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ソフテックだより 第189号(2013年7月3日発行)
技術レポート

「PLCプログラムでの数値データ取り扱い 〜整数データ編〜」

1. はじめに

私はPLCソフトウェア開発を担当しております。
おかげさまで今まで色々な分野のPLCソフトウェアを担当させていただきましたが、直近の案件で、7万点近くの数値データを取り扱うことがありました。
そこで初心に帰るという意味もこめまして、今回の技術レポートでは、PLCでの数値データ取り扱いについて、実践的な形でのラダープログラムを紹介したいと思います。
なお、一口に数値データといっても、整数、実数、BCD、バイナリなど様々な形式がありますが、今回は整数データを取り扱ったラダープログラムを紹介します。

2. ラダープログラムで取り扱える数値データ

まず、ラダープログラムで取り扱える数値データについて簡単に触れておきます。
ラダープログラムで取り扱える数値データは、PLCメーカー/機種によって異なります。
以下に、主要PLCメーカー/機種で取り扱える数値データ(整数データ/実数データ)をまとめてみます。
なお、機種は現状の最新機種を対象としています。

メーカー 機種 整数データ 実数データ
三菱電機 Qシリーズ 2バイト符号有
4バイト符号有
単精度浮動小数点(4バイト)
倍精度浮動小数点(8バイト)
横河電機 FA−M3シリーズ 2バイト符号有
4バイト符号有
8バイト符号有
単精度浮動小数点(4バイト)
倍精度浮動小数点(8バイト)
オムロン CJシリーズ 2バイト符号有
2バイト符号無
4バイト符号有
4バイト符号無
単精度浮動小数点(4バイト)
倍精度浮動小数点(8バイト)
キーエンス KV-5500/5000/3000シリーズ 2バイト符号有
2バイト符号無
4バイト符号有
4バイト符号無
単精度浮動小数点(4バイト)
倍精度浮動小数点(8バイト)

表1. 主要PLCメーカー/機種で取り扱える数値データ

3. デバイスコメントでデータ型を明確にする

ラダープログラムに限りませんが、数値データを扱う上で、データ型は非常に重要です。データ型を間違えて演算を行うと正しい結果が得られず、重大なトラブルに繋がる可能性もあります。
ソフテックでは、ラダープログラムで数値データを扱うとき、デバイスのコメントに、必ずデータ型を記載します。

データ型の記載方法ですが、演算命令に準拠すると分かりやすいと思います。
ラダープログラムの演算命令では、扱うデータ型をアルファベット1文字で表現することが一般的なので、そのアルファベットに使用する、というものです。
「アルファベット1文字+数字」で記載することができるので、デバイスコメントの文字数制限を圧迫することもありません

図1に横河電機製FA−M3を使用した場合のデバイスコメントを示します。

デバイスコメント例
図1. デバイスコメント例

図1において、各デバイスで扱う数値データは、以下となります。

D00001
…2バイト符号有整数
D00003〜D0004
…4バイト符号有整数 (Long wordの略で“L”を使用)
D00006〜D0009
…8バイト符号有整数 (Double long wordの略で“D”を使用)
D00011〜D0012
…単精度浮動小数点 (Floatの略で“F”を使用)
D00014〜D0017
…倍精度浮動小数点 (FA-M3のプリフィックスに準拠し“E”を使用)

4. ラダープログラム作成例

4-1. モデル1(符号有整数の取り扱い)

図2のモデルは、温度コントローラから通知される温度データについて、PLCが最大/最小/平均温度を求め、パソコンに通知する、というものです。
ここでは、最大/最小/平均温度を求めるラダープログラムを作成してみます。
なおPLCは横河電機製FA-M3シリーズとします。

モデル1
図2. モデル1

モデル1のデバイスコメントを図3に示します。
D111〜に演算過程で使用するワークデバイスをマッピングしています。

モデル1 デバイスコメント
図3. モデル1 デバイスコメント

モデル1の最大温度、最小温度を求めるラダープログラムを図4に示します。

モデル1 最大温度、最小温度
図4. モデル1 最大温度、最小温度

モデル1の平均温度を求めるラダープログラムを図5に示します。
温度1と温度2を加算して合計温度を算出し、合計温度を2で除算して平均温度を求めています。

ポイント!

