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ソフテックだより 第483号(2025年10月1日発行)
技術レポート

「CSSフレームワークの活用と選定について」

1. はじめに

私は本社事業所に勤務する入社2年目の社員で、主にWebアプリケーション開発に携わっています。 業務の中で、統一性のあるデザインを効率的に作るため、CSSフレームワークを活用する機会が多く、その便利さと重要性を実感しました。 そこで今回は、Webアプリケーション開発には欠かせないCSSフレームワークについて紹介し、Web開発における活用の一助としたいと思います

2. CSSフレームワークとは

CSSフレームワークとは、Webアプリケーションを作成するのに必要なパーツや、ページレイアウトを構築するため、あらかじめ用意されたCSSコードを体系的にまとめたものです。 ここでいうCSS(Cascading Style Sheets)とは、文字の色や大きさ、余白、配置など、Webページのデザインやスタイルを指定するための言語です。
CSSフレームワークには、具体的には、ボタンやフォーム、ナビゲーションメニューといった共通のパーツや、ページ全体のレイアウトを整えるためのスタイルが含まれています。 画面幅やデバイスに応じたデザイン構築を支援する仕組みが備わっているものもあり、統一されたレイアウトを簡単に実現できるようになっています。

入力フォームの例
図1. 入力フォームの例

CSSフレームワークは、デザインの統一性を保ちながら開発時間を短縮し、メンテナンスを容易にすることで、Web開発におけるデザインと開発の効率化を目的としています。 そのため、効率的かつ高品質なWeb開発を行う上で、重要な役割を果たしています。

ここで、CSSフレームワークを構成する主な要素や機能について、具体的に見ていきます。

2-1. UIコンポーネント

UIコンポーネントとは、Webアプリケーションで共通して利用されるユーザーインターフェースの部品を指します。 具体的には、ボタン、フォーム、ナビゲーションバー、モーダルウィンドウなどが挙げられます。

2-2. ユーティリティクラス

ユーティリティクラスとは、余白、文字サイズ、色、レイアウトの位置調整(flexやgridなど)といった、単一のスタイルを適用するための小さなクラスを指します。 CSSフレームワークでは、これらのユーティリティクラスを活用することで、カスタムCSSを書くことなくレイアウトやデザインを柔軟に調整できます。

背景色・パディング・マージン
図2. 背景色・パディング・マージン

<div class = ”p-3 mb-2 bg-primary text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-secondary text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-success text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-danger text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-warning text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-info text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-light text-white”>.bg-primary</div>
<div class = ”p-3 mb-2 bg-dark text-white”>.bg-primary</div>

透明度
図3. 透明度

<div class="opacity-100">■100%■</div>
<div class="opacity-75">■75%■</div>
<div class="opacity-50">■50%■</div>
<div class="opacity-25">■25%■</div>

このように、ユーティリティクラスを並べることで、背景色や透明度などのデザインを簡単に調整出来ます。

2-3. レスポンシブデザイン

レスポンシブデザインとは、画面幅やデバイスに応じて最適なレイアウトを自動的に調整する仕組みのことです。 PC・タブレット・スマートフォンなど、異なるデバイスであっても統一感のあるデザインを保ちながら、使いやすい画面表示を実現できます。 CSSフレームワークでは、あらかじめレスポンシブ対応の仕組みが備わっているため、開発者が画面幅ごとのCSSの書き分けを自分で記述する必要が少なくなります。

レスポンシブデザイン
図4.レスポンシブデザイン

レスポンシブデザインを効率的に実現するための手段として、グリッドシステムがあります。
グリッドシステムでは、画面をあらかじめ「行(row)」と「列(column)」に分割し、コンテンツをその枠組みに配置していきます。 これにより、カラムの数や幅を指定するだけで、複雑なレイアウトを効率よく構築できます。 たとえば、Bootstrap のグリッドシステムでは画面を 12 等分し、col-6 を指定すれば横幅の半分を占める要素が簡単に作成できます。
このようにレスポンシブデザインとグリッドシステムを活用することで、統一感のあるレイアウトを効率的に構築しつつ、デバイスごとに柔軟な調整が可能となります。

グリッドシステム
図5. グリッドシステム

3. CSSフレームワークの特徴

ここからは、CSSフレームワークを使う上でのメリット・デメリットを紹介したいと思います。

3-1. メリット

  • 開発時間を短縮できる
    あらかじめ用意されたスタイルやコンポーネントを利用することで、整ったデザインを効率的に作成できるため、1からCSSコードを記述する必要がなく、制作作業を大幅に短縮することが出来ます。 また、多くのフレームワークはデバッグ済みのスタイルを提供しているため、コードの不具合に悩まされる時間も減らすことが出来ます。
    ボタンの例
    図6. ボタンの例

    ・CSSフレームワーク(ここでは、Bootstrap)を使ったコード
    <button type="button" class="btn btn-primary">Primaryボタン</button>

