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ソフテックだより 第73号(2008年9月3日発行)
現場の声編

「RTOS対応組み込みコントローラとモーションコントローラによる機械制御」

1. はじめに

ソフテックでは多くの機械制御を手がけていますが、多くはPLCで制御を行っています。今回、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS、Real-time operating system)対応組み込みコントローラとモーションコントローラの組み合わせで機械制御を行いましたので紹介させて頂きます。なお、本件により社内でS-BEY新技術部門-特別賞("Softech - Best Engineer of the Year"の略、その年度でソフテック社員の中から業務を通じて活躍、会社に貢献したエンジニアを表彰)を頂きましたので、そちらについても紹介します。

2. 機器について

そもそも「S-BEY賞」とは、"Softech - Best Engineer of the Year"の略で、その名とおりその年度でソフテック社員の中から業務を通じて活躍、会社に貢献したエンジニアを表彰対象とした制度となります。
ソフテックはお客様からご依頼いただいたシステム受託開発業務を中心とした会社です。お客様からご評価いただくためには、技術力は重要な要素のひとつとなります。
ソフテックにとって、新分野を切り拓く新技術は重要な意味をもち、中でもお客様が関心をもたれている技術はそれだけで価値を見出せます。
「S-BEY賞」の表彰は会社として高い競争力を維持するために、社員の技術力向上を推進するための会社的な取り組みの一環です。

(1). RTOS対応組み込みコントローラとは?

ソフテックでは機械制御には主にPLCを使っています。PLCは、高速処理と安定制御、そして豊富なI/Oを兼ねそろえた優れたソリューションです。しかし、多くのデータ処理する場合にはPCと比べ不得手になります。
それを解決したものがRTOS対応組み込みコントローラです。RTOS対応組み込みコントローラは、PLCの持つ特色はそのままにロジックをPCと同様のC言語でプログラミング可能なため大量のデータ処理にも難無く対応可能です。
今回は、横河電機製のRTOS対応組み込みコントローラ「F3RP51-3P」を使用しました。「F3RP51-3P」は、RTOSとしてμITRON(Micro Industrial TRON、工業用途RTOS)仕様のNORTi(ミスポ社製 ITRON)を搭載しており、プログラミングの汎用性にも優れています。
(以下、RTOSコントローラと記します。)

(2). モーションコントローラとは?

モーションコントローラはパルス信号の出力によりモータドライバを制御するコントローラです。今回は、テクノ製「PLMC40」を使用しました。
「PLMC40」は、PLCやRTOSコントローラと組み合わせて使う専用のコントローラで、独自の言語でモーション制御を自由に行うことが可能です。

3. 案件紹介

今回、紹介させて頂くのは、ある目的のために2軸を制御し、対象を移動させるシステムです。以下に簡単なシステム構成図を示します。

システム構成図
図1. システム構成図

ソフテック範囲は「制御」部分となります。
「ホスト」からは、ある点から別のある点までの移動指令が届きます。「制御」部分では、それに従い通過可能な最短のルートを作成し、その通りに「対象」を制御します。2軸で平面の移動のみですが、機器の性質上、垂直・水平にしか動けません。しかし、高速かつ直角に動くのでは曲がる際の衝撃が大きくなってしまいます。そこで、円弧を描きつつ進路を変えるという動きになります。

4. 役割分担

最短ルートの検索をRTOSコントローラ、軸制御をモーションコントローラと役割分担し、処理を実現しています。

(1). ルート検索

「ホスト」からは、移動元と移動先の情報しか来ません。
「RTOSコントローラ」では、自分で管理している各種の位置情報から最短ルートを検索し、通過ポイントの情報を「モーションコントローラ」へ通知します。

ルート検索イメージ
図2. ルート検索イメージ

ルート検索のためには、どこが通過可能で、どこが通過不可能なのか?また、複数のルートが存在する場合、どちらが近いのか?など多くの情報をもとにルートを決定します。「ホスト」との親和性や、こういったデータ処理をプログラミングすることをC言語は得意としており、「RTOSコントローラ」をうまく利用できたと考えています。

(2). 軸制御

「モーションコントローラ」では、「RTOSコントローラ」から通知された通過ポイントに向かって「対象」が動作するよう、順次、軸制御を行います。

軸制御イメージ
図3. 軸制御イメージ

直線動作では、曲がる際の衝撃が大きくなりますので、円弧補間を行い、高速かつスムーズな移動となるようにしています。
また、軸制御中も「ホスト」からのキャンセル指示などにより移動先が変更になる場合があります。軸制御の軌跡は、このような場合にも対応できるようにリアルタイム(2msec周期)に処理されています。

4. 高速高精度制御とS-BEY新技術部門-特別賞

本システムのもうひとつの特徴として、高速(1.5m/秒)かつ高精度(15μm)での軸制御を行っているというものがあります。組み込みプログラムで同様のことを実現しようとすると大変難しいのですが、実は、今回、この部分はモーションコントローラが実現してくれています。
そのため、制御自体が難しいということはありませんでした。しかし、モーションコントローラの使い方として、ソフテックに実績のないものであったため、少々苦労しました。新しい技術に意欲的に取り組んでいく。それを認められた結果が「特別賞」に繋がったものと思います。

(H.T.)


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