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昨年、Windows XPのサポート切れ問題が大きく世間で取りざたされました。それに伴い、色々な場所でWindowsXP端末の更新が行われたのではないでしょうか。
ソフテックでもWindowsXP端末の更新を行いましたが、それに合わせて社内基幹システムの更新も行っております。社内基幹システム担当の一人して、色々と更新検討や更新作業を行うことは大変なこともありましたが、やりがいはあったと感じています。
ここでは、基幹システムなどで利用されることが多いNAS(*1)と、そのNASの中でWindowsマシンとの親和性が高いにWindows Storage Serverを用いたNASについて取り上げたいと思います。
ストレージの大容量化やネットワークの高速化に伴い、従来のファイルサーバーの利用ではなく、NASと呼ばれるネットワーク上のストレージの利用が増えてきました。
NASの主な製品には、LinuxベースNASとWindows Storage ServerベースNASの2種類の機種があります。少し前はWindows Storage Serverは高価な製品でしたが、最近の機種は低価格になってきており、ストレージ機器導入の検討対象として考慮しやすくなってきました。
どちらのNASもファイル共有機能等の基本機能は同じですが、細かく見ていくと違いがあります。
LinuxベースNAS(*2)は、価格は安く導入しやすい製品ですが、ネットワーク負荷や拡張性にあまり強くない製品傾向があります。Active Directory(*3)には対応しますが制限があるため、家庭や小〜中規模のネットワークの利用が向いてします。また、比較的安価な製品が多くその分ハードウェア性能が抑えられているため、ネットワーク負荷に弱く、複数人からの同時利用があるとパフォーマンスが落ちやすい製品が多い傾向にあります。
NAS専用にカスタマイズされた画面から各種設定を行うため、設定操作自体は分かりやすいですが、機種によって操作画面が異なったり、柔軟なカスタマイズが難しかったりする場合があります。
図 1 LinuxベースNASの共有設定画面
[参考] Active Directoryとは
https://technet.microsoft.com/ja-jp/windowsserver/ff699017.aspx
Windows Storage ServerベースNASは、価格は比較的高価な製品ですが、ネットワーク負荷に強く、拡張性が高い製品傾向があります。Windows製品であるため、Active Directoryに対応しており、中規模以上のネットワークに向いています。また、ネットワーク負荷に強く、複数人からの同時利用があってもパフォーマンスが落ちにくい製品傾向があります。
設定操作は、リモートデスクトップで接続してWindows Server画面から各種設定を行うため、機種による操作画面の相違がなく、より細かい設定が可能です。
図 2 Windows Storage ServerベースNASの共有設定画面
LinuxベースNASとWindows Storage ServerベースNASの製品傾向を比較表としました。
LinuxベースNAS | Windows Storage ServerベースNAS | |
---|---|---|
用途 | 家庭向け、小〜中規模オフィス向け WORKGROUPネットワーク向け |
中規模以上のオフィス向け Active Directoryネットワーク向け |
機種数 | 多い | 少ない |
価格 | 比較的安い | 比較的高い |
WindowsPCとの親和性 | 中 | 高い |
Active Directory 対応 | 制限あり(対応できるユーザー数やグループ数に制限) | 制限なし |
ネットワーク負荷 | 多人数の同時使用で影響が出やすい | 多人数での同時使用でも影響は出にくい またNICチーミングにより帯域拡張や対障害性を持つことができる |
ストレージ効率 | 中 | 高い(データ重複除去機能等) |
CAL | 不要 | 不要 |
カスタマイズ | 低い | 高い |
設定操作 | 専用の設定画面で設定 (機種によって操作画面が異なる) |
Windowsリモートデスクトップ経由のWindows画面で設定 (機種を問わない統一した設定画面) |
共有フォルダーの文字制限 | 多い (機種依存文字やシステム予約文字など) | 少ない (システム予約文字など) |
アプリケーションの追加 | 対応しない | ユーザーが自由に追加可能 ※Windows Storage Server対応ソフトウェア |
表1.NAS製品比較表
上で述べたように昔に比べてWindows Storage Serverの価格が下がり、ストレージ機器導入の検討対象として考慮しやすくなっています。しかし、Windows Serverは色々なバリエーションがあり、名前を見ただけでは分かりにくい製品ではないでしょうか。ここではWindows Storage Server 2012 R2、Windows Storage Server 2008 R2 および Windows Server 2012 R2を比較してみました。
まず、Windows Storage Serverは、通常のWindows ServerのNAS向けの製品ですが、Windows Serverと比較してみると違いがあります。その違いを表にしてみました。
Windows Storage Server 2012 R2 Workgroup Edition |
Windows Storage Server 2012 R2 Standard Edition |
Windows Storage Server 2008 R2 Workgroup Edition |
Windows Storage Server 2008 R2 Standard Edition |
(参考) Windows Server 2012 R2 Standard Edition |
|
---|---|---|---|---|---|
販売形態 | OEMのみ | OEMのみ | OEMのみ | OEMのみ | 単体/OEM等 |
対応CPUビット | 64ビット | 64ビット | 64ビット | 64ビット | 64ビット |
対応CPU個数 | 最大1CPU | 最大64CPU | 最大4CPU | 最大4CPU | 最大64CPU |
対応メモリ容量 | 最大32GB | 最大2TB | 最大32GB | 最大32GB | 最大4TB |