    ・CSSフレームワークを使わないコード
    <button class="btn-primary">Primaryボタン</button>    
    
    <style>
      	.btn-primary {
    	  display: inline-block;
    	  padding: 0.375rem 0.75rem;  
    	  font-family: system-ui, -apple-system, "Segoe UI", Roboto, "Helvetica Neue", Arial, sans-serif;
    	  font-size: 1rem;            
    	  font-weight: 400;           
    	  line-height: 1.5;
    	  text-align: center;
    	  box-sizing: border-box;
    	  color: #fff;                
    	  background-color: #0d6efd;  
    	  border: 1px solid #0d6efd;  
    	  border-radius: 0.375rem;    
    	  cursor: pointer;
    	  transition: background-color 0.15s ease-in-out, border-color 0.15s ease-in-out;
    	}
    </style>
    このように、CSSフレームワークを利用しない場合では、HTML標準パーツにデザインを加えるために多くのスタイルを自分で定義する必要があり、手間がかかります。

  • 全体のデザインに統一感が出せる
    ボタンやフォームなどの共通パーツに統一されたスタイルがあらかじめ設定されており、全体で一貫したデザインを適用できます。 個別のパーツにも一定のルールやガイドラインが施されているため、開発時だけでなく、その後の運用でも統一感のある見た目を保ったまま更新が可能です。
    さらに、チーム開発においても、フレームワーク自体が視覚的なルールやスタイルガイドラインとして機能するため、 複数人が同じルールに従って作業を分担でき、ページやコンポーネントごとのデザインのばらつきを防ぎながら、品質を一定に保つことができます。 結果として、保守性が高く、見た目の整ったWebアプリケーションを効率的に構築できます。

  • 学習コストの軽減
    CSSフレームワークは、標準化されたルールや一貫性のある命名規則に沿って設計されているため、 新人やプロジェクトに初めて参加するチームメンバーでも比較的短時間でコードを理解できます。 たとえば、ボタンやフォーム、グリッドレイアウトといった共通のUIコンポーネントは統一されたクラス名で提供されており、どの部分がどの役割を果たしているか直感的に把握できます。 結果として、学習にかかる時間が短縮され、共同開発や既存プロジェクトへの参加もスムーズに行え、効率的に開発作業に取り組むことが可能となります。

3-2. デメリット

  • 似たようなデザインになる
    あらかじめ用意されたボタンやフォームなどのスタイルや、デフォルトの色やフォント、余白などをそのまま使用することで、 画面がそのフレームワーク特有のデザインになってしまい、他のWebアプリケーションと似通ってしまう可能性があります。そのため、独創的な画面を作成するには不向きです。 しかし、よくあるデザインということは、つまり見慣れていてわかりやすいというメリットでもあることは頭に入れておいた方がよいと思います。
    ほとんどのCSSフレームワークでは、既に定義済みのクラスを自分でカスタマイズする事が出来ます。 しかし、どのクラスの定義が優先されるかがわかりづらい場合があり、思うように変更できないこともあるため、注意が必要です。

  • カスタマイズが難しい場合がある
    フレームワークはあらかじめ便利に使えるよう多くのCSSクラスが定義されていますが、 その分、複数のCSSクラスが重なって適用されるため「どのCSSクラスのスタイルが最終的に効いているのか」が分かりづらくなることがあります。 たとえば「ボタンの色だけを変えたい」と思っても、基本スタイル・ホバー時のスタイル・レスポンシブ対応のスタイルなどが複雑に関係していて、 1つの設定を変えるだけではうまく反映されないことがあります。 結果として、上書き機能を多用したり、フレームワークのルールを崩して独自CSSを大量に追加したりしてしまうと、かえって管理が難しくなる恐れがあります。 特に、フレームワークの仕様や構造を十分理解していないと、思い通りにカスタマイズできず、学習コストや調整の時間が増えるという問題につながります。

  • バージョンによって更新されないリスクがある
    CSSフレームワークは、多くの場合オープンソースとして開発されており、開発コミュニティや開発元によってメンテナンスが行われています。 メンテナンスは、バグの修正や新しいWebブラウザへの対応など、長期的にフレームワークを利用する上で重要です。 しかし、開発コミュニティや開発元の方針によっては、古いバージョンのサポートを終了し、新しいバージョンの開発を優先する場合があります。 また、個人や小規模な組織が開発している場合には、更新自体が止まってしまうリスクも存在します。 その結果、更新の止まったフレームワークを使用すると、時代の要求に対応できず、保守性や互換性に問題が生じる可能性があります。
    したがって、CSSフレームワークを利用する際には、公式リリースやアップデートの状況を事前に確認することが重要です。

