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ソフテックだより 第497号(2026年5月6日発行)
技術レポート

「シンプルCPU通信とModbus/TCP通信時の構築方式選定」

1. はじめに

三菱電機製PLCにて、装置PLCからデータを取得したい場合や、Modbus/TCPで装置やインバータ等からデータを収集したい場合、シンプルCPU通信を使用するケースは多いかと思います。
今回は、シンプルCPU通信についての紹介、Modbus/TCPでデータ取得を行う場合に対抗馬になる通信プロトコル支援機能の紹介と両者の使い分けについて整理します。

2. シンプルCPU通信について

シンプルCPU通信は、PLC間や外部機器とのデータ通信をパラメータ設定のみで実現できる機能です。複雑な通信プログラムを作成することなく、エンジニアリングツール(GX Works3等)のパラメータ設定のみで、Ethernet上の他局や外部機器とデバイスデータを送受信できます。

2.1. シンプルCPU通信の特徴

シンプルCPU通信には下記の特徴があります。

  • プログラムレス通信
    通信プログラムを作成することなく、設定により対象デバイスやレジスタを指定することでデータの送受信が可能

  • バッファメモリによる制御
    一部の通信動作はバッファメモリ経由で制御可能であり、定期交信の停止・再開や要求時交信の実行制御に対応
    また、定期交信であっても開始・停止の制御が可能

  • END処理同期の通信
    データの送受信はCPUユニットのEND処理タイミングで実行

  • CPU状態に依存しない継続性
    自局CPUが停止エラー等によりSTOP状態となった場合でも、通信を継続可能

  • データの一致性保証
    設定単位で処理され、設定範囲内でデータ不整合(泣き別れ)が発生しない

  • 通信タイミングの指定が可能
    一定周期で行う定期交信に加え、任意タイミングで実行可能な要求時交信にも対応可能

2.2. シンプルCPU通信の対応機種

シンプルCPU通信は三菱電機製PLC各シリーズのCPU内蔵EthernetポートおよびEthernetユニットで使用可能です。

表1.シンプルCPU通信の対応機種の例

CPUシリーズ 対応機種/ユニット
MELSEC iQ-R CPU内蔵Ethernetポート
Ethernetユニット
MELSEC iQ-F CPU内蔵Ethernetポート
MELSEC-Q CPU内蔵Ethernetポート

2.3. シンプルCPU通信で交信可能な相手機器、プロトコル

シンプルCPU通信の対象機種(交信可能な相手機器)は、三菱電機製PLC各シリーズをはじめ、他社製PLCや標準プロトコル対応機器まで幅広く対応しています。

実際の対応可否は使用するCPUやEthernetユニット、対象機器の仕様により異なるため、導入時には最新のマニュアルを確認する必要があります。

表2.シンプルCPU通信で対応している代表的な他社PLCシリーズ

会社名 PLCシリーズ
オムロン SYSMAC CS/CJシリーズ
キーエンス KVシリーズ
SIEMENS S7シリーズ
富士電機 MICREX-SXシリーズ
ジェイテクト TOYOPUCシリーズ
横河電機 FA-M3シリーズ
パナソニック FPシリーズ
安川電機 MPシリーズ

表3.対応している標準プロトコル

シンプルCPU通信対応通信プロトコル
SLMP
Modbus/TCP

2026年3月現在、シンプルCPU通信で他社PLC、Modbus/TCP通信が可能な機種、ユニットの対応状況については下記の通りです。

表4.CPUシリーズ/ユニット別 シンプルCPU通信対応一覧

CPUシリーズ 機種/ユニット 対応機種
三菱PLC 他社PLC
Modbus/TCP
MELSEC iQ-R CPU内蔵Ethernetポート ×
Ethernetユニット
MELSEC iQ-F CPU内蔵Ethernetポート
MELSEC-Q CPU内蔵Ethernetポート ×
Ethernetユニット × ×

3. シンプルCPU通信のメリット・デメリット

ここまでシンプル通信について紹介しました。
一見、万能そうに見えるシンプルCPU通信ですが、使ってみるとデメリットも見えてきます。ここではシンプルCPU通信のメリット・デメリットについて紹介します。

メリット

  • 多種多様なPLCとの通信やSLMP、Modbus/TCPに対応
  • 常時通信を行う場合、通信設定のみで構成が完結する
  • 他社PLCとの通信も可能
  • Ethernetに接続されていれば通信が可能

デメリット

  • 通信する台数やファンクションコードが増えると設定数が増加する
  • コネクションのオープン・クローズ状態の管理ができない
  • 通信内容の制御やエラー処理についてユーザが関与できる範囲は限定的
  • 設定変更後にCPUのリセットが必要
  • CPUユニット内蔵EthernetポートとEthernetユニットで通信可能な機器が異なる為、通信用のユニット選定前に確認が必要

