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ソフテックだより 第477号(2025年7月2日発行)
技術レポート

「dbSheetClientを使ってみて」

1. はじめに

私は本社事業所に勤務する中堅社員です。
業務でMicrosoft Excelを使用して資料を作成しているお客様から、

  • 同じようなExcelファイルができて管理が大変
  • 入力・確認の作業負荷を低減したい
  • 転記・確認ミスによる品質事故を防ぎたい

等のご相談があり、dbSheetClientを使ったシステムを提案し、開発することになりました。
お客様に提案したものの、dbSheetClientを使用するのは初めてで、一から勉強しました。本稿では、dbSheetClientを使ってみた感想や使い方の手順等を紹介したいと思います。

2. dbSheetClientとは

dbSheetClientは、株式会社ニューコムが提供する、Microsoft Excelにデータベース機能とネットワーク機能を付加した開発支援ツールです。
(2025年3月に最新バージョン「dbSheet EX11」がリリースされています。弊社ではdbSheetClient2022を使用して開発を行いましたので、以降を「dbSheetClient」として説明します。)

dbSheetClientに表示するデータや入力されたデータはサーバー上のデータベースで管理します。 ユーザーはクライアントPC上のdbSheetClientの実行版からネットワーク経由でデータベースのデータを読み書きします。
dbSheetClientの画面は、Excelをそのまま表示するため、Excelファイルでの運用からdbSheetClientの運用に移行しても、ユーザーは違和感なく画面の確認や入力をすることができます。

dbSheetClientの構成図
図1. dbSheetClientの構成図

このようにdbSheetClientは今までExcelファイルで管理していたデータをデータベース化し、複数人で共通のデータを参照することができるツールになります。 dbSheetClientを使用する利点には、以下が挙げられます。

  • 今までExcelファイルで管理していたデータをデータベースに保存するため、大量のExcelファイルを管理したり、一つずつファイルを開いて確認する、という作業がなくなる。
  • 複数のExcelファイルで管理していたデータをデータベースに保存できるため、今までExcel単位で管理していたデータが連携し易くなる。
  • ExcelのUIをそのまま利用できるので、ユーザーは違和感なく移行できる。
  • 単純なリスト等であればノーコードで開発可能。(私が対応した案件ではノーコードという訳にはいきませんでした。)

3. 開発の流れ

dbSheetClientの開発から運用までの簡単な流れを説明したいと思います。

3-1. Excelフォームの作成

現場で使用している既存のExcelファイルから、dbSheetClientで使用するデータベースと連携し易いExcelフォームへ改良します。
このフェーズの注意点として、データベースとの連携がし易くなるように、既存のExcelから大きく変えたフォームにしてしまうと、「既存のExcelファイル操作から違和感なく移行できる」というdbSheetClientの利点が生かせなくなってしまいます。逆に既存のエクエルと同じフォームにしてしまうと、後の開発フェーズが大変になってくるため、既存のExcelのフォームを保ちつつデータベースと連携し易いフォームを検討することが大事です。

3-2. データベースの設計・実装

このフェーズではデータの管理方法を検討し、データベースを作成します。 Excelのフォームに表示するデータや入力されるデータをどう扱うのか、ということになるため、実際にはExcelフォームの作成とセットで検討することになります。

3-3. リソースの登録

dbSheetClientのリソースを登録します。
dbSheetClientにはプロジェクト/データベース/グループ/ユーザーの4つのリソースがあり、プロジェクトにデータベース・グループを、グループにユーザーを紐づけることができます。
ユーザーには管理者ユーザー/開発者ユーザー/一般ユーザーの3種類あり、後からでもユーザーの追加・変更は可能ですが、 このタイミングで少なくとも一人以上の管理者ユーザーを登録しておく必要があります。 また、プロジェクト開発を行うための開発者ユーザーの登録も必要です。

