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今回は遠距離からのシステムメンテナンス(以降リモートメンテナンス)対応について取り上げます。
近年のインターネット及び無線通信(無線LAN、携帯通信カードなど)の急激な発達により、どこからでも様々な情報にアクセスできる様になりました。またハードウェア面(ルーターなど)もVPN(Virtual
Private Network)機能の充実とセキュリティ面でも便利になってきています。
このように通信インフラやセキュリティを確保できる通信ハードウェアが整ったことで、リモートメンテナンスを行うためのハードルが下がってきています。
当社でも何案件かインターネット回線をもちいて、遠距離にあるシステムの状態確認及びシステム変更などのメンテナンスを行っている実績がありますが、リモートメンテナンスのメリット、デメリットについてご紹介致します。
当社のお客様は、全国にいらっしゃいます。
トラブルや調査事項が発生した時、近距離ならば直接伺って調査するなどの対応が可能ですが、遠距離の場合はそうはいきません。
そういう時にお客様の所に伺わなくても「インターネット回線経由でシステムにアクセスして、調査及びメンテナンスができる」というのがリモートメンテナンスの大きな魅力の一つです。
リモートメンテナンスを行うメリットとして下記が考えられます。一番は遠距離にあるシステムをすぐに調査・メンテナンスできるため、お客様に納得して頂ければ、緊急時の対応という面で非常にメリットが大きいと考えます。
遠隔地からのリモートメンテナンスは遅くて使い物にならないのでは?とお考えの方もいるかと思いますが、通信回線が双方ともに光などの固定回線であれば、遠隔地のPCでもストレスなく操作可能です。携帯通信カードなどのモバイル環境となると遅いと感じますが、すぐに現地の状況を確認できるというメリットが大きく上回っており、十分に活用可能と考えます。
リモートメンテナンスを行う例として、下記の様なシステム構成を考えてみます。
図1. 固定回線を使ったシステム構成
インターネット回線をもちいて当社とお客様を結ぶために、インターネット回線の契約して頂きます(後述する携帯通信カードを使う場合は、その限りではありません)
お客様の所にVPN機能付きのルーターを設置します。
図1の例であれば、お客様に納入したシステムに直接アクセスしない様に遠隔メンテナンス用PC(ゲートウェイPC)を経由して操作します。このPCにリモート操作用のソフトウェアをインストールしておくことで、このゲートウェイPC経由で客先にあるシステムを操作します。
ゲートウェイPCを間に入れる理由ですが、リモートメンテナンス中にインターネット回線の異常などで回線切断した場合などを考慮したためです。
PLCなどEthernetにつながる機器は、ゲートウェイPCを間に入れなくても直接データ参照、書き換えが可能です。操作元のクライアントPCからPLC保守ソフトウェアを起動して、お客様のPLCのプログラム確認・変更が可能ですが、「もしデータ書き換え中にインターネット回線異常があったら?」と考えるとゲートウェイPCを間に入れた方が安心できます。
クライアントPCからゲートウェイPCをリモート操作することで、ゲートウェイPCがPLCなどの制御機器や各システムに直接アクセスする状況となります。この様な構成にするとインターネット回線異常時にもゲートウェイPC〜システム間の通信には影響を与えることはなくなります。
さらにリモートメンテナンス中の操作状況を客先に確認して頂く(ゲートウェイPCのディスプレイを見ることで操作状況が確認できる)ことも可能です。
無線回線を使ったシステムとして、下記の様なシステム構成を考えてみます。基本的な考え方は3−1のシステム構成と同じですが、ノートパソコン+携帯通信カードで容易に移動できる様にしたシステム構成です。
図2. 無線回線を使ったシステム構成
データ通信カードやWi-Fiポケットモバイルルーターなどでインターネット回線に接続できる環境を用意します。無線通信環境でのリモートメンテナンスは固定回線と比べると操作感は重くなりますが、電波状況が良好であれば一通りの操作が可能です。
ノートパソコンにリモート操作用のソフトウェアをインストールしておくことで、このノートパソコンをゲートウェイPCとして客先にあるシステムを操作します。
たとえばトラブル発生時にお客様などにノートパソコンを任意の場所に移動して頂き、リモートメンテナンスしたい対象(たとえばPLCなど)と接続することでネットワークから隔離されたシステムに直接接続できるなどのメリットがあります。
非常に利便性の高いリモートメンテナンスですが、導入時に注意すべきことがいくつかあります。
お客様の知らないところで「システムを勝手に操作されるのでは?」、「セキュリティは大丈夫か?」というリモートメンテナンス特有の不安を取り除く必要があります。
あとリモートメンテナンスでは直接顔を合わせて対応する訳ではありませんので、お互いの顔色(様子)がわかりません。電話などでは伝わらない事も現地に伺って顔を合わせて話しをすると「ああ・・そういう事なのか!」と状況が分かったりする場合もありますので、そういう点でも注意が必要です(リモートコントロール用のソフトウェア次第ですが、双方にUSB接続のカメラなどを用意すればお互いの顔を見ながらコミュニケーションも可能になります)
リモートメンテナンスの導入時には下記の様な点について客先に説明して納得頂く必要があります。
イーサネットネットワークにつながる機器(たとえつながらなくても上記3−2の様なシステム構成にすることでイーサネットネットワークにつながっていない機器に接続することも可能です)であれば、システム構成次第でどこからでもアクセスできる環境を作成することができます。
さらにWake On LANに対応した機器を使えばPCの電源は通常OFF状態で、必要な時に遠隔地から電源をONして操作することも可能です。
リモートメンテナンス対象が山奥にあったり、頻繁にメンテナンス対象の場所が変わったりする場合にはノートパソコン+携帯通信カード(電波が届く範囲は確認する必要があります)を使ったシステムを用意すればリモートメンテナンスを行う事が可能です。たとえば操作する人が未熟練者でも、必要に応じて社内から熟練者のサポートを受けることも可能になります。
PLCなどにWebサーバーモジュールを導入すれば、アラーム発生時に携帯へのメール通知(別途外部に発信できるメールサーバーが必要)を行い、その後リモート接続して各機器の運転状態をWebブラウザで確認することも可能です。
この様に様々な場所(出張先、自宅など)から、遠隔地にあるシステム状態を確認・操作できるシステムを構築することで出張費の削減、トラブル対応時間の短縮、早期対応が可能になります。
リモートメンテナンスということで今回紹介させて頂きましたが、インターネット回線を使った技術・サービスの進歩は目を見張るものがあります。
今回紹介した様なリモートメンテナンスも数年経過すればもっと便利なサービス、ハードウェアが出てくる可能性があります。そうすれば新しい提案、よりよいサービスが実現できる様になっていきます。
これからも常日頃様々な情報収集を行い、新しい技術・ハードウェアをうまく組み合わせて新しい価値あるもの、使いやすいシステムを提案していける様に努力したいと考えます。
(S.N.)
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