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ソフテックだより 第229号(2015年3月4日発行)

技術レポート

「各社PLC比較 〜二重化編〜」

1. はじめに

PLCは、Programable Logic Controllerの略で、シーケンサとも呼ばれています。
PLCは、数百、数千の電磁リレー回路の代替装置として開発された制御装置で、工場の機械制御などに使用しております。

PLCも性能が向上してきており、重要で容易に止まってはいけないシステムの制御などでも使われるようになっています。
例えば以下の様な条件が必要なシステムとなります。

  • 24時間の連続稼働が必要なシステム
  • システムダウン発生時に復旧コストが多大なシステム
  • システムダウン発生時に災害が発生するシステム

※各説明は「3.二重化システムは、どのような所で使用されているか」で後述します

止まってはいけないシステムを実現するために、二重化の機能を持つPLCが誕生しております。
二重化することで、故障した際にも運転を継続できる、片側の系統のメンテナンスができるなどの特徴があります。

二重化についての説明、及びPLCの具体例など含めてご紹介させていただきます。

2. 二重化とは

IT用語として二重化を調べ、以下のような内容であると理解しております。

  • 障害が発生した際にシステムを停止させることなく、運用するのが目的
  • 障害が発生して、使用している機器が故障しても制御を続ける
  • 特定の部位を二系統分準備することで障害に備える

PLCで実現する二重化の方式としては、大別すると以下の2つになります。

  • デュプレックスシステム:
    制御系と待機系の二系統を準備し、正常な系統だけで処理を行います。
    通常時は、制御系だけで処理を行います。制御系が故障した場合、待機系が制御系へと切り替わり、処理を継続するシステムとなります。
    一時的に停止しても良いシステムならば、予備のハードを用意して置くこともデュプレックスシステム(コールドスタンバイ)となります。
  • デュアルシステム :
    二系統を同時に動作させ、処理を行います。
    どちらの系統も動作しているため、故障時の切替の時間が発生しないメリットがあります。
3. 二重化システムは、どのような所で使用されているか

PLCのマニュアル、メーカーのホームページを確認すると以下のような用途で使用されていると紹介されています。

  • 24時間の連続稼働が必要なシステム
    水処理など環境に関わるシステムが停止することで日常生活に支障をきたすシステムに使用されます。
  • システムダウン発生時に復旧コストが多大なシステム
    発電用の燃料管理などのシステムが停止することで、誤作動による流出・計測ミスなど損失が大きいシステムに使用されます。
  • システムダウン発生時に災害が発生するシステム
    化学プラントなどのシステムが停止することで、有害物質の流出・爆発などが発生する恐れがあるシステムに使用されます。
4. 構成の違い

今回は、二重化PLCとして、以下のメーカーについて比較し、紹介させていただきます。

  • 三菱電機製(デュプレックスシステム)
  • オムロン製(デュプレックスシステム)
  • シーメンス製(デュアルシステム)

PLCでは、以下を二重化する部位として分けることができます。

  • CPUユニット
  • 基本ベースユニット
  • 電源ユニット
  • 通信ユニット
  • I/Oユニット

私が実際に使用したことがあるのは、三菱電機製のみです。
特徴について、情報が偏っている点もございますが、以下のように感じております。

  三菱電機 オムロン シーメンス
特徴 接続先の選択が簡単
制御系・待機系と2系統あるが意識することなく扱える
ホットスタンバイ方式
切替がスムーズ
イベント同期方式
外部I/Oへのアクセス、割込処理があった時にCPU間の同期を取り、更新遅れがなくなる
パラメータでの二重化設定
トラッキング設定、ネットワークペアリング設定など、パラメータで容易に設定が可能
二重化監視に自動復帰
異常が発生し、片側だけになっても異常要因が復帰すると自動で二重化監視に戻る
二重化 デュアルシステム
同時に動いているので切替が不要
自由なレイアウト
ベースごと分かれているため、レイアウトに自由度がある
周辺ツールなしでユニット交換可能
機能を有効にセットしておくことで、交換する際にツールからの操作なしで、I/Oユニットなど交換できる
システム状態のモニタ可能
システムモニタにより二重化システム全体のモニタが可能
二重化対象
ユニット
CPU CPU CPU
電源 電源 電源
Ethernet Ethernet PLC間ネットワーク
CC-Link IE Contoroller Link I/O
MELSECNET/H I/O
ベース
切替条件 CPU停止(電源断、エラー停止など) ユニット故障 二重化のどちらも動作するので、切替なし
ネットワークユニット故障・断線
(Ethernet,CC-Link,MELSECNET/H)
運転切替異常 (CPU異常、メモリ異常、サイクルタイムオーバー、プログラムエラー、FALS命令異常)

