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ソフテックだより 第411号(2022年10月5日発行)
技術レポート

「ビデオマネジメントシステム(VMS)連携」

1. はじめに

私は入社3年目になるキャリア入社の社員です。ビデオマネジメントシステム(VMS)と連携するアプリケーションの開発に携わる機会がありましたので、VMS連携の事例やVMS連携に活用すると便利なマルチメディアプレイヤーに関してご紹介させて頂きます。

2. VMSとは

VMSは、カメラの映像を録画、管理、閲覧するシステムです。VMSは、工場、プラント、公共施設、オフィス、店舗、交通機関、医療機関、金融機関など様々な場所に設置されてきています。また、近年はカメラで監視して安全対策を図るのみでなく、画像解析と組み合わせて下記事例の様に新たなシーンで活用の場が広がっています。

【新たな活用シーン】
  • 工場やプラントにおけるボトルネック分析による生産性改善
  • 公共施設やオフィスにおける持ち出し管理によるセキュリティ対策
  • オフィスにおける入退出把握による人事労務管理
  • 店舗における顧客分析によるマーケティングや接客対応

VMSは、一般的にカメラ、映像を録画・管理するサーバー、映像を蓄積するストレージ、映像を閲覧するクライアントで構成されます。アプリケーションは、VMSのサーバーと既存システム、クラウドシステム、AI・IoTシステムなどと連携することで、新たな活用シーンと価値を創り出すことができます。

システム構成
図1.  システム構成

3. VMS連携アプリケーション事例

今回、VMS連携の事例として、危機管理システム、侵入通報システム、設備保全システムに関して、それぞれのシステムアーキテクチャをご紹介したいと思います。

3-1. 危機管理

既存の異常検知装置やSCADA ※1と連携し、異常事態が発生した際に検知した場所と時間の情報から、設備情報データベース(DB)にて監視カメラの位置と、その監視カメラが異常を検知した時間の録画映像を特定し、中央監視センターのモニタ映像を自動で切り替えることができます。異常事態を迅速に映像で把握することにより、初動対応を適切に対応することができます。

※1
Supervisory Control And Data Acquisition の略で、システム監視やプロセス制御などを行い生産工程やインフラや設備を統合管理するシステム。

危機管理システム

図2.  危機管理システム

3-2. 侵入通報

VMSのモーション検知機能とクラウドシステムやスマートフォンのアプリケーションと連携するにより特定の場所に人が侵入したことを自動で検知し、管理者のスマートフォンにプッシュ通知、スマートフォンのアプリケーションで現場の詳細な状況を確認することができます。近年は、モーション検知のAI解析が高度化し、置き去り・持ち去り、転倒・事故、発煙・火災など画像から様々な事象を検知でき応用範囲が広がっています。

侵入通報システム

図3.  侵入通報システム

3-3. 設備保全

サーモカメラの映像を活用した熱解析やモーター・回転機の振動診断などのAI・IoTシステムやSCADAと連携することで、設備の故障予兆を検出し故障する前に保全することができます。故障時のダウンタイムを削減し、設備の稼働率を向上することができます。また、定期的にレポートを自動で作成し、状態を管理し、故障の予兆を検知した際に管理者へエスカレーションすることで、設備保全のオペレーションを簡素化することができ、管理業務を効率化することもできます。

設備保全システム

図4.  設備保全システム

4. マルチメディアプレイヤー

VMS連携する際に活用と便利なマルチメディアプレイヤー「VLC」に関してご紹介させて頂きます。

4-1. VLCとは

VLCはVideoLAN Clientの略で、オープンソース※2のマルチメディアプレイヤーです。マルチプラットフォーム対応でWindows、macOS、Linux、Android、iOSなど様々な環境で動作させることができます。コーデックを内蔵し、様々なストリーミングプロトコルやファイルフォーマットをサポートしており、対応するコーデックの多さが特長です。
Windowsアプリケーション用に.NETのパッケージ「Vlc.DotNet」もあり、容易にアプリケーションを実現することができます。

※2
VLCは、GPLライセンス(GNU General Public License Version 2)です。

4-2. Vlc.DotNet

Vlc.DotNetは、インストールしたVLCのライブラリを呼び出し、独自のWindowsアプリケーションに容易に組み込むことができるオープンソース※3のVLCのラッパー※4です。Vlc.DotNetは、NuGet※5で公開されているため、パッケージを独自のWindowsアプリケーションにインストールできます。使い方も容易でVLCライブラリのディレクトリを指定するイベント処理「VlcLibDirectoryNeeded」の実装と、再生する「Play」メソッドを呼び出せば容易にアプリケーションに映像再生機能を実装することができます。

※3
Vlc.DotNetは、MITライセンスです。
※4
ラッパー(wrapper)は、関数やライブラリなどを包み込み使い易くすしたり、別のプログラミング言語から利用できるようにするものです。
※5
NuGetは、.NET Frameworkに対応するオープンソースのパッケージマネージャです。
【ディレクトリ指定イベント処理実装例】
【再生メソッド呼び出し処理実装例】

5. おわりに

今回は、VMS連携の事例や便利なマルチメディアプレイヤーのライブラリに関してご紹介させていただきました。
カメラ映像を有効に活用するシーンが増え、本稿が少しでも皆様の課題の解決や価値の創出にお役に立てれば幸いです。またお客様により安心してシステム開発をご依頼頂けるように今後も実績を積み上げていきたいと考えております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(H.M.)


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