体に定着させる処理を行います。
また、この装置に対する要望は、
とします。
(1)、(2)からは、駆動機構の剛性が不十分なため、ある程度の位置決めができれば問題は無し。
(3)、(4)からは、薬品が乾かないようにBox間の移動を速く、正確に行いたい。
ということが分かります。
つまり、ノズルの移動に関しては駆動機構の剛性をあまり気にせずに、バランスよく位置決め可能なステッピングモータが選定され、Box間の移動に関しては、高速での位置決め制御に優れたサーボモータが選定されるわけです。
(ノズル移動に関しては、サーボモータの選定も考えられますが、駆動機構の剛性が不十分ではその機能を十分に発揮できないこと、サーボモータに比べステッピングモータは、価格が安価なことからステッピングモータを選定します。)
では、モータを選定した後は、PLCでどのように位置決め制御を行うのでしょう?
モータの選定後は、モータを動かすために必要なモータ/位置決めユニットのパラメータ設定を行います。
設定するパラメータは大まかに分類すると、『ハード構成に関する情報』、『原点復帰に関する情報』、『位置決めに関する情報』、『制御系に関する情報』の4つに分かれます。
パラメータは、サーボアンプ、位置決めユニットの種類により異なるため、マニュアルを読んで設定を決めなければなりません。
パラメータ設定を間違えると、動作しなかったり、予期しない動作したりするので慎重に設定します。
パラメータ設定が完了したら、次はモータの状態を監視するプログラムを作成します。
監視する状態は、モータの動作状態、リミットスイッチなどの外部入力、位置決め正常完了/異常完了などがあります。
これらの状態を監視して、位置決めシーケンス、原点復帰の正常完了/異常完了の判定などに使用します。
位置決め制御プログラムを作成するさいに、もっとも気を使うのが異常処理のプログラム作成です。
異常処理プログラムでは、発生した異常内容の通知、異常からの復帰が求められます。
異常処理の設計が不十分なプログラムの場合、異常が発生しているのに『発生箇所が特定できない』、『異常からの復帰ができない』などの不都合が生じてしまいます。
もしも、24時間稼動する工場で異常の通知がオペレータに対して通知されず異常の発見が遅れると、重大な損失をもたらす可能性があるのです。
その名の通り、動作を司るプログラムです。
原点復帰、位置決め動作、軸停止、軸再起動、JOGの動作を行います。
以上4つプログラムを作成して、位置決め制御が可能となるのです。
今回はステッピングモータ、サーボモータの違いについて説明してきました。
ステッピングモータ、サーボモータが、それぞれどういう特性を持っているのか、どのような用途で使い分けられているのかを理解頂けたと思います。
シーケンス技術者は、選定されたモータの特性を把握したうえで、ドライバ/コントローラのパラメータを適切に設定し、最終的にモータ制御用のラダー作成を行うことが求められているのです。
既存設備の転用・更新の場合はもちろんですが、新規導入の場合に関しても、システムの用途や構成などをもとにして、最適な提案をソフテックでは行っております。
是非一度お問い合わせお願いいたします。
(M.Y.)
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