4. CSSフレームワークの種類と選定

4-1. 有名なCSSフレームワーク

よく使用されているCSSフレームワークをいくつか紹介したいと思います。

  • Bootstrap (https://getbootstrap.com/)
    Bootstrapは、2011年に公開された、最も利用実績の多いCSSフレームワークのひとつです。HTML、CSS、JavaScriptで構成されており、必要な機能を総合的に提供しています。特徴としては、豊富なコンポーネントがあらかじめ用意されていることや、JavaScriptを組み合わせた動的な機能を備えていることなどがあげられます。
    一方で、ファイルサイズが大きくなりやすく、読み込み速度に影響が出る可能性がある点には注意が必要です。

  • TailwindCSS (https://tailwindcss.com/)
    Tailwind CSS は、2017年に公開された比較的新しい CSS フレームワークで、ユーティリティファーストという設計思想を採用している点が最大の特徴です。従来のフレームワークのように完成済みのコンポーネントを利用するのではなく、背景色や余白、文字サイズなど、小さな役割ごとのユーティリティクラスを組み合わせてデザインを構築します。このアプローチにより、柔軟で自由度の高いカスタムデザインが可能です。
    一方で、HTML に多数のクラスが並ぶため、可読性や統一性に欠ける場合があることや、完成済みのコンポーネントが用意されていないため、自ら設計して作り込む必要がある点には注意が必要です。
    ボタンの例
    図7. ボタンの例

    ・TailwindCSSを使ったコード
    <button class="m-4 bg-blue-500 text-white font-bold py-2 px-4 rounded">ボタン</button>
    このように、多数のユーティリティクラスが並びます。

  • Bulma (https://bulma.io/)
    Bulma は 2016 年に公開された CSS フレームワークで、モバイルファーストデザインを採用しており、Flexbox をベースに設計されています。Bulma は JavaScript を含まないため、動的機能用のスクリプトを読み込む必要がなく、軽量です。また、CSS のみでスタイルやレイアウトを構築できるため、外部スクリプトに頼らずとも安定した表示が可能です。さらに、機能ごとに CSS がモジュール化されており、必要な部分だけを読み込むことができるため、使用しないスタイルを省略でき、全体のファイルサイズも小さく抑えられます。
    一方で、動的な機能(モーダルやドロップダウンなどの挙動)は自分で JavaScript を実装する必要があり、Bootstrap のような総合的な機能は備えていない点には注意が必要です。

フレームワーク 特徴 コンポーネント JavaScript依存 メリット 注意点
Bootstrap 世界で最も利用実績が多い 豊富に用意 あり すぐに使えるコンポーネントが多い ファイルサイズが大きく、読み込み速度に影響する場合がある
Tailwind CSS ユーティリティファースト 用意されていない
(自分で設計)
なし 自由度が高い HTMLに多数のクラスが並ぶため、可読性・統一性に注意
Bulma モバイルファースト、軽量 基本的なコンポーネントはあり なし CSSのみでレイアウト構築可能、軽量で安定 動的機能は自分でJavaScriptを実装する必要がある

4-2. CSSフレームワークの選定

ここまでいくつかのCSSフレームワークを紹介してきましたが、自分が使用する際にどのフレームワークを選べばよいのか、迷う方もいるかと思います。 選ぶ際には、以下の3点を基準に検討するとよいと思います。

  • デザイン方針
    まずは、独創的なデザインを作りたいのか、それとも統一感を重視してチームでも作業しやすいデザインにするのかを考えることがよいかと思います。 Tailwind CSS のように自由度が高く個別のスタイルを細かく調整できるフレームワークか、 Bootstrap のように完成済みのコンポーネントで統一感を出しつつチーム開発向きのフレームワークか、目的に応じて選ぶのが重要です。

  • 必要なパーツやレイアウト、機能がそろっているか?
    フレームワークを選ぶ際には、プロジェクトで必要となるコンポーネントが揃っているかを確認することが重要です。 加えて、レスポンシブ対応やグリッドシステムといったレイアウト機能があるか、 動的な挙動が必要であればその機能が含まれているかもチェックしておくと、制作の効率や完成度が大きく向上します。 必要な機能が揃っているフレームワークであれば、追加で自作する手間を減らし、開発全体をスムーズに進めることができます。

  • ドキュメントの充実度
    最後に、ドキュメントの充実度も重要です。公式マニュアルやサンプルコード、チュートリアルが豊富であれば、初学者でも学習がスムーズに進み、開発時のトラブルや疑問点にも迅速に対応できます。 また、コミュニティが活発で情報量が多いフレームワークは、困ったときに調べやすく、安心して使用できます。

以上のポイントを踏まえ、自分のプロジェクトに最適なCSSフレームワークを選ぶことが、効率的かつ質の高いWeb開発の実現につながります。

5. おわりに

今回は、CSSフレームワークについて紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか。本稿で触れた他にも様々なフレームワークが存在します。それぞれ特徴や強みが異なりますが、基本的な使い方や考え方は似ているため、一つを学んでおけば他のフレームワークにも応用しやすいという利点があります。用途や開発スタイルに応じて、自分好みのフレームワークの使用を検討してみても良いと思います。本稿がWebアプリケーションを作成する際の参考になれば幸いです。

(M.A.)


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