合計温度を算出するときは、オーバーフロー/アンダーフローを防ぐため、合計温度を4バイト整数で算出しています。
数値データの演算を行うときは、オーバーフロー/アンダーフローが発生しないように常に気を配る必要があります。

モデル1 平均温度
図5. モデル1 平均温度

4-2. モデル2(符号無整数の取り扱い)

図6のモデルについて、最大/最小/平均温度を求めるラダープログラムを作成してみます。
モデル1との相違点は、I/Fのデータ型が符合無整数という点です。

モデル2
図6. モデル2

モデル2のデバイスコメントを図7に示します。
D211〜に演算過程で使用するワークデバイスをマッピングしています。

モデル2 デバイスコメント
図7. モデル2 デバイスコメント

モデル2では、まず温度1、温度2の符号無整数を4バイト整数に拡張します。
そのラダープログラムを図8に示します。

ポイント!

横河電機製FA-M3シリーズは符号無整数をサポートしていないため、符号無整数をデータ拡張して扱う必要があります。
今回は、2バイト符号無整数を、4バイト(符号有)整数に拡張して扱います。

ポイント!

モデル2 符号無整数拡張
図8. モデル2 符号無整数拡張

モデル2の最大温度、最小温度を求めるラダープログラムを図9に示します。
入力温度と最大/最小温度の比較命令では、拡張した4バイト整数を使用します。

モデル2 最大温度、最小温度
図9. モデル2 最大温度、最小温度

モデル2の平均温度を求めるラダープログラムを図10に示します。
温度1と温度2を加算して合計温度を算出し、合計温度を2で除算して平均温度を求めています。

モデル2 平均温度
図10. モデル2 平均温度

参考

オムロン製CJシリーズ、キーエンスKVシリーズは符号無整数をサポートしているため、横河電機製FA-M3シリーズのように2バイト符号無整数を、4バイト整数に拡張して扱う必要はありません。
以下に、キーエンスKVシリーズでのプログラム(スクリプト記述形式)を示します。
デバイスアドレスの後に記述されているものは、サフィックスと呼ばれるものでデータ型を表します。“.U”は2バイト符号無整数です。

' ================================================================================
' モデル2 最大/最小/平均温度
' ================================================================================

'------------------------------------------
' 最大温度を求める

	D00216.U = 0		      	' 最大温度をデータ範囲最小の0で初期化

	IF (D00201.U >= D00216.U) THEN
		D00216.U = D00201.U	' 最大温度を温度01とする
	END IF

	IF (D00202.U >= D00216.U) THEN
		D00216.U = D00202.U	' 最大温度を温度02とする
	END IF

	D00204.U = D00216.U		' パソコンIFデバイスに、最大温度を格納

'------------------------------------------
' 最小温度を求める

	D00218.U = 65535     ' 最小温度をデータ範囲最大の65535で初期化

	IF (D00201.U <= D00218.U) THEN
		D00218.U = D00201.U	' 最小温度を温度01とする
	END IF

	IF (D00202.U <= D00218.U) THEN
		D00218.U = D00202.U	' 最小温度を温度02とする
	END IF

	D00205.U = D00218.U		' パソコンIFデバイスに、最小温度を格納


'------------------------------------------
' 平均温度を求める

	D00206.U = (D00201.U + D00202.U) / 2	' 温度01と温度02を足して2で割る

5. おわりに

いかがでしたでしょうか?
今回は数値データの中でも、整数データにスポットをあててラダープログラムを紹介させていただきましたが、別の数値データ(実数、BCD等)についても書いてみたいと思っております。
本稿が少しでも皆様のお役に立てていただければ幸いです。

(Y.S.)

[参考文献]
三菱電機
−MELSEC-Q/L プログラミングマニュアル(共通命令編)
横河電機
−シーケンスCPU 説明書 命令編
オムロン
−CJ2 CPUユニットユーザーズマニュアルソフトウェア編
キーエンス
−KV-5500/5000/3000/1000 命令語リファレンスマニュアル

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