「ソフテックだより」では、ソフトウェア開発に関する情報や開発現場における社員の取り組みなどを定期的にお知らせしています。
さまざまなテーマを取り上げていますので、他のソフテックだよりも、ぜひご覧下さい。
ソフテックだより(発行日順)のページへ
ソフテックだより 技術レポート(技術分野別)のページへ
ソフテックだより 現場の声(シーン別)のページへ
PLCは、Programable Logic Controllerの略で、シーケンサとも呼ばれています。
PLCは、数百、数千の電磁リレー回路の代替装置として開発された制御装置で、工場の機械制御などに使用しております。
PLCも性能が向上してきており、重要で容易に止まってはいけないシステムの制御などでも使われるようになっています。
例えば以下の様な条件が必要なシステムとなります。
※各説明は「3.二重化システムは、どのような所で使用されているか」で後述します
止まってはいけないシステムを実現するために、二重化の機能を持つPLCが誕生しております。
二重化することで、故障した際にも運転を継続できる、片側の系統のメンテナンスができるなどの特徴があります。
二重化についての説明、及びPLCの具体例など含めてご紹介させていただきます。
IT用語として二重化を調べ、以下のような内容であると理解しております。
PLCで実現する二重化の方式としては、大別すると以下の2つになります。
PLCのマニュアル、メーカーのホームページを確認すると以下のような用途で使用されていると紹介されています。
今回は、二重化PLCとして、以下のメーカーについて比較し、紹介させていただきます。
PLCでは、以下を二重化する部位として分けることができます。
私が実際に使用したことがあるのは、三菱電機製のみです。
特徴について、情報が偏っている点もございますが、以下のように感じております。
三菱電機 | オムロン | シーメンス | |
---|---|---|---|
特徴 | 接続先の選択が簡単 制御系・待機系と2系統あるが意識することなく扱える |
ホットスタンバイ方式 切替がスムーズ |
イベント同期方式 外部I/Oへのアクセス、割込処理があった時にCPU間の同期を取り、更新遅れがなくなる |
パラメータでの二重化設定 トラッキング設定、ネットワークペアリング設定など、パラメータで容易に設定が可能 |
二重化監視に自動復帰 異常が発生し、片側だけになっても異常要因が復帰すると自動で二重化監視に戻る |
二重化 デュアルシステム 同時に動いているので切替が不要 |
|
自由なレイアウト ベースごと分かれているため、レイアウトに自由度がある |
周辺ツールなしでユニット交換可能 機能を有効にセットしておくことで、交換する際にツールからの操作なしで、I/Oユニットなど交換できる |
||
システム状態のモニタ可能 システムモニタにより二重化システム全体のモニタが可能 |
|||
二重化対象 ユニット |
CPU | CPU | CPU |
電源 | 電源 | 電源 | |
Ethernet | Ethernet | PLC間ネットワーク | |
CC-Link IE | Contoroller Link | I/O | |
MELSECNET/H | I/O | ||
ベース | |||
切替条件 | CPU停止(電源断、エラー停止など) | ユニット故障 | 二重化のどちらも動作するので、切替なし |
ネットワークユニット故障・断線 (Ethernet,CC-Link,MELSECNET/H) |
運転切替異常 (CPU異常、メモリ異常、サイクルタイムオーバー、プログラムエラー、FALS命令異常) |
表1.二重化機能一覧
実際に使用する際の構成例を以下に記述します。
三菱電機のPLCで構成可能な例をご紹介します。
電源・CPUのペアの構成を2セット用意し、2つをトラッキングケーブルでつなぎます。
トラッキングケーブルを通じて、データの転送など行い、二重化を実現しています。
A系(制御系側)がユニット故障・通信(Ethernet,MELSECNET)ケーブルの断線などで正常に動作出来なくなった場合、B系(待機系)が制御系になり、処理を継続することができます。
図1 三菱電機 二重化CPUの例
次は、電源の二重化が追加されたケースです。
電源ユニットが1つ故障しても継続することが可能となります。
図2 三菱電機 二重化CPU 電源二重化の例
オムロンのPLCで構成可能な例をご紹介します。
1つのベースに電源ユニットを2つ接続したケースです。
電源ユニットが1つ故障しても継続可能です。
図3 オムロン 単独CPU 電源二重化の例
次は、CPUを二重化したケースです。
2つのCPUの他に「デュプレックスユニット(二重化ユニット)」が必要となります。
アクティブCPU(制御系)がユニット故障などで正常に動作出来なくなった場合、スタンバイCPU(待機系)が制御し、処理を継続することができます。
図4 オムロン CPU二重化 電源 二重化の例
シーメンスのPLCで構成可能な例をご紹介します。
CPUが2つ、電源が2つで構成されます。そこに1つのI/Oから、それぞれのCPUがバスケーブルで信号を取得する構成です。
それぞれが動作しているので、CPUが1つ故障・電源が1つ故障した状態でも制御を継続することができます。
図5 シーメンス 二重化CPU&シングルI/Oの例
次は、I/Oを二重化したケースです。
I/Oも二重化されたことにより、どちらかのI/Oが故障しても、正常な方で信号を入力・出力できます。
図6 シーメンス 二重化CPU&二重化I/Oの例
実際に私が三菱電機の二重化PLCを使用した時に感じた事を紹介いたします。
その時は、リプレース案件で、QnA CPUで動作している制御をQシリーズ及び二重化PLCで更新を行いました。
各所の設備をMELSECNETでつなぎ、データ(アナログ値、指令・動作結果)のやりとりをするシステムです。
マニュアルに記載されていることですが、二重化PLCの制限として、以下の点で苦労しました。
使って見て良い所と感じたのは、以下の点です。
また、以下の様なことを感じました。
本レポートでは、二重化について紹介させていただきました。
全てを二重化すれば、安全性は上がっていきますが、それに伴いコストの増加、場合によってはプログラムの複雑さが増していくケースもあります。
実際、お客様の強い希望で過剰と思われる二重化のシステムを立ち上げたこともあります。残念ながら、改造する度に多大な苦労を伴っています。
実現する目的を明確に持ち、無駄が発生しないように最適なシステム構成を提案させていただくようにします。
(T.N.)
関連ページへのリンク
関連するソフテックだより