dbSheetClientのリソース関係図
図2. dbSheetClientのリソース関係図

3-4. dbSheetClientのプロジェクト開発

dbSheetClientのProjectEditorを使用してプロジェクト定義を行って開発します。
主に、メニュー定義/ボタン定義/タスク定義があります。

メニュー定義
:各メニューの表示や階層を登録します。
ボタン定義
:各画面で表示するボタンのデザインや各ボタン操作時に実行されるタスクを登録します。
タスク定義
:ボタン操作等で呼ばれるタスクを登録します。Excel編集・制御やデータベース制御など、多くのタスクセットが用意されていて、これらのタスクセットを組み合わせて処理を作成します。

タスク定義の例
図3. タスク定義の例

3-5. 開発データのアップロード

開発したプロジェクト定義ファイルとExcelファイルをサーバーにアップロードします。そうするとユーザーはクライアントPCのdbSheetClient実行版からサーバーに接続して使えるようになります。

3-6. 仮運用・改善

Excelファイルでの運用からdbSheetClientでの運用になるため、即運用に移るのではなく、仮運用でユーザーに操作していただき、操作感や改善点などの情報を収集します。 その上で実際の業務で運用できるように改善を行います。

3-7. 運用

仮運用で出た改善点を対応し、ようやく、運用となります。

4. dbSheetClientを使ってみて

dbSheetClientを使ってみて感じた注意点や感想を紹介したいと思います。

4-1. 処理速度に注意が必要

Excelを使用する場合はExcelの処理時間だけですが、dbSheetClientの場合は

  • Excelの処理時間
  • dbSheetClientの処理時間
  • データベースへのアクセス時間

を考慮する必要があります。

単純なリスト形式のExcelをdbSheetClientへ移行する場合は、短時間で処理できるので、それ程時間は気にならないですが、複雑なデータや大量のデータを扱う場合は時間がかかってしまいます。
開発では複雑なデータを扱って処理時間がかかってしまったので、以下の対策を取りました。

  • Excelで出来ることはExcelにやらせる
  • Excelやデータベースのデータの読み込み/書き込みのタイミングを整理する

Excelの得意なこと、dbSheetClientの得意なことを理解して使うことが大事なのだと思います。

4-2. 既存のExcelのフォームを保ちつつデータベースと連携し易いフォームを検討することが大事

既存のExcelファイルは、お客様が長年にわたって管理しやすいように、運用しやすいように改善を積み重ねて来られたフォームです。既存のExcelファイルは、当然ながら必ずしもデータベースと連携しやすいように考慮されている訳ではありません。そのため、既存のExcelファイルのフォームを保ちつつ、データベースと連携しやすいフォームを検討する必要がありました。

  • フォームをどう変えたら、既存のExcelファイルと同じ操作感にできるか
  • フォームを変えた場合に他の画面との統一性はどうか
  • 既存のフォームのままだと、dbSheetClientの処理はどういう制御になってその時の処理時間は問題ないか

など、いろいろと検討した記憶があります。また、お客様への説明・相談も必要です。お客様へ新しいフォームを説明したあと、お客様からご意見・ご要望をお聞きして再度検討し直したこともありました。
dbSheetClientのプロジェクト開発自体は、慣れてしまえばそれほど苦労なく対応できたと思いますが、このフォームの検討や調整に一番神経を使って対応したように思います。

5. おわりに

今回、dbSheetClientを使ってみた感想を紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
Excelファイルの運用をシステム化する際の参考になれば幸いです。

本稿ではdbSheetClientの具体的な機能や使い方までは紹介し切れませんでした。
また私が担当しているdbSheetClientの開発は、今後も他機能への展開が続いていきます。引き続き開発・運用を進めて、見えてきたテクニックや注意事項などを、またの機会に紹介させていただければ、と思います。

(T.M.)

[参考]
https://www.newcom07.jp/dbsheet/product-outline/excel/
※「dbSheet」および「dbSheetClient」は株式会社ニューコムの登録商標です。

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