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ソフテックだより 第9号(2006年1月4日発行)
技術レポート
「PLCとPCのEthernet通信」

PLCを扱っていると、どうしてもPC(パーソナルコンピュータ)との連携が必要になる場合があります。それは機器の状態監視や、データ設定などさまざまです。

ではPC-PLC間の通信はどのように実現しているでしょうか?高速で信頼性の高い通信を実現するために、各PLCメーカーで提供している通信方式に対応した専用の通信ボードを使う事がほとんどです。

専用の通信ボードを使っての通信は「信頼性」があり、なおかつ「安定している」というメリットがあります。当社でもこれらの通信ボードを使って各PLCとの通信を実施してきました。

ところが最近ではPC専用の通信ボードを使わずにPC-PLCとの通信を行う場合が増えてきています。その理由として後述している設置が用意、安価などのメリットもありますが、PCの故障時などに専用の通信ボードなどが必要無いため、代替え機の用意、設定を迅速に行えるという点も理由にあげられます。

では専用の通信ボードを使わない通信とはどんな通信でしょうか?それは「Ethernet通信」です。RS-232CやRS-422などを思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は今後さらに普及していくと思われるEthernetに焦点をあてて説明していきます。

1.Ethernetを使うメリット、デメリットとは?

メリットとして次の3点があげられます。

(1)PC側に専用の通信ボードが必要無くなる

Ethernetを使う事で、PC側に専用の通信ボードは必要無くなります(PLC側にはEthernet対応ユニットが必要です)

Ethernet用の通信ドライバさえ用意すれば、メーカーを気にせずに複数のPLCとの通信も可能となります。

(2)設置が容易

三菱製PLCを例にあげると、専用ボードを使った場合のPLCネットワーク(MELSECNET光)との接続は光ケーブルが必要です。また光ケーブルの設置、接続(端末処理)などは専門技術が必要になります。

他社PLCの場合でも同様に専用ケーブルなど必要になる場合がありますが、Ethernetにすることで簡単に手に入れることができる市販品を使って接続することができます。

(3)短期間で安価にシステムを構築できる

専用の通信ボードは受注生産(納期がかかる)であったり、価格が高いなどのデメリットがあります。安価にシステムを構築したい場合にはこれらの通信ボードの価格がネックになる場合があります。

Ethernet通信の場合は市販のEthernetケーブルやHUBなどを組み合わせて安価にシステムを構築することができます。

しかしデメリットもあります。デメリットとして一番に思い浮かぶのは「信頼性」です。Ethernet通信は専用の通信ボードを使う場合と比べると「信頼性が低い」という面があります。

機器の制御データを安心してEthernet経由で行えますか?という視点で考えるとまだ専用通信ボードに分があります。デメリットとして3点あげてみました。

(1)通信応答時間

制御データをPLCで処理する場合、PLCネットワークのスキャンタイムとPLCプログラムのスキャンタイムをラダーサポートソフトでチェックしておく事でデータのやりとりに必要な応答時間などを正確にすることが可能です。

それに対してPC (Windows PCを前提) を使うとWindows OSの処理およびWindows上で動作する各ソフトウェアの処理状況により負荷が変動しているため、正確な応答時間を計算することは難しくなります。

(2)通信速度

Ethernet接続の場合、HUBに接続される機器が増え、通信データ量が増えた場合にPC-PLC間の通信速度に影響があります。

(3)ネットワークの2重化

PLCネットワークの正ループ、副ループなど2重化されているネットワークをEthernetで実現させる為には2重化用のEthernetボードおよびソフトウェア側での対応が必要になる場合があります。

2.各PLCメーカーのEthernetの対応状況

当社でEthernet通信を行った実績がある3社(三菱電機、横河電機、オムロン)に絞って下図に対応状況をまとめてみました。

各社ともにEthernet通信は対応しておりますが、それぞれの特徴を、

(1) 通信ドライバの有無:PC側に通信ドライバが用意(市販)されているか
(2) 通信ドライバの扱いやすさ:簡単にVB・VCで通信サンプルを作れるか
(3) 拡張性:通信ドライバを自社で変更可能か
(4) PLC側通信ラダーの必要性:PLC側にEthernet通信ラダーが必要か

