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ソフテックだより 第481号(2025年9月3日発行)
技術レポート

「PA-PanelとFA-Panelの違いについて」

1. はじめに

私は本社事業所に勤務する入社1年目の社員です。入社後初めての案件でPA-Panelを用いた開発を行っている最中です。
PA-Panel6とはRoboticsware社が発売している、PA(Process Automation)向けの監視システム開発のためのSCADAパッケージソフトウェアです。
Roboticsware社にはPA-PanelのほかにFA-Panelというソフトウェアがあります。
今回はFA-panelにはないPA-Panelの特徴について紹介したいと思います。

※PA(Process Automation)とは、連続生産プロセスにおける工程を自動で監視・制御し、品質や効率、安全性を向上させる技術です。
※SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)とは、工場やインフラ設備を遠隔から監視・制御するためのシステムで、センサーデータの収集や装置の制御、異常の検知などをリアルタイムで行う役割を持ちます。

2. PA-PanelとFA-Panelの構成や共通点

基本構成についてはこちらのソフテックだより 第457号(2024年9月4日発行)技術レポート「FA-Panel6の日報機能 〜日報機能を用いたファイル出力の開発〜」にて説明がされていますので、併せてご覧ください。

PA-PanelとFA-Panelの違いについて紹介する前に、両者の共通点についても簡単に説明したいと思います。主に以下のような共通点があります。

  • 通信ドライバ
    用意されている通信ドライバを通じて様々な機種のPLCとの通信を同時に行うことができます。
    通信ドライバ一覧
    図1. 通信ドライバ一覧

  • タグ
    タグはPLCなどと通信接続するための概念です。
    最大の特徴は、PLC上の様々なデータをすべてタグとして同等に扱うことができるという点です。
    例えば三菱PLCやオムロンPLCなどの他社製PLCが複数存在するような場合でも、タグとして各種PLC上のデータを同等に扱うことができます。
    基本的にPLCデバイス1点につき1つのタグを作成します。
    通信図
    図2. 通信図

  • アラーム/トレンド/レポート
    SCADAを構築するうえで必要になるアラームやトレンド、レポート機能も標準搭載しています。
    これらの機能は画面ライブラリとして用意しており、ライブラリからコピーしてくることで、自分でロジックを組まずに簡単に実装することができます。 ただし標準以外の機能が必要な場合は、その都度自分で組み込む必要があります。
    画面ライブラリ(クリックで拡大)
    図3. 画面ライブラリ

3. PA-Panel独自の機能

続いてPA-Panelにしかない特徴を紹介したいと思います。

3-1. 構造化タグ機能

一番の特徴として「構造化タグ」が挙げられます。
先ほど紹介した「タグ」をより便利に利用するための機能です。
PA(Process Automation)の現場ではバルブやポンプ、PID機器など、様々な機器が登場します。
FA-Panelではこれらの機器を操作するグラフィック画面を作成する際、機器操作用の各タグ同士に論理的な繋がりがなく、個別に管理する必要があります。タグをいちいち割り当てていくのもいいですが、大規模なシステムになってくるとかなりの時間がかかってしまいます。
そこで利用するのが「構造化タグ」です。
FA-Panelでは個別で管理していた複数のパラメータを、まとめて1つの「構造化タグ」として扱うことで管理を楽にすることができます。
構造化タグを利用する際はメンバと呼ばれるパラメータで構成されるクラスを定義します。例えば、弁の開閉、アラーム発生、モード切り替えの操作ができる機器のクラスを作成することを考えます。

クラス定義
図4. クラス定義

このようにクラスを定義したあとはインスタンスを生成し、各々のメンバにタグを割り当てることで利用することができます。
生成したインスタンスをどのように利用するかは次のセクションで説明します。

インスタンス生成
図5. インスタンス生成

3-2. フェースプレート部品

PA-Panelのサンプルには各種クラスとそれに対応したフェースプレート部品があらかじめ用意されています。
これらのフェースプレートは、同一のクラスに基づくインスタンスであれば共通して利用できる設計となっており、再利用性に優れています。
また、用途に合わせて既存のフェースプレートを改造することで、機器にあったフェースプレートを作成することができます。
図6は先ほど生成したインスタンス用にフェースプレートを用意して、タグを割りつける場合のイメージ図です。
本来なら、それぞれのラベルコントロールやボタンコントロールにタグを割り付ける必要がありますが、構造化タグを利用すると、フェースプレート自体に1つの構造化タグを割り付けるだけで済んでしまいます。
なお、構造化タグの各メンバを対応するコントロール(ボタン、ラベル)に結び付ける処理は、スクリプトによって実装する必要があります。
例えば、図6のONボタンには「Open」メンバを、OFFボタンには「Close」メンバを割り当てるといった具合に、各コントロールに適切なメンバを割り当てるロジックの記述が必要です。

タグの割付イメージ
図6. タグの割付イメージ

3-3. エンジニアリングツール

構造化タグを利用する際は、インスタンスの各メンバにタグを割り当てる必要があります。
これらを手動で行うとなると時間がかかりますし、ミスが起こる原因にもなります。
PA-Panelには、この作業を支援するためのエンジニアリングツールも用意されています。
VBAマクロを用いてcsvファイルを生成し、これをサーバに読み込ませることで簡単にインスタンスを生成することができます。
このエンジニアリングツールを利用することで、構造化タグ用のcsvファイルのほかに、実タグやアラームのマスタファイルなどを生成することができます。
用途に合った、マクロの改造方法も公式マニュアルに載っているため、フェースプレートを改造するような前述の場合でも対応が可能です。

4. おわりに

今回は、FA-Panelには備わっていないPA-Panel独自の特徴について紹介しました。
PA-PanelはPA(Process Automation)分野に特化した開発環境として、より柔軟で効率的な画面設計を支援する様々な機能を備えています。
特に、紹介した構造化タグとフェースプレートの再利用性は開発の効率化に大きく貢献します。
なお、今回は紹介を省略しましたが、構造化タグに対応したシンボル部品(バルブ、アナログ計器、etc...)もあらかじめ用意されており、これらを活用することでより効率的にグラフィック画面の構築が可能です。サンプル部品の活用によって効率的にSCADAの構築ができる一方で、お客様ごとに求められる仕様や操作感、機能要件はさまざまであり、必ずしもサンプル部品だけでニーズを完全に満たせるとは限りません。
したがって、サンプル部品が持つ機能や制限をただしく理解し、それがどこまで要件に一致するのか見極め、必要に応じてカスタマイズする判断力が求められます。お客様にとって必要な機能を実現させるためには、単に使える部品を並べるだけでなく、「これは標準機能で実現可能」「これは作り込む必要がある」など、技術的な裏付けがあったうえで積極的に提案をしていくことが重要です。現在行っている開発を通じて、より良いソフトを開発するために、ツールへの理解だけでなく、お客様視点での柔軟な対応力も養うことが何よりも大切だと感じています。

(D.M.)


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