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ソフテックだより 第7号(2005年12月7日発行)
技術レポート

「サーボモータ・位置決め制御とは?」

現在、サーボモータは半導体製造装置や部品実装機、搬送機械などの駆動源として幅広く使用されています。

サーボモータは、精密で高速な制御ができる反面、多くのパラメータの設定が必要で、『実際に動かして見なければ分からない』ところがあることも事実で、経験的な知識が必要とされている奥深い技術です。合わせてPLCとサーボモータの接続形式も多種多様有り、機器選定にも経験が必要です。

弊社ではシステム納入時にサーボモータの調整までを担当することも有ります。
そこでは多くのノウハウが有りますが、今回はサーボモータの基本から実際にPLCを使用した案件を例にとって紹介したいと思います。

1.サーボモータとは

サーボモータ機構は下図の様に分類されます。

サーボモータとは

サーボモータとは、サーボアンプがPLCからの指令信号とエンコーダからのフィードバックを一致させる為にサーボモータに指令信号とフィードバックの誤差に比例した電力を供給する機構です。

エンコーダとは

エンコーダとは、回転角・速度・方向を検出するための機器です。
インクリメンタルエンコーダとアブソリュートエンコーダがあり、以下のような特徴があります。

  インクリメンタルエンコーダ アブソリュートエンコーダ
特徴 相対値出力。回転角の変化分に対して、パルスが出力されます 絶対値出力。回転角の絶対値が出力されます
停電時のデータ 停電中に動いた量が分からないため、電源投入時の原点復帰動作が必要です 構造上、停電中に動いた量も解るため、電源投入時の原点復帰動作は不要です
価格 構造が比較的簡単のため安価です 構造が比較的複雑のため高価です

フィードバックとは

フィードバックとは、指令を与えてその指令どおり動いたかを確認するために戻すパルス列のことです。

2.位置決め制御とは

位置決め制御は次のような動作によってモータの回転を実現しています。

(1)
PLCからパルス列が出力されると、サーボアンプ内の偏差カウンタに入力されたパルスが積算されます。
(2)
パルスの積算値(溜りパルス)がD/A変換器によって直流アナログ電圧となり、サーボモータの速度指令になります。
(3)
サーボアンプからの速度指令によりモータは回転を開始します。
(4)
モータが回転すると、モータに付属のエンコーダにより回転数に比例したフィードバックパルスが発生します。
発生したフィードバックパルスは、サーボアンプにフィードバックされ、偏差カウンタの溜りパルスを減算します。
偏差カウンタはある一定の溜り量を保ってモータの回転を続けます。
(5)
PLCからの指令パルス出力が停止すると偏差カウンタの溜りパルスが減少して速度が遅くなり、溜りパルスが0になるとモータは停止します。

このようにモータの回転速度は指定パルスの周波数に比例し、モータの回転角度は指令パルスの出力パルス数に比例します。
したがって、1パルスあたりの移動量を規定しておけば、パルス列のパルス数に比例した位置まで送ることができます。
また、パルス周波数はモータの回転数(回転速度)になります。

3.代表的な位置決め制御の構成例

位置決め制御を実現する方法は主に以下に紹介する3つのパターンがあります。
それぞれの特徴を紹介します。

構成 PLC+位置決めユニット PLC+モーションコントローラ PLC+位置決め機能内蔵サーボアンプ
特徴 軸数 制御できる軸数が少ない。
1軸〜4軸/1ユニットなど
制御できる軸数が多い。
1軸〜32軸/1ユニットなど
制御できる軸数が少ない。
1軸〜2軸/1サーボアンプなど
制御 通常の位置決め制御の他に複数軸の補間制御等が可能 通常の位置決め制御の他に複数軸の同期制御、補間制御等の高度な制御が可能 単純な位置決め制御しかできないものが多い
配線 十数本のパラレル配線が必要。
高速ネットワークが使用できるものもある。この場合は省配線が図れる
専用、又は汎用の高速ネットワークを使用することが多い。省配線が図れる コントローラ〜サーボアンプ間の配線は無い。(内蔵のため)
省配線が図れる。
PLCへの配線はパラレル、シリアル、CC-Linkなど
価格 モーションコントローラに比べて安価 位置決めユニットに比べて高価 位置決めユニットが不要になるので省スペース・低価格でシステムを構築できる
 プログラミング 位置決め用プログラムはPLCに持たなければならない。