対応ディスク数 | 6個(外部SAS不可) | 制限なし | 6個 | 制限なし | 制限なし |
対応LANポート | 最大2 | 制限なし | 最大2 | 制限なし | 制限なし |
接続ユーザー数 | 同時接続50 (250セッションまで) |
制限なし | 同時接続25 | 制限なし | ライセンスに依存 |
Windows CAL | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 必要 |
クラスタリング | ─ | 対応 | ─ | ─ | 対応 |
ADドメイン コントローラー |
─ | ─ | ─ | ─ | 対応 |
ADドメイン 参加 |
対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
AD LDS (*4) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
データ重複除去 (*5) | ─ | 対応(データブロック単位) | 対応(ファイル単位) | 対応(データブロック単位) | |
iSCSI (*6) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
対応SMB (*7) | 1.0/2.0/2.1/3.0 | 1.0/2.0/2.1/3.0 | 1.0/2.0/2.1 | 1.0/2.0/2.1 | 1.0/2.0/2.1/3.0 |
NFS (*8) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
NICチーミング (*9) | 対応 | 対応 | (NICドライバでの対応のみ) | (NICドライバでの対応のみ) | 対応 |
DFSレプリケーション (*10) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
Hyper-V (*11) | ─ | 対応(2インスタンス) | ─ | 対応(ゲスト1) | 対応 |
DNSサーバー (*12) | ─ | 対応 | ─ | 対応 | 対応 |
WINSサーバー (*13) | ─ | 対応 | ─ | 対応 | 対応 |
DHCP サーバー (*14) | ─ | 対応 | ─ | 対応 | 対応 |
BitLocker (*15) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
FCI (*16) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
表2.Windows Storage Server比較表
Windows Storage Serverでは以下のような機能を利用できます。
アプリケーション向けのディレクトリサービスです。
この機能により、既に運用中のWindowsドメインネットワークと連携を取ったファイル共有が可能となります。
Active Directoryユーザー管理の管理機能はありませんが、Active Directoryサーバーと連携し、Active Directory環境を利用できます。
複数のファイル間において重複したデータ領域を共有してディスク容量を節約する機能です。(ただし、Standard版のみ)
この機能により、ディスク容量の節約できるため、使い勝手が良いファイル共有が可能となります。
Windows Storage Server 2008 R2では重複ファイル除去が対象でしたが、Windows Storage Server 2012 R2ではデータブロック単位での重複除去が対象となっています。そのため、さらに効率的な節約が可能になっています。
このデータ重複除去機能は重複データが生じやすいファイルサーバーに向きますが、SQL ServerやHyper-Vホスト等には向きません。また、システムドライブやブートドライブでは使用できません。
TCP/IPネットワークを経由したSCSIプロトコルに対応する機能です。
Windows ServerのiSCSI先にNASを使用でき、柔軟な拡張ができるようになり、既存のサーバーのストレージ拡張先にして運用も可能です。
Windows 8/8.1、Windows Server 2012/2012 R2で利用できるSMB3.0 (Server Message Block) に対応します。SMB3.0ではSMBマルチチャンネル等をサポートし、最新のファイル共有プロトコルによる効率的なファイル共有が可能となります。
UNIXやLinuxやMac OS X等で利用されるファイル共有システムに対応し、それらの機器からのファイル共有が可能となります。
OSベースでNIC(Network Interface Card)を多重化して冗長化することできます。
複数の社員が同時にアクセスしても遅くなりにくくなったり、ファイルコピーが高速になったりします。
また、ネットワーク接続を冗長化しているため、LANケーブルが切断してファイルサーバーが使えなくなる等のネットワーク障害にも対応できます。
遠隔地等の帯域制限があるネットワークに対応したファイルレプリケーション機能です。
遠隔地にある支店や事業所などとのファイルのやりとりができるようになります。
OS実行中やアプリケーション実行中でも整合性を持ったバックアップができるようになります。
また、共有フォルダーで削除したファイルを復活できるようになります。
LinuxベースNASとWindows Storage ServerベースNASのどちらを選択するかは、運用するネットワークや環境によって色々と選択肢があります。
LinuxベースNASは安価で簡単な傾向がありますが拡張性が少なく、Windows Storage ServerベースNASは高価ですが柔軟性や拡張性が高い傾向があります。
実際に利用した感触ですが、すぐにNASを使いたい場合や限定した用途ならばLinuxベースNASが良く、長期的なNASの利用や負荷が高い用途、また色々な用途を考えている場合はWindows Storage ServerベースNASの方が良いと感じました。
なお、ここで挙げたLinuxベースNASについては一般向けの製品を取り上げたため、運用が簡単である代わりにある程度の制限があります。プロ向けの製品のLinuxベースNASもあり、その場合は色々とカスタマイズが可能です。
(K.O.)
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