HOME > ソフテックだより > 第29号(2006年11月1日発行) 現場の声編「情報処理技術者試験受験体験記」

「ソフテックだより」では、ソフトウェア開発に関する情報や開発現場における社員の取り組みなどを定期的にお知らせしています。
さまざまなテーマを取り上げていますので、他のソフテックだよりも、ぜひご覧下さい。

ソフテックだより(発行日順)のページへ
ソフテックだより 技術レポート(技術分野別)のページへ
ソフテックだより 現場の声(シーン別)のページへ


ソフテックだより 第29号(2006年11月1日発行)
現場の声編

「情報処理技術者試験受験体験記」

1.はじめに

ソフテックでは今年3月に、“社員の自発的な能力向上への取り組みを支援すること”を目的として自己啓発推進室を設置しました。 “自己啓発”という言葉だけを聞くと、「いったいどんなことをやるんだ?」と疑問を持たれる方も多いかも知れませんが、代表的な例として、社員の技術資格取得を促進するための枠組み作りが挙げられます。現在、私は推進室員の一人として、その枠組み作りを行っています。
推進室の正式発足前に“今後会社として資格取得を推進していくこと”を事前に聞かされていた私でしたが、当時、情報処理系資格の保有はおろか、受験経験すらないといった有り様でした。しかし、もともと資格試験に興味があった私は、「これは良い機会かもしれない」と思い立ち、早速資格取得に向けて動き出すことにしました。
今回は、私が今年4月に実施された情報処理技術者試験を受験したときの体験記を書きたいと思います。

2.情報処理技術者試験について

私が受験したのは、独立行政法人情報処理推進機構(略称:IPA、http://www.jitec.jp/)が主催する情報処理技術者試験のテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)です。
情報処理技術者試験は、現在のところ情報処理系唯一の国家試験となっており、社会人だけでなく学生も多く受験する資格です。情報処理技術者試験自体は30年以上前から存在する資格ですが、時代のニーズに合わせて試験制度が変更され、現在全14種の試験区分となっています(下図参照)。テクニカルエンジニアは平成13年から編成されたカテゴリーで、情報セキュリティ、エンベデッドシステム、システム管理、データベース、ネットワークの5区分からなり、それぞれの分野における情報システム開発・運用に必要な専門的知識が問われます。情報処理技術者試験は年に2回、春と秋に行われますが、試験区分により春または秋のみに実施されるものもあります。テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)は年1回春のみの実施です。
私自身、入社当時から主にマイコン関係の仕事をさせてもらっていた関係でエンベデッド=組込み系技術者のための資格試験を受験することにしました。

図1. 情報処理技術者試験の試験区分
図1. 情報処理技術者試験の試験区分

3.目指すは一発合格!

エンベデッドシステム試験の出題形式は、午前の多肢選択式問題(100分)、午後Iの記述式問題(90分)と午後IIの論述式問題(120分)からなります。毎年の合格率は十数パーセントでほぼ一定であり、合格率が示す通り、きちんと勉強しなくては合格できません。
私の場合、とりあえず2年間の過去問題とその回答、解説、応用問題がのっている参考書(これさえあれば合格!という感じのテキストです)を購入し、勉強をはじめました。
午前の問題は、幅広い知識を問う問題であり、正直、丸暗記でも突破できそうな印象です。しかし、午後の問題は処理時間の計算やシステムの問題点指摘など、応用問題がメインであり、こちらは暗記だけでは太刀打ちできない内容となっています。一方で、リアルタイムOS(RTOS)に関する問題など実際の仕事の知識が活用できる部分もありましたが、ハード絡みの問題など初めて知る内容もあり、勉強にはそれなりに苦労しました。
私が受験を決めたのは昨年12月ごろで、本格的な試験勉強は今年の1月末くらいからはじめました。受験までの約3ヶ月間、主に休日を利用して一通りの内容は勉強できましたが、いまいち手ごたえのないまま試験当日を迎えることとなりました。

