HOME > ソフテックだより > 第503号(2026年8月5日発行) 技術レポート「Cisco製産業用スイッチの既存機種・後継機種混在検証」

「ソフテックだより」では、ソフトウェア開発に関する情報や開発現場における社員の取り組みなどを定期的にお知らせしています。
さまざまなテーマを取り上げていますので、他のソフテックだよりも、ぜひご覧下さい。

ソフテックだより(発行日順)のページへ
ソフテックだより 技術レポート(技術分野別)のページへ
ソフテックだより 現場の声(シーン別)のページへ

「ソフテックだより」では、みなさまのご意見・ご感想を募集しています。ぜひみなさまの声をお聞かせください。


ソフテックだより 第503号(2026年8月5日発行)
技術レポート

「Cisco製産業用スイッチの既存機種・後継機種混在検証」

1. はじめに

稼働中の設備で使用しているネットワークスイッチが生産終了になったとき、後継機へそのまま置き換えても問題なく動作するのでしょうか。
工場や設備ネットワークでは、機器を一斉に更新できるとは限りません。故障した機器から順次交換する場合、既存機種と後継機種が混在する期間が発生します。
今回、私が対応した案件でも、Cisco製産業用スイッチの生産終了に伴い、後継機種への段階的な移行が必要となりました。しかし、両機種ではポート構成やSDカードの扱い、セットアップ方法などに違いがあります。
設定をそのまま移行できるとは限らず、冗長化ネットワークが正常に動作するかも事前に確認する必要がありました。

そこで、既存機種と後継機種が混在する環境を実機で構築し、設定方法と障害発生時のネットワーク復旧動作を検証しました。検証の結果、既存機種と後継機種を混在させたREP(※1)構成でも、光ファイバ断線後に通信経路が再構築され、ネットワークが復旧することを確認できました。

一方で、既存機種で行っていた「SDカード内のIPアドレスを変更して、複数台へ設定を展開する運用」は、後継機種ではそのまま使用できませんでした。そのため、後継機種ではWeb画面を使用して初期設定を行う運用に変更しました。
本稿では、その過程で判明した注意点と、実際に採用した移行方法をご紹介します。

※1 REP(Resilient Ethernet Protocol)は、レイヤ2のリング型ネットワークで高速な経路切り替えを行うCisco社独自プロトコルです。

2. 既存機種と後継機種の主な違い

2機種の外観はよく似ていますが、ポート配置やコネクタ形状などに違いがあります。主な相違点を以下にまとめます。

項目 既存機種 後継機種
前面イメージ image2 image3
SFPポート(光通信用)※1 PORT5〜6(緑枠部、右向き)※2 PORT1〜2(緑枠部、左向き)※2
LANポート(RJ45) ※1 PORT1〜4(青枠部、右向き) PORT3〜6(青枠部、左向き)
入力電源 DC-A,B:24VDC/2.1 Amp(赤枠部) DC-A,B:24VDC/2.1 Amp(赤枠部)
SDカード 1枚(黄色枠部) ※3 ※4 1枚(黄色枠部) ※3 ※4
コンソールポート
(メンテナンス用)
RJ45 × 1 (黄色枠部)
USB mini-B × 1(黄色枠部)
RJ45 × 1(黄色枠部)
USB micro-B × 1(黄色枠部) ※4

※1 既存機種と後継機種では、LANポートとSFPポートに割り当てられているポート番号が異なります。既存機種の場合は1〜4がLANポートで5〜6がSFPモジュールですが、後継機種の場合はポート1〜2がSFPモジュールで3〜6がLANになっています。
※2 SFPモジュールの装着方向が逆になるため、光ファイバの送信側と受信側の位置関係も上下逆になります。
※3 SDカードの規格は同じですが、SDカードに書き込まれるデータに大きな違いがあります。
※4 下部中央にあるネジ蓋の裏にあります。

3. 既存機種セットアップ

既存機種の場合、以下の3つの方法でセットアップができます。

@Web接続
リセット操作後、スイッチへHTTP接続する方法です。
基本的な設定を簡単に行うことができますが、複雑な設定には向いていません。

Aコンソール接続
スイッチへコンソール接続後、コンソールコマンドを実行する方法です。
Cisco社のIOSコマンドの理解が必要なので習得のハードルは高いですが、様々な設定が可能となります。

BSDカード使用 (SDカードにセットアップファイルを入れて起動)
@、Aの設定をSDカードに保存することができます。設定が保存されたSDカードを挿して起動すると、スイッチはSDカードの設定で起動します。
設定ファイルはテキスト形式のファイルであるため、IPアドレスなどを変えて起動することができます。

本案件では、REPなどの設定が必要であったため、「Aコンソール接続」で一通りの設定を行い、SDカードへ保存しました。複数台のスイッチへ設定が必要でしたが、IPアドレス以外の設定内容は共通であったため、SDカードのIPアドレスだけを変更してスイッチに挿す運用としていました。

