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ソフテックだより 第309号(2018年7月4日発行)
技術レポート

「リモートI/Oの無線化 〜RS-485通信編〜」

1. はじめに

「見える化」や「IoT」という言葉が一般的に浸透し、電気やガスなどの使用量を一元管理するシステムが一般家庭にも普及する昨今ですが、これらに欠かせない物の1つが、頭となる管理ユニットと手足となる各機器間の通信です。

一般家庭であれば接続する機器はそう多くはありませんが、ビルや工場、商業施設などでは接続する機器数も多く、配線工事も大変になりコストもかかります。

そんな配線作業を減らす方法の1つとして無線化があります。そこで、今回はリモートI/Oとの通信を無線化する1つの方法として、RS-485シリアル通信の無線化をご紹介したいと思います。RS-485シリアル通信については、ソフテックだより第125号「RS-485の通信プロトコルについて」をご参照願います。

2. neoMOTEの主な仕様

RS-485通信を無線化するユニットはいくつかありますが、今回はソフテックだより第275号「小電力無線の長距離通信」でも簡単にご紹介しています920MHz帯域の周波数を使用した、neoMOTEシリーズ(※1)のWS-Z6000Aを使用した無線化についてご紹介します。

2.1 通信距離

通信距離は、見通し最長800mですが、同ユニット(WS-Z6000A)を中継器として使用することで、1km以上の通信も可能です(※2)

neoMOTEは無線端末同士で経路を自動検出して中継するマルチホップ・メッシュネットワークを採用しています。そのため、親機と子機の間に障害物があり通信出来ない場合でも、中継器を設置することで通信を行うことが可能になります。また、neoMOTEのメンテナンスツール(EasyManager)を利用することで、動作状況やネットワーク状態を簡易的に監視することができるため、中継器含め初期設置が比較的容易にできます。

無線ネットワーク監視画面(EasyManager)
図1. 無線ネットワーク監視画面(EasyManager)

2.2 Modbus対応

neoMOTEはModbusプロトコルに対応しています。Modbusプロトコルは近年ではFA用電子機器を接続する最も一般的な手段となっており、PLCでも簡単に実装できるようになりつつあります。Modbusプロトコルについては、ソフテックだより第133号「PLCでModbus通信 〜横河電機社製での実装例〜」でもご紹介していますので、こちらをご参照願います。

シリアルポートを使用したModbus通信にはModbus RTUとModbus ASCIIがありますが、neoMOTEはどちらも対応しており、付属の設定ツールで簡単にユニットに設定を書き込むことが可能です。そのため、Modbusプロトコルに対応した機器であれば、neoMOTEを使用することで、基本的に接続を無線化することが可能です。

また、子機側にもWS-Z6000Aを設置して通信する”RS-485無線化型”の場合は、RS-485で受信したメッセージを無線化して転送する透過通信が可能となっており、Modbusプロトコルに限らず、使用する機器の通信プロトコルに合わせて自由に通信することが可能です。

2.3 1対Nの通信

1台の親機に対して、最大100ノードの子機を接続できます。つまり、同一ネットワーク内に100ノードまで接続することが可能です。また、使用する周波数帯を本体のロータリースイッチで計28チャンネルから選択する事ができます。200kHz毎に連続した周波数帯が割り振られているため、同じ建物内で実際に28チャンネル全て使用することは難しいですが、1系統100台のネットワークを複数持つことが可能です。

3. 主な接続機器

主な接続機器としましては、同シリーズの専用ノードの以下があります。


無線ノード(型番) 内容
RS485無線化ユニット(WS-Z6000A) RS-485出力の機器を無線化/マスタ・スレーブ両対応
温湿度センサ(WS-Z3027) 温湿度各1CHずつ/温度-20℃〜+60℃/湿度0〜90%
デマンドパルスノード(WS-Z3030) 電流パルス入力1CH
パルス入力ノード(WS-Z3028) パルス入力4CH
サーミスタ温度ノード(WS-Z3033) サーミスタ温度入力4CH

表1. neoMOTEシリーズの専用ノード

接続構成のイメージは以下図2のようになります。

接続構成イメージ
図2. 接続構成イメージ

2.2でご紹介しました通り、Modbusプロトコルに対応した機器であれば、RS-485無線化ユニット(WS-Z6000A)をスレーブ側にすることで基本的に無線化することが可能ですが、同シリーズの温湿度センサなどのノードとRS-485無線化ユニット(WS-Z6000A)をスレーブ側にする場合では、データ交信方法が異なります。