専用のソフトウェアを使用し、プログラムレスで位置決め制御を実現できるものもある。

専用のソフトウェアを使用し、位置決め用プログラムをモーションコントローラに書込む。
また、PLCから位置決めプログラムを切り離せるので全体のスキャンタイムは短くなり構造化・標準化を図れる
位置決め制御に関するプログラムはPLCとサーボアンプ間のインターフェイスのみになるため、プログラム作成の負荷を軽減できる
パラメータの設定 ラダーから位置決めユニットにパラメータを入力する方法の他に専用のソフトウェアを使用し、パラメータを位置決めユニットのROMに書込む方法もある 専用のソフトウェアを使用し、位置決め用プログラムと一緒にモーションコントローラに書込む。
他に比べて設定項目が多く、細かいチューニングが可能。また、オートチューニングが可能なものもある
専用のソフトウェアを使用し、サーボアンプに設定をダウンロードする
メンテナンス性 専用のソフトウェアを使用しない場合、ラダーからデータを取出してモニタする必要がある。
 パラレル配線を使用した場合は、ハードの保守範囲が増えるのでメンテナンス性は低い
専用のソフトウェアはモニタ機能が充実している場合が多いので、メンテナンス性に富む。
高速ネットワークを使用するため省配線になり、ハードの保守範囲が減る
専用のソフトウェアはモニタ機能が充実している場合が多いので、メンテナンス性に富む。
コントローラを内蔵しているため、プログラムの量が減り、ハードの保守範囲も減る。メンテナンス性は非常に高い

これらの比較結果から、実際のケースを想定した場合、以下の様に選定できます。

ケース1
  • イニシャルコストを抑えたい。
  • 制御盤のサイズを小さくしたい。
  • 複雑な制御は無い。

具体例 : 数十ポジションのワーク搬送など…

ケース2
  • 制御軸数が少ない。
  • 複雑な制御が必要。

具体例 : 数十〜数百ポジションのワーク搬送や、2軸円弧補間制御が必要な場合など…

ケース3
  • 制御軸数が多い。
  • 複雑な制御が必要。
  • 同期制御が必要。

具体例 : 通常の位置決め制御に加えカムパターンが必要な場合や、複数軸の同期制御が必要な場合など…

ケース1の場合は、省配線・省スペース・低価格で位置決め制御を実現できる【PLC+位置決め機能内蔵サーボアンプ】が有効です。

ケース2の場合は、比較的安価で複雑な制御が可能な【PLC+位置決めユニット】が有効です。

ケース3の場合は、複雑な制御が可能な【PLC+モーションコントローラ】が有効です。

4.案件例

当社のモーションコントローラを使用した納入事例について紹介します。
下図の様な装置開発に使用しました。

この装置では主に以下の箇所にサーボモータを使用しています。

(1)
X軸(XYテーブル)
(2)
Y軸(XYテーブル)
(3)
材料の充填
(4)
充填された材料の圧縮
(5)
形状の成型

この装置で制御する軸数は上記以外を含めると10軸を超えており、(3)〜(5)は同期制御が必要な機構を持っています。
また、レシピデータによって毎回異なった動きをする必要があります。

このときは三菱電機製のモーションコントローラ(モーションコントロールCPU)を採用しました。
位置決め制御を独立して設計、保守できる為、複雑な軸制御を効率よく設計できました。また、パラメータの設定項目も充実しており、トルクや速度などを細かくチューニングすることも可能でした。

いかがでしたでしょうか?

位置決め制御は機械、電気の設計と密接に結びついていることが多く、プログラム以外のところにも注意しなくてはなりません。例えば対象装置の精度によってはギヤ比や分解能の選定も関わってきます。
特にサーボモータを使用した装置の立上げ時は、安全対策について細心の注意が必要です。

ほんの一例でしたが、これから位置決め制御を始める方の参考にしていただければと思います。

(M.F.)


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