シンプルCPU通信は名前の通り、設定周りはシンプルですが、設定のみで構成できるが故のデメリットがあります。

特にCPU内蔵EthernetポートとEthernetユニットで通信可能な機器が異なる点については導入時に確認が必要です。

4. 通信プロトコル支援機能について

弊社ではModbus/TCPを使用して装置等からデータ収集を行うことも多いです。
その際にシンプルCPU通信との対抗馬に上がるのが通信プロトコル支援機能です。

この機能は、相手機器が指定するプロトコルに合わせて、電文の作成や送受信を簡単に行うための機能です。
通信プロトコル支援機能は通信ごとにフォーマットを設定し、その設定番号を読み出すことで通信電文を作成します。通信電文はPLCのデバイスを指定することができます。

通信プロトコル支援機能ではエンジニアリングツール(GX Works2,3など)で、相手の仕様に合わせた電文フォーマットをあらかじめ登録します。
作成した設定をユニットに書き込み、プログラムから専用命令を実行するだけで、登録したプロトコルが呼び出され、通信が開始されます。

4.1. 通信プロトコル支援機能の主な特徴

  • 仕様に応じた電文を定義可能
    機器独自のヘッダ、フッタ、チェックサムなどを含む特殊な電文でも、ツール上で自由に定義して対応可能

  • PLCのデバイスの組み込み
    通信パケット内にデバイスを組み込むことが可能なため、通信のたびに変化するデータ(測定値や制御指令)の送受信も容易

  • 診断とデバッグ
    通信プロトコル支援機能の実行状態は、バッファメモリの専用エリアで確認でき、パケットの照合不一致やエラーコードなどを詳細にモニタすることが可能。
    また、不正応答時の受信パケットからエラーメッセージをデバイスに格納し活用することが可能。

5. 通信プロトコル支援機能のメリット・デメリット

電文変更の自由度が高い通信プロトコル支援機能ですが、やはりこちらにもデメリットが存在します。
ここでは通信プロトコル支援機能のメリット・デメリットについて紹介します。

メリット

  • 通信内容(コマンド・データ構成)を任意に定義できる
  • 通信タイミングや処理順序をプログラムで制御可能
  • エラー発生時のリトライ処理や復帰動作を個別に設計可能
  • デバイス指定により電文内容を変更でき、設定の使い回しが可能

デメリット

  • プロトコル定義およびプログラム実装が必要であり、開発工数が増加する
  • 通信処理をユーザ側で管理する必要がある
  • 通信プロトコル支援機能設定用のファイルがプロジェクトの他に必要

通信プロトコル支援機能はシンプルCPU通信とは異なり、取得アドレス、取得点数等をデバイスから指定することが可能な為、プログラム側で取得アドレス、取得点数の値を指定していれば、プログラムの変更のみで設定を変更することが可能です。

一方で通信プロトコル支援機能の設定はプロジェクトとは別ファイルで設定を保存する為、プロジェクトの他に、通信プロトコル支援機能の設定ファイルも書き込む必要があります。

以下にシンプルCPU通信と通信プロトコル支援機能を比較した表を示します。

表5.シンプルCPU通信と通信プロトコル支援機能の比較

項目 シンプルCPU通信 通信プロトコル支援機能
実装方法 パラメータ設定のみ 専用ファイルでの定義+プログラム実装
オープン・クローズ 自動管理(ユーザ制御不可) ユーザ制御可能(命令実装が必要)
通信制御 不可 可能(タイミング・順序の制御可)
エラー処理 限定的 リトライ・復帰処理を実装可能
柔軟性 低い 高い
開発工数 少ない 多い
向いている用途 簡単な通信・短期立ち上げ 多台数・多電文・制御が必要な通信

6. シンプルCPU通信と通信プロトコル支援機能の使い分け

先でシンプルCPU通信と通信プロトコル支援機能、それぞれのメリット・デメリットについて紹介しました。
ここでは、それらを踏まえて用途ごとの使い分けについて整理します。

  • PLC間のデータ連携
    PLC同士がEthernetに接続されていれば、シンプルCPU通信を使用することで、比較的容易にデータ連携が可能です。
    通信先のPLCのデータ連携アドレスを指定するのみでデータ連携が完結する為、シンプルCPU通信機能の使用をおすすめします。

  • Modbus/TCP通信(通信制御やエラー処理が不要なシンプルな構成の場合)
    シンプルCPU通信を使用することで、通信設定のみで構成でき、開発工数を抑え短期間で立ち上げることが可能です。
    そのため、通信プログラム作成に不慣れな場合や、通信処理をできるだけ簡略化したい場合には、シンプルCPU通信が適しています。

  • Modbus/TCP通信(複数台・複数電文、エラー処理等が必要な場合)
    通信プロトコル支援機能を使うことをおすすめします。
    シンプルCPU通信では台数×電文数分の設定が必要となりますが、通信プロトコル支援機能では、ファンクションコードや取得アドレス、データ数をデバイスから指定できるため、柔軟な運用が可能です。

7. まとめ

以上、シンプルCPU通信の概要およびModbus/TCP通信におけるシンプルCPU通信と通信プロトコル支援機能のメリット・デメリット、その使い分けについて整理しました。

シンプルCPU通信は簡易に通信を実現できる一方で、通信制御や設定面において制約となる点もあります。通信内容や通信台数、運用条件に応じて適切な通信方式を選択することが重要です。

(S.O.)


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