4.いざ、試験会場へ

試験会場は、池袋の某専門学校でした。私自身久々の試験(おそらく入社試験以来)だったので少々緊張しながら、試験会場まで向かいました。
少し早めに会場に着き、教室に入って開始時間まで午前問題のチェックをしました。まだ人はまばらでしたが、パッと見たところ学生らしき人はおらず、20代後半〜30代の社会人と見られる人が大半を占めていました。そして、開始時間となり試験監督が入ってきた時、まだ教室の半分くらいしか受験者が居ないことに気付きました。
後で過去何年かの申込者数と受験者数をチェックして分かったことですが、毎年申込者の4割ぐらいは受験しません。当日仕事が入って受験できなくなったのか、それとも仕事が忙しくて勉強ができず、受けても落ちるだけだからと受験しないのか。理由は定かではありませんが、ちょっと悲しい事実だと思いました。

そんなことを考えながらも、試験自体は何とか終わりました。実際、受験してみて感じたのは、やはり午後Iの回答時間が短いということです。テキストにも“時間配分に注意”と書かれており、急いで回答したつもりでしたが時間が足りませんでした。それと、びっくりしたのは、午前の問題で2割くらい過去の問題と全く同じ問題が出題されたことです。過去問題の学習をしておいてよかったと思いました。
試験当日は日曜日です。試験終了後、あの独特の疲労感を久々に味わいつつ、翌日の仕事のことを考えてまっすぐ家路に着きました。

5.果たして結果は・・・?

試験結果は、受験日の約2ヵ月後にIPAのホームページにて発表されます。私は発表当日の昼休みに、会社のパソコンから成績照会をしました。合格には、午前・午後I・午後IIのそれぞれで、800点中600点以上の点数を採らなければなりません。
結果は“合格”でした。しかし、私の場合、午前・午後I・午後IIすべてが600点台前半の点数で、合格できたものの、まだまだ勉強が足りないと感じました。
ちなみに、結果発表の1週間後、合格の証としてIPAから賞状が届きました。賞状は、A4サイズで経済産業大臣のサインが書かれていること以外特筆すべきことはなく、何とも味気ないものでした。

6.これから受験する方へアドバイス

これから受験する方へ私からアドバイスできることは、当たり前ですが“受験に向けて地道に勉強してください”ということくらいです。どんなに技術的な知識・経験が豊富な人でも、全くの試験対策なしで受験したら、おそらく合格できないと思います。過去問を解くなり、参考書で勉強するなりして、出題形式に慣れておくことは合格の必須条件です。
このように書くと、資格試験の勉強は資格をとるためだけの勉強であって、仕事には何の役にも立たないように聞こえるかも知れませんが、決してそんなことはありません。私自身、試験勉強を通して、実際に仕事に役立つ知識を得ることができました。

7. 最後に (ソフテックにおける資格取得推進の目的)

ソフテックで社員の技術資格取得を推進する目的は主に2つあります。
1つは社員の自発的な学習を支援し、スキルアップを計ってもらうことにあります。
ソフトウェア業界では、次々に出てくる新しい技術に追いつくため、絶えず情報のアンテナを張っていなくてはいけません。そうした中で、資格取得を通して社員が自発的に学習を行うきっかけが作れれば、というねらいです。

もう1つは、社員の技術レベルを示す指標として、資格を利用する目的です。
社員個人のスキルを示す場合、経歴書(過去にどういった仕事でどういった役割を担ったか?)がよく使われますが、資格も同様の指標として利用されます。仕事によっては、資格をもっていなければできない仕事(資格所持が必須条件の仕事)もあるほどです。
また、組込み技術に関しては、先のIPAと経済産業省を中心として、組込みスキル標準(ETSS)と呼ばれる組込みソフトウェア開発に必要なスキルの明確化・体系化が為されています。さらに、組み込みシステム技術協会(略称:JASA、http://www.jasa.or.jp/top/)により、このETSSに基づいた資格試験が間もなく実施される予定であり、資格により個人のスキルを明確化しようとする流れは今後加速するものと考えられます。

以上2つの目的を達成すべく、どういった形で資格取得のサポートやフォーローをすればよいのか、現時点ではまだ検討中です。また別な機会に「具体的にどういった形で技術資格取得を推進するか?」についてご紹介できればと思います。

(T.S.)


関連ページへのリンク

関連するソフテックだより

ページTOPへ