表1.二重化機能一覧

実際に使用する際の構成例を以下に記述します。

4.1 三菱電機

三菱電機のPLCで構成可能な例をご紹介します。
電源・CPUのペアの構成を2セット用意し、2つをトラッキングケーブルでつなぎます。
トラッキングケーブルを通じて、データの転送など行い、二重化を実現しています。

A系(制御系側)がユニット故障・通信(Ethernet,MELSECNET)ケーブルの断線などで正常に動作出来なくなった場合、B系(待機系)が制御系になり、処理を継続することができます。

図1 三菱電機 二重化CPUの例
図1 三菱電機 二重化CPUの例

次は、電源の二重化が追加されたケースです。
電源ユニットが1つ故障しても継続することが可能となります。

図2 三菱電機 二重化CPU 電源二重化の例
図2 三菱電機 二重化CPU 電源二重化の例

4.2 オムロン

オムロンのPLCで構成可能な例をご紹介します。
1つのベースに電源ユニットを2つ接続したケースです。
電源ユニットが1つ故障しても継続可能です。

図3 オムロン 単独CPU 電源二重化の例
図3 オムロン 単独CPU 電源二重化の例

次は、CPUを二重化したケースです。
2つのCPUの他に「デュプレックスユニット(二重化ユニット)」が必要となります。
アクティブCPU(制御系)がユニット故障などで正常に動作出来なくなった場合、スタンバイCPU(待機系)が制御し、処理を継続することができます。

図4 オムロン CPU二重化 電源 二重化の例
図4 オムロン CPU二重化 電源 二重化の例

4.3 シーメンス

シーメンスのPLCで構成可能な例をご紹介します。
CPUが2つ、電源が2つで構成されます。そこに1つのI/Oから、それぞれのCPUがバスケーブルで信号を取得する構成です。
それぞれが動作しているので、CPUが1つ故障・電源が1つ故障した状態でも制御を継続することができます。

図5 シーメンス 二重化CPU&シングルI/Oの例
図5 シーメンス 二重化CPU&シングルI/Oの例

次は、I/Oを二重化したケースです。
I/Oも二重化されたことにより、どちらかのI/Oが故障しても、正常な方で信号を入力・出力できます。

図6 シーメンス 二重化CPU&二重化I/Oの例
図6 シーメンス 二重化CPU&二重化I/Oの例

5. 三菱の二重化PLCを使ってみて

実際に私が三菱電機の二重化PLCを使用した時に感じた事を紹介いたします。
その時は、リプレース案件で、QnA CPUで動作している制御をQシリーズ及び二重化PLCで更新を行いました。
各所の設備をMELSECNETでつなぎ、データ(アナログ値、指令・動作結果)のやりとりをするシステムです。

5.1 苦労した点

マニュアルに記載されていることですが、二重化PLCの制限として、以下の点で苦労しました。

  • MELSECNETの二重化は、連続する局番で取る必要がある
    二重化するにあたり同じエリアを通信で使用できるようにする必要があります。
    二重化の設定(ペアリング)をするには、連続した局番であるという制限があります。
    リプレース前は、二重化ではないので1局分しか確保しておらず、別の局番を2局連続で取り直す必要がありました。
  • MELSECNETの管理局は、Qシリーズ以降のCPUを使用する必要がある
    元々のシステムでは、QnA CPUがMELSECNETの管理局をしていましたが、このままでは二重化PLCをシステムに追加することはできません。
    システムを止めて一斉に更新できれば難しく考える必要はないのですが、部分的に更新をする必要がありました。そのため稼働中のシステムを最小限の停止で済ませる工夫が必要でした。
    一時的に仮の管理局用PLC(Qシリーズ)を用意し、QnA CPUの管理局は通常局にすることで、二重化PLCをシステムに追加することができました。
    似たような事例はマニュアルに記載はされており、事例を組み合わせることで、なんとか期待した通りに更新することができました。
5.2 良いと感じた点