以上の4つの観点から表にまとめました。

メーカー 市販通信
ドライバの有無
通信ドライバの
扱いやすさ
拡張性 PLC側通信ラダーの
必要性
備考
三菱 AnA、QnAは必要
Qシリーズは必要なし
 
横河 × 必要なし 当社では自社開発したドライバでPLCと通信
オムロン 必要なし  

2.1.三菱電機社製PLC

PLC側のEthernet関連ハードも整備されてきており、Qシリーズなどはラダーサポートツールからパラメータを設定するだけでEthernet通信できる状態になります。

またPC側の通信ドライバ(MX Component)も発売しており、PLCメーカーの中では一番容易にPLCとの通信を行いやすい環境(VCやVBなどから容易にPLCとの通信を行える)が整っています。

No PLC種別 PLC側通信プログラム 通信速度
1 AnAシリーズ 通信ラダーが必要 10Base対応
2 QnAシリーズ 通信ラダーが必要 10Base対応
3 Qシリーズ 通信ラダーは必要なし
(パラメータ設定のみ)
100Base対応

また上記AnA、QnA、QシリーズではQシリーズ>QnAシリーズ>AnAシリーズの順に通信が高速に行えます。もしEthernetで大量のデータを高速通信したい場合にはQシリーズを採用し、さらに通信を行うPLCのスキャンタイムを短くすることが重要です。

2.2.横河電機社製PLC

横河電機製PLCは早くからEthernetに対応しています。
(当社でPC-PLC間のEthernet通信を初めて使ったのがFA-M3でした)

PLC側の設定は少なく容易ですが、PC側の通信ドライバは公開(市販していない)しておりません。ただし通信仕様を公開しているため、当社では通信部分を作成してPLCとの通信を行っている実績があります。

No PLC種別 PLC側通信プログラムの有無 通信速度
1 FA-M3シリーズ 通信ラダーは必要なし
(PLC本体にIPアドレスを設定)
100Base対応

通信速度はFA-M3R>FA-M3の順に通信が高速に行えます。もしEthernetで大量のデータを高速通信したい場合にはFA-M3Rシリーズを採用し、さらに通信を行うPLCのスキャンタイムを短くすることが重要です。

通信ドライバが用意されていないのが欠点ですが、通信仕様を元に通信ドライバを開発できる技術がある場合、自社で使いやすいように通信プログラムを組む事ができるため拡張性があります。

2.3.オムロン社製PLC

PLC側のEthernet環境も徐々に整備されてきております。PLC側の設定はラダーサポートツールからパラメータを設定するだけでEthernet通信できる状態になります。

通信ドライバ(FinsGateway)も発売されておりEthernet通信を行う環境は整っていますが、通信設定の方法・通信ドライバは若干扱いにくいところがあります。

No PLC種別 PLC側通信プログラムの有無 通信速度
1 CS、CJシリーズ 通信ラダーは必要なし
(パラメータ設定のみ)
100Base対応

CSシリーズのEthernet通信はプログラム実行のスキャンタイムに依存せずに動作させる事ができる並列処理モードがあり、PLCのスキャンタイムに依存しない通信が行えます(残念ながら並列処理モードでの当社の使用実績はまだありません)

また通信ドライバはVC・VBなどで簡単に通信部分を作成できる環境ではありません。そのため通信部分を作成するにはプログラムの知識が必要となります。

3.Ethernet通信のまとめ

PC-PLC間の通信という事でEthernet通信をあげてみましたが、いかがだったでしょうか?

PCの世界で標準的なEthernet通信が、PLCの世界にも普及してきているという事がおわかりいただけたかと思います。ここ数年で、PC-PLC間の通信環境が変化しEthernet通信に対応したものが多くなってきました。それに合わせ通信ドライバも徐々に充実してきています。

PC側、PLC側のインターフェースも10BASE対応から100BASE、1000BASE対応という様に通信速度の高速化も進んでおり、デメリットとしてあげた信頼性についても通信ドライバが充実してくることで、ユーザーが意識することなく信頼性の高い通信を行えるようになってくると考えています。

今後もPC-PLC間の通信環境はまだまだ変化していくと思いますが、世界に広く普及しているEthernet通信の活躍の場はPLC通信にも増えていくと考えます。

(S.N.)



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