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ソフテックだより 第363号(2020年10月7日発行)
技術レポート

「産業用カメラの活用に関して 〜 GigE Vision カメラ 〜」

1. はじめに

組込みシステム開発を担当している入社1年目のキャリア入社の社員です。産業用カメラを活用した製品検査装置を開発致しましたので、ご紹介させて頂きます。

2. 産業用カメラとは

産業用カメラは、検査、生産自動化、監視カメラなど産業用に使われているカメラやカメラモジュールで、フレームグラバ、画像処理ライブラリなどさまざまな機器やソフトウェアと組み合わせて使用します。インタ―フェースの標準化が進みシンプルなシステム設計ができるようになり、総合的なコストの低減が図れるようになってきました。

2.1 特長

画像フレームや画質調整など様々な設定が可能で、設置場所の違いを柔軟に調整することができます。画像設定は、画面サイズやフレームレートなどの設定ができ、画像調整は、ゲイン、明るさ、ガンマテーブル、ホワイトバランス、色バランスなどの調整が可能です。
また、動いているものを高速に処理可能なグローバルシャッター方式により、全画素を同時に取得することができます。ソフトウェアも画像フレームの取得タイミングに同期し処理することにより、応答特性に優れた処理が実現可能です。

2.2 活用事例

カメラはスマートフォンや自動車のバックモニターやドライブレコーダー、衝突回避や自動運転に搭載され、大量生産され価格が下がり画像によるセンシング技術が求められる分野が広がりました。特に、半導体製造装置、電気電子、ロボット、自動車、医療(薬品)、印刷、物流、農業などの分野において、検査、生産自動化、識別管理など活用事例が広がってきました。

表1.  産業用カメラ活用事例

事例 対応内容 効果
検査 製品の画像解析し、欠陥、異物、ヒビ、割れ、シミなど不良を検出する。 品質向上、生産性向上、コスト削減、省人化
生産自動化 部品実装、組み立てなどにおいて、ワークの位置検出、計測、個数カウントなどを自動化する。 生産性向上、コスト削減、省スペース化、省人化
識別管理 部品や商品、ラベルデータを判別し、選別・ピッキング・仕分けなど作業を自動化する。 生産性向上、コスト削減、在庫削減、省人化

2.3 インターフェース

カメラ、フレームグラバ、画像処理ライブラリなどさまざまな機器やソフトウェアの組み合わせの増加に伴い、産業用カメラのインターフェースは、FireWire、IEEE1394、Camera Linkなどのさまざまな規格が採用されてきました。近年はGigE Vision(注1)やUSB3 Visionが普及し、ソフトウェアのインターフェース規格GenICam(注2)に対応した開発環境(System Development Kit:SDK)も充実し、各インターフェース規格やカメラベンダのハードウェアに依存しない様に標準化が図られてきました。

(注1)GigE Visionでは、マシンビジョンの業界団体(Automated Imaging Association:AIA)が規定したEthernet技術上で動作するプロトコルで、カメラ制御プロトコル(GigE Vision Control Protocol:GVCP)と画像伝送プロトコル(GigE Vision Streaming Protocol:GVSP)という2種類のプロトコルを定義しています。
(注2)GenICamはヨーロッパのマシンビジョン業界団体(European Machine Vision Association:EMVA)が規定したカメラを共通のインターフェース(API)でコントロールする規格で、カメラ制御用API(GenAPI)、トランスポートレイヤのAPI(GenTL)、カメラの機能名の標準化規定(Standard Feature Naming Convention:SFNC)などを定義しています。

3. システム構成

産業用カメラを活用した製品検査装置の開発事例におけるシステム構成を図 1に示します。産業カメラとしてGigE Visionの対応のカメラを使用し、Ethernetで産業用パソコンと接続します。カメラはPower of Ethernet(PoE)対応のスッチングHUBから給電されるため、省配線で設置も容易な構成となります。
産業用パソコンで画像処理アプリケーションや画像処理ミドルウェアが動作し、GenICam対応のカメラドライバやPLCドライバを介し製造装置とGigE Visionカメラと通信します。画像処理ミドルウェアは、OpenCV(注3)を活用し製品の不良個所を検出できるように画像を処理し、検査アプリケーションにより、不良検出の判定を実施します。
ソフトウェアは画像フレームに同期し処理することにより高速な処理が実現可能で、画像のフレーム落ちやデータ取得の異常処理なども考慮したタイミング設計が必要となりますが、パソコンの性能向上により安定したリアルタイムシステムを容易に実現できる様になってきました。

(注3)OpenCVはインテルが開発・公開したオープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリで、画像処理・画像解析および機械学習等の機能を持つC/C++、Java、Python、MATLABなどマルチプラットフォーム対応のライブラリです。

システム構成
図1.  システム構成

4. 最後に

産業用カメラを活用した製品検査装置開発を紹介させて頂きました。本開発の様に製造業における外観検査や異物検査、物流におけるラベリングなどの課題に対して、ソリューションも提供しております。また、高信頼性が必要とされるミッションクリティカルな検査機器や印刷システムなどの開発経験を活かして、お客さまの課題やご要望をもとに最適なソリューションをご提供していきます。

(H.M.)


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