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ソフテックだより 第253号(2016年3月2日発行)
技術レポート

「InfoWellを使用したシステム構築」

1. はじめに

横河電機株式会社殿のPLC計装システムの一つにSTARDOMがあり、そのコンポーネント製品の一つに自律型コントローラであるFCJ(Field Control Junction)があります。
FCJを使用する機会がありましたので、FCJのサポートツールである情報発信パッケージInfoWellを使用したシステム構築を行った際に確認した機能について紹介したいと思います。

FCJは、本体にI/Oインタフェースを内蔵した、オールインワンタイプの自律型コントローラです。ネットワークを介して他のFCJやPLC(Programmable Logic Controller)と通信を行い、連携して動作させることが可能です。また、汎用PC上からFCJのデータをアクセスすることができます。
FCJの制御アプリケーションは、STARDOMのエンジニアリングツールである、ロジックデザイナを使用して作成します。ロジックデザイナは、国際標準規格であるIEC 61131-3に準拠した制御言語をサポートしており、用途に応じて制御言語を使い分けることができます。また、制御ロジックをモジュール化した標準POU(Program Organization Unit)を使用してアプリケーションを作成することができます。

InfoWellは、FCJ単体でWebやEメールによる情報発信する機能を持ち、Webブラウザのテンプレートを編集するだけで設定することができます。

FCJとInfoWellの構成
図1. FCJとInfoWellの構成

2. InfoWellの特長

InfoWellの機能は表1の通りです。
今回はWebアプリケーションポートフォリオとロギングポートフォリオについて紹介したいと思います。

No 機能 内容
1 Webアプリケーションポートフォリオ FCJをWebサーバとして、ネットワーク上のすべての汎用PCから設備の監視・操作を行うことができます。
2 E-mailアプリケーションポートフォリオ FCJのイベントやアラーム発生時に、任意のメッセージを自動的にメール発信する機能です。
3 グラフィックポートフォリオ ビットマップ形式やJPEG形式などの画像ファイルを背景画として表示し、この背景画の上に数値やバーグラフなどの部品を配置したグラフィック画面をWebブラウザで表示することができます。
4 ロギングポートフォリオ 制御アプリケーションのデータを収集/保存し、汎用PCのWebブラウザで簡単に表示できます。

表1. InfoWellの機能

2.1 Webアプリケーションポートフォリオ

Webアプリケーションポートフォリオは、Webブラウザ上に画面表示する機能です。テーブル表示やグラフ表示、バー表示等、様々なテンプレートが用意されており、それを流用するだけで簡単に表示画面を作成することができます。

以下にアナログ入力の値をバー表示する場合の設定手順を記載します。

@FCJの制御アプリケーションを作成する。

FCJを動かすために、ロジックデザイナを使用し、制御アプリケーションを作成します。制御アプリケーションは、制御ロジックの機能を部品化したアプリケーションポートフォリオ(APPF)を使用することで、作成が容易となります。
制御アプリケーションの作成例を以下の図2に示します。図2は以下の計算を行うプログラムです。

現在値=アナログ入力値×倍率+最小値

アナログ入力値:アナログ入力(I_A_01)から取得した値(OUT_VAL)
倍率:Scale_Flw1
最小値:Min_Flw1
現在値:VAL_Flw1

制御アプリケーション
図2. 制御アプリケーション

また、InfoWellから制御アプリケーションにアクセスするために、制御アプリケーションの変数(POUインスタンス)毎に外部からのアクセスを有効にする必要があります。POUインスタンスの「OPC」を有効にすることで、外部からのアクセスが有効になります。

Aデータ収集設定を行う。

WebブラウザからFCJに接続し、データ収集画面を表示します。この画面でFCJのPOUインスタンスと画面表示で使用するタグ名の関連付けなどを行います。また、POUインスタンスの比較やSUM計算などの簡単な関数も用意されています。
図3にデータ収集設定の例を示します。図3では、FCJのPOUインスタンスの「GV.VAL_Flw1」をスケール変換し、VAL_Flw1タグに関連付けています。

データ収集設定
図3. データ収集設定

BWeb画面のテンプレートを編集する。

Web画面の作成は、Infowellのテンプレートとして用意されているHTMLファイルを編集して作成します。用途に応じてテーブル表示やグラフ表示、バー表示やトレンド表示等、様々なテンプレートが用意されています。
下記図4はバー表示の編集画面です。

Web画面作成
図4. Web画面作成

CWeb画面を表示する。

WebブラウザからFCJに接続し、Bで作成した画面を表示します。

Web画面表示
図5. Web画面表示

2.2 ロギングポートフォリオ

ロギングポートフォリオは、FCJ上でロギング処理を行うソフトウェアです。
その他に、ロギングファイル表示機能やロギングファイル収集機能等があります。

2.2.1.ロギング機能

ロギング機能には以下の機能があります。

1)データロギング
データロギング機能は、制御アプリケーションのデータを収集し、記録する機能です。ロギングポートフォリオのAPPFが用意されているため、このAPPFを使用してロギング収集を行います。