使って見て良い所と感じたのは、以下の点です。

  • 1回の操作でプログラム変更可能
    制御系・待機系を意識することなく、更新することができます。
    要するにプログラムを作る分には、二重化であることを意識する必要はありません。
    もちろん二重化特有のプログラムをすることも可能です。
  • 動作モードが複数ある
    バックアップモード、セパレートモード、デバッグモードがあります。
    複数のモードがあることにより、使い方の多様性が増します。
    バックアップモード
    制御系・待機系があり、制御系に異常があった場合は、いわゆる今まで説明してきた二重化のモードとなります。
    セパレートモード
    通常バックアップモードだと、待機系は動作しません。
    セパレートモードは、制御系・待機系のそれぞれが動作するようになります。
    制御系を止めることなく、待機系で動作確認をすることが可能となります。
    デバッグモード
    二重化CPUが2つ用意できない際に、1系統で動作したい時に使用します。
    実機は納入済みで調査用に1台しか用意できない状況では便利と感じます。
    もちろん二重化特有の動き(系切替・転送機能など)は検証できませんが、簡単なプログラムを確認する分には問題ありません。
5.3 その他

また、以下の様なことを感じました。

  • 平常時は二重化の有り難みがわからない
    二重化自体は、保険のようなものですので、トラブルが起こらないと有効性が感じられないという点が残念です。
  • CPUのResetやRUNの操作は制御系・待機系を同時(3秒以内)に行う必要があり
    同時の操作をしないと運転状態が違うと判断し、エラーランプ点灯します。(続行可能エラー)
    エラーなく立ち上げるためには、癖があると感じました。
  • 片方の系統だけでは立ち上げることができない。
    立ち上げる時には、2系統分必要となります。トラッキングケーブルで相手が居ることを認識できないと、エラーで立ち上がりません。
    良い点で書いたように「デバッグモード」にすることで、対応することは可能ですが、パラメータを変更することが必要ですので、一手間あります。
6. おわりに

本レポートでは、二重化について紹介させていただきました。
全てを二重化すれば、安全性は上がっていきますが、それに伴いコストの増加、場合によってはプログラムの複雑さが増していくケースもあります。
実際、お客様の強い希望で過剰と思われる二重化のシステムを立ち上げたこともあります。残念ながら、改造する度に多大な苦労を伴っています。
実現する目的を明確に持ち、無駄が発生しないように最適なシステム構成を提案させていただくようにします。

(T.N.)

[参考文献]
『QnPRHCPUユーザーズ(二重化システム編)』三菱電機
『SYSMAC CSシリーズ CS1Dデュプレックスシステムユーザーズマニュアル』オムロン
『Factory Mart Japan 〜リダンダント(二重化システム)PLC シーメンス・ジャパン(株)〜』
http://www.fa-mart.co.jp/siemens/30.html
『MELSEC Qシリーズ〜二重化システム新登場〜』
http://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/document/nproduct/plc/389/389b.pdf
『月間計装〜二重化対応のPLCによる計装システム〜』
http://www.fa.omron.co.jp/product/promotion/213/plc_process/data/presreli/014_0205keis.pdf
『PRO-SITE〜SIMATIC S7-400H〜』
http://www.pr-seed-s.com/plc/s7_400h.html
『@IT〜冗長化・二重化〜』
http://www.atmarkit.co.jp/aig/02security/redundancy.html
『e-Words〜二重化【duplication】〜』
http://e-words.jp/w/E4BA8CE9878DE58C96.html

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