1. はじめに
筆者は本社事業所勤務の入社20年になる40代前半の社員で、自衛消防隊の隊長を務めております。
自衛消防隊の目的は、「火災及び地震等の災害時の初期活動や応急対策を円滑に行い、建築物の利用者の安全を確保する」ことにあります。
この目的を達成する手段の一つに防火・防災訓練の実施があります。
ソフテックだより第402号では、コロナ禍で参集しない形式での防火・防災訓練について紹介させて頂きました。
今回は、2023年11月に参加した参集形式で総合防災訓練の一部、避難訓練について紹介させて頂きます。
2. 防火・防災訓練 参加の経緯
YOTSUYA TOWER では、毎年11月にビル主催の総合防災訓練(避難訓練等)が行われます。
しかし、コロナ禍の影響で2022年までは参集しない形式での総合訓練となっており、避難訓練も動画や資料確認を行う形となっておりました。
そのため、参集形式での総合訓練は今回が初めての参加となります。
防災訓練の2か月前に防災センター殿から、総合防災訓練計画書と避難経路説明資料が届きました。
避難訓練の概要は「最大8000人が避難することになるので、避難放送は時間差を設けて4回に分ける」というものです。
また、総合防災訓練の説明会が開催されましたので筆者も参加しました。
説明会では「ビルの設備が充実していているので、火災そのものよりも避難時の事故(将棋倒し)の方が怖い」というお話が印象に残っています。
3. 避難訓練の準備
ソフテックの自衛消防隊では、災害時の避難に備えて避難誘導マニュアルと避難者名簿を作成しています。
避難誘導マニュアルは自衛消防隊員が災害時にどのように活動するかをまとめたものです。
また、避難者名簿は避難者にチェックいれるための名簿です。
避難誘導マニュアルも避難者名簿も最新版が印刷されて、社員が確認できる場所に保管されています。
今回の避難訓練を行う前に自衛消防隊員が集まって、避難誘導マニュアルと避難者名簿の見直しを行いました。
図1. 避難誘導マニュアル
図2. 避難者名簿
これらは机上で作成したマニュアルなので、不備や考慮不足がいろいろとあるはずです。
マニュアルの不備や考慮不足を洗い出すことを今回の避難訓練の目的の一つに設定しました。
4. 避難訓練
避難訓練当日、防災センター殿から訓練の地震発生のアナウンスがありました。
避難誘導マニュアルにそって、自衛消防隊員招集を行い、避難誘導係、避難誘導補佐係、通報連絡係を決めました。
筆者は自衛消防隊長でしたが、人数がそろっていたので、訓練の記録係を務めました。
ここまでは、アナウンスから2分で進められました。
次に、避難誘導係と避難誘導係補佐が避難者名簿のチェックを始めましたが、チェックだけで5分以上はかかってしまいました。
幸い、ソフテックのある8階の避難順番は4番目だったので、訓練に支障はありませんでした。しかし、本当に災害が起こっていたら、5分の遅れは致命的になりかねません。
第一次の避難放送が流れてきましたが、避難準備について何も決めていないことに気づきました。
自衛消防隊で集まって、第3次避難放送のタイミングで避難準備すると決めました。
第3次避難放送後、避難誘導係から「避難準備をしてください。入口に一列へ並んでください」と社内へ声掛けを行いました。
30秒くらいで社員が一列になって入り口前に整列できました。しかし、第4次避難放送まで10分くらいかかったので、手持無沙汰な待ち時間になってしまいました。
第4次避難放送後、避難誘導係を先頭に避難開始しました。
筆者も避難誘導係に次いで避難開始しました。
避難途中にある扉の前で、咄嗟的に「扉を開けたままにした方が円滑に避難できる」と考えました。
そのため、扉を押さえて開けたままにしたのですが、すぐに失敗に気づきました。扉を押さえる役割になると、列が途切れるまで自分が避難をするタイミングを失います。
漠然と「逃げ遅れ確定だな」と思いながら、扉を押さえていました。幸い、今回は後続の避難者がいなかったのでソフテックの列の後に扉に入れました。
しかし、同じ階の他社の避難者がいたら最後になってしまった可能性が高いです。
その後、避難誘導係が避難経路を間違えるといったハプニングもありましたが、一時避難場所に到達しました。避難者名簿にチェックを入れて、全員が避難したことを確認しました。
一時避難場所で防災センター殿が避難者数を集計していましたが、避難者名簿を作成していたので、スムーズに連絡できました。避難後は各自会社に戻って避難訓練終了となりました。
5. 避難訓練の反省会
避難訓練後に自衛消防隊が集まって、打ち合わせを実施しました。
避難訓練前は10分程度の打ち合わせのつもりでしたが、反省点や課題がたくさん上がり、1時間の打ち合わせとなりました。
避難誘導マニュアルの課題は一通り洗い出せたと考えています。
「どのように改善すべきか?」ということも話しあいましたが、いろいろな意見がでて収集がつかないほどの議論となりました。
見つかった課題は自衛消防隊で議論を進めて避難誘導マニュアルを改訂していくようにします。
6. 最後に
今回は参集形式の総合防災訓練における避難訓練を紹介させて頂きました。
避難誘導マニュアルと避難者名簿を作成して避難訓練に参加しましたが、避難時の課題が多数見つかりました。
しかし、それだけ収穫が多い避難訓練になったと前向きにとらえています。
繰り返しになりますが、自衛消防隊の目的は「火災及び地震等の災害時の初期活動や応急対策を円滑に行い、建築物の利用者の安全を確保する」ことにあります。
この目的を達成するためには普段からの心構えが必要となります。心構えの一つとして、避難誘導マニュアルの改善を積み重ねていきたいと考えています。
(K.S.)