4. 後継機種への移行で判明した3つの注意点

後継機種では、既存機種と同じSDカード運用を使用できなかったため、Web画面によるセットアップ方法を採用しました。本案件では、現場作業者が約5分で設定できる作業手順書を作成しました。
移行時に判明した主な注意点は、次の3点です。

注意点1 既存機種と後継機種では、SDカードへの保存方法が異なる
公開情報と実機の動作に差異が見られたため、マニュアルの確認だけで判断せず、実機検証を重ねたうえで、お客様を通じてCisco社へ正式に問い合わせました。
Cisco社側でも追加検証が行われ、後継機種では既存機種と異なるコマンドを使用することで、SDカードへのバックアップが可能であることが分かりました。

注意点2 後継機種のバックアップデータは、直接編集できない
既存機種の時にSDカードへ保存される設定はテキストデータでした。しかし、後継機種の場合はバイナリデータになっていました。バイナリエディタで内容を確認したところ、IPアドレスの部分があったので、変更してみましたが、SDカードから起動ができなくなりました。データの整合性を確認するCRCやチェックサムなどが含まれている可能性が高いと判断しました。Cisco社へ問い合わせを行ったところ、「バイナリデータのIPを変更して起動する方法は確認できませんでした。」と回答がありました。

問い合わせ後に気づいたことでしたが、後継機種ではWeb画面の操作で設定済みのスイッチからSDカードへバックアップを保存し、交換機へ設定を引き継ぐことは可能でした。

注意点3 複数台展開の手順を見直す必要がある
既存機種では、SDカード内のIPアドレスだけを変更し、別のスイッチへ挿して設定を展開する運用が可能でした。しかし、後継機種では同じ運用を行えないことが分かりました。
代替手段としてコンソール接続による設定も可能ですが、Cisco IOSコマンドに不慣れなユーザーには負担が大きくなります。そこでWeb接続によるセットアップ方法を検証したところ、後継機種ではWeb設定機能が強化されており、REPを含む主要な設定をブラウザから実施できることを確認しました。

5. 既存機種と後継機種の混在検証

スイッチ@(後継機種)、スイッチA(既存機種)、スイッチB(既存機種)でループを構成して以下の図のような検証環境を構築しました。


ネットワークが正常かどうかを確認するため、設定PCからスイッチ@〜Bへpingコマンドを1秒間隔で繰り返し送信するようにしました。
その後、光ファイバA〜Cを断線させたときの結果は以下のようになりました。

検証項目 操作 結果
後継機種−既存機種断線 光ファイバA切断 ping応答を継続(ping応答が1回欠落するケースはあるが、その後復旧)
既存機種−既存機種断線 光ファイバB切断 ping応答を継続(ping応答が1回欠落するケースはあるが、その後復旧)
既存機種−後継機種断線 光ファイバC切断 ping応答を継続(ping応答が1回欠落するケースはあるが、その後復旧)
再構築中の再断線
(※1)
光ファイバA切断回復後、
光ファイバC切断
通信復旧まで約30秒を要する場合があった

※1 REPの仕様で断線や断線回復があった場合はループ構成の再構築が行われます。

今回検証した機器構成および設定条件において、既存機種と後継機種を混在させたREPネットワークで断線が発生しても、ネットワークが復旧することを確認しました。ただし、実際の更新時には、機器型番や各種設定などによって動作が異なる可能性があるため、事前の実機検証を推奨します。

6. 混在検証で苦労したところ

混在検証で最も調査に時間を要したのは、SDカードに関する仕様の確認です。
公開情報、マニュアルおよび実機の挙動を確認した結果、当初は「後継機種ではSDカードから起動できない」と判断していました。しかし、公式サイトにはSDカードへの保存に関する記載があり、公開情報と実機の動作に差異が見られました。

根拠が不明確な状態でお客様へ報告することはできないため、お客様を通じてCisco社へ正式に問い合わせました。Cisco社から提示された手順に従って後継機種を操作し、取得したログを複数回送付しながら調査を進めた結果、問題の解決までには約2週間を要しました。

最終的に、後継機種でもSDカードを使用できることが分かりました。ただし、既存機種と同じ運用はできなかったため、Web画面による初期設定を前提とした作業手順書を作成しました。

7. おわりに

今回は「Cisco社製スイッチ 混在検証」についてご紹介しました。
Cisco社の産業用スイッチはコンパクトな形状で高い耐久性を持ち、かつ、ネットワークの冗長化が可能です。そのため、狭い設置スペースでも、耐障害性を考慮したネットワークを構築できます。
現場のネットワーク環境を構築する機会がありましたら、候補の一つとしてご検討いただくのもよいと思います。
本稿が皆様の参考になれば幸いです。

(K.S.)

[参考]

シスコ産業用イーサネットスイッチ
(https://www.cisco.com/site/jp/ja/products/networking/industrial-switches/index.html)
Cisco製品のVisioステンシル  ※ 既存機種と後継機種の図に使用
(https://www.cisco.com/c/en/us/products/visio-stencil-listing.html)


関連ページへのリンク

関連するソフテックだより

「ソフテックだより」では、みなさまのご意見・ご感想を募集しています。ぜひみなさまの声をお聞かせください。

ページTOPへ