4. データ交信方法と応答速度

ソフテックだより第275号でもご紹介していますが、小電力無線のデメリットとして、通信速度が遅いという点があります。本機器では、ノードのセンサノード型とRS-485型でデータ交信方法が異なりますので、それぞれご紹介します。

4.1 センサノード型

本機器は無線通信の欠点である通信速度の遅さをカバーするため、同シリーズのセンサノードであれば、無線化ユニット親機側でノード毎に最新データをバッファリングする仕様となっています。

具体的には、1分周期で専用ノードから無線化ユニット親機に対して最新データを送信し、親機側はそのデータをバッファリングします。そのため、マスタが要求を出してから応答が返ってくるまでの時間は、マスタとユニット親機間のRS-485通信にかかる分だけとなります。

応答速度イメージ(センサノード型)
図3. 応答速度イメージ(センサノード型)

ただし、応答速度が速いという反面、データ更新周期が1分間のため、データにリアルタイム性が求められる場合は注意が必要です。

スレーブからのデータを親機が最後に受信してから経過した時間[分単位]を取得できるため、親機とノードの間で通信異常が発生した場合にも問題無く検知することが可能です。
なお、センサノードを使用する場合の通信プロトコルはModbus RTUとなります。

4.2 RS-485無線化型

RS-485無線化ユニット(WS-Z6000A)に電力量計などを接続したRS-485無線化型の場合は、センサノード型とは異なり、親機側でバッファリングはせず、マスタから要求電文を出してから、機器のデータを読み出すという流れになるため、センサノード型よりも応答速度は遅くなります。逆に、要求電文を出してから読み出すため、データのリアルタイム性はセンサノード型よりも高くなります。

応答速度イメージ(RS-485無線化型)
図4. 応答速度イメージ(RS-485無線化型)

5. 無線通信異常時の対処例

基本的に無線通信距離の仕様を満たしていれば通信は安定しますが、遮蔽物など様々な状況下で通信が一時的に途絶えることも考えられます。
実際に無線化した際に組み込んだ、無線通信異常時の対処例をそれぞれのパターン別に記載します。

5.1 センサノード型の場合

センサノード型は、親機がデータをバッファリングするため、マスタからスレーブへの要求に対して応答が返ってきますが、4.1 の通り、親機側でスレーブからのデータを親機が最後に受信してから経過した時間を取得できるため、問題無く無線通信異常を検知することが可能です。

5.2 RS-485無線化型(入力)の場合

RS-485無線化型の場合は、センサノード型とは異なり、マスタからスレーブへの要求に対して応答が返ってこないため、マスタ側は受信待ちタイムアウトにより通信異常を検知することが可能です。

5.3 RS-485無線化型(出力)の場合

今回はリモートI/Oの無線化ということで、”入力”だけでなく”出力”も無線化することができます。
”入力”を取得できないことがシステムに直接影響を及ぼすことは比較的少ないと思いますが、通信異常により”出力”ができないと直接影響を及ぼす場合が多く、より安全面を考慮して対処する必要があります。

しかし、より安全サイドに寄せるとしても最低限の制御はしたいという場合もあり、今回は、スレーブ側リモートI/O機器をPLCとすることで、万が一通信異常が発生した場合でも、単純に出力OFFとするだけでなく、通信異常後は前回状態を保持してn分経過後に出力OFFなど、スレーブ側PLCでいくつか処理を組むことで実現しました。
なお、スレーブ側PLCが通信異常を検知する方法は、マスタからスレーブへカウンタ値を送信し、スレーブ側はそのカウンタ値が一定時間変化しなければ通信異常と判定する仕組みとしています。

また、5.2 RS-485無線化型(入力)と同様に、マスタ側はスレーブからの無応答により通信異常を検知することが可能です。

6. おわりに

近年では、無線LANやBluetoothなど無線通信の発達により、身の周りでも電子機器の通信はほとんどが無線になりつつあります。まだ有線の方が優れている面もありますので、使用する環境に応じて使い分ける必要はありますが、規模が大きいほど、配線の手間が省ける効果は大きいと思います。

今回は、リモートI/Oを無線化する1つの方法として、RS-485通信を無線化する方法をご紹介しました。本文でご紹介したように、RS-485無線化ユニット(WS-Z6000A)を使用することで、RS-485通信の機器であれば、ほぼ全て無線に置き換える事ができますので、リモートI/Oを無線化したいとお考えの方は、是非一度ご検討してみて頂ければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(Y.T.)

[参考]
無線センサネットワーク neoMOTE
東邦電子 無線センサネットワーク製品一覧
[注釈]
※1
現在は住友精密工業株式会社から東邦電子株式会社に事業継承
※2
周囲の環境に依存するため使用する際は現場で確認する必要があります

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