@定周期ロギング

定周期にデータを収集し、定周期にロギングファイルとして保存します。収集周期が1〜60秒の高速収集と1分〜60分の低速収集の2つのタイプがあります。また、ロギングファイルの作成は、時締めと日締めの2種類あります。高速収集の場合は時締めのみです。

Aバッチロギング

制御アプリケーションのデータを「バッチ記録スイッチ」に割り付け、このデータのON時にデータ収集を開始し、OFF時にロギングファイルを作成する(締める)機能です。高速収集と低速収集の2つのタイプがあります。

Bスナップショットロギング

制御アプリケーションのデータを「トリガ」、「締め切りトリガ」に割り付け、「トリガ」のON時にデータを収集(不定期周期)する機能です。ロギングファイルの生成は日締めと、「締め切りトリガ」のON時に行うものの2種類があります。

2)シーケンスイベントロギング
シーケンスイベントロギングは、異常などのイベントが発生した前後のデータを高速にログし,ファイルへ保存します。 簡易レポートは作成できません。

3)メッセージロギング
制御アプリケーションで発生したメッセージやFCJで発生するメッセージを日締めで記録する機能です。

2.2.2.ロギング機能使用例

スナップショットロギングを使用して、汎用PCにロギングファイルを転送する手順を紹介します。

@FCJの制御アプリケーションを作成する。

スナップショットロギングを行うための「トリガ」を用意します。
また、図6のように、ロギング機能を動作させるために、Taskにロギング機能のプログラムインスタンスを挿入します。

プログラムインスタンスの挿入
図6. プログラムインスタンスの挿入

Aロギング定義を行う。

ロギング定義ツールからFCJに接続し、ロギング定義を行います。
ロギング収集タイミングの設定や収集対象変数の設定などを行います。
以下図7は、スナップショットロギングでGV.Log_TriggerがON時にデータを収集し、毎日0時にロギングファイルを作成する設定です。

ロギング定義
図7. ロギング定義

Bロギングファイル収集ツールの設定を行う。

ロギングファイル設定ツールを起動し、FCJで収取したロギングファイルの転送設定を行います。
以下図8は、1日1回、00:10にロギングファイルを転送する設定です。

ロギングファイル収集ツールの設定
図8. ロギングファイル収集ツールの設定

2.2.3.ロギングファイルの表示

ロギングファイルの表示方法には以下の2通りがあります。
ロギングファイルはCSV形式で保存されます。ロギングビューアを使用してロギングデータをトレンド表示することもできます。ただ、ロギングビューアのトレンド表示は簡易的なものなので、個人的にはCSV形式で保存されたファイルを編集してグラフ表示した方が良いように思います。

1)オンライン表示
WebブラウザからFCJに接続してロギングビューアを起動し、FCJに保存されているロギングファイルを表示します。汎用PCにロギングファイルを転送する必要がないため、手っ取り早くロギングデータを参照するにはこの方法が良いです。

2)オフライン表示
汎用PCでロギングビューアを起動し、ロギングファイル収集ツールにより汎用PCに取得したロギングファイルを表示します。もちろん、CSV形式のロギングファイルを直接参照することもできます。
FCJに保存するロギングファイルは、FCJの容量を超えると古いものから削除されるため、ロギングファイルを汎用PCに転送させて恒久的に使用する場合に有効です。

3. おわりに

本レポートでは、InfoWellのWebアプリケーションポートフォリオとロギングポートフォリオについて紹介させていただきました。FCJの制御アプリケーションの作成や、Web画面作成のためにHTMLファイルの作成をする必要がありますが、サンプルが充実しているため、それほどプログラミングの知識がなくても作成可能です。また、FCJのデータとの関連付けが容易なので、それほど時間をかけずに環境構築ができました。
FCJの制御アプリケーションは、今回はFBD言語(Function Block Diagram)を使用しましたが、LD言語(Ladder Diagram)でも作成することができ、FBD言語とLD言語を用途に応じて使い分けることもできます。また作成したプログラムはPOUにして部品化できるため、構造化プログラミングしやすく、通常のラダー言語よりも保守性の高いプログラムになると感じています。
今回はI/Oインタフェース内蔵型のFCJを使用したため、使用できるI/Oは限られていますが、I/Oモジュールを組み合わせて使用するFCN(Field Control Node)を使用すれば、自由にI/Oを拡張することができます。
E-mailアプリケーションポートフォリオやグラフィックポートフォリオについてはまだ使用したことがありません。使用する機会がありましたら、また紹介させていただきたいと思います。

(T.M.)

[関連リンク]
横河電機株式会社殿ホームページ
STARDOM製品一覧
http://www.yokogawa.co.jp/stardom/component.htm?nid=left
[参考文献]
情報発信パッケージ(InfoWell)説明書 IM 34P02P51-01
ロギングポートフォリオ(InfoWell)説明書 IM 34P02P53-01
STARDOM FCN/FCJ解説書 IM 34P02Q01-01

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