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ソフテックだより 第2号(2005年9月21日発行)
現場の声編

「装置デバッグの舞台裏」

今月は、お客様の工場にソフテック社員7人が出張してソフトデバッグと装置の立ち上げを行った時の話を紹介します。
私は当時入社3年目の社員でした。やさしい先輩社員にアドバイスをもらいながらソフトの製造を行ってきました。過去にも何度か装置の立ち上げを行っていましたが、今回立ち上げる装置の規模は、過去に体験したことがない大きさです。しかも、ソフトは新規開発。作業中は常にドキドキの連続でした。
話を始める前に、簡単に経緯を説明します。
本開発では、装置の設計/製造はお客様が担当し、制御ソフトをソフテックが担当しました。社内でソフト製造を行った後、およそ2ヶ月間にわたりお客様の工場でソフテック社員7名がデバッグを行いました。
装置はお客様の完全自社設計で、最新鋭の技術を惜しげもなく投入した装置です。稼動部にはサーボモーター、パルスモーター、エアシリンダーの他にリニアモーターを採用していて、その荘厳な外観は、触れて指紋をつけてしまうのすら勿体ないと思えるほどピカピカに光り輝いています。
一方制御は、1台の装置に6台のPLCと1台のPCを装備して装置内でネットワークを構築しており、ユーザーインターフェースPCから入力された情報をもとに、装置内の工程ごとにPLCが制御を行っています。
この装置により、後に半導体チップになるシリコンウェーハに1枚ずつ加工を施していきます。
今回は装置組立て工場での作業の様子をお話したいと思います。


1.デバッグ初日

工場に到着すると、11台の装置が私たち6人を迎えてくれました。
この装置は1台で4畳半の座敷と同じくらいの容積があり、それがまだ骨組み剥き出しの状態ですが、11台も並んで配置されている様には感動すら覚えました。初めて法隆寺の五重塔を拝んだ時の心境を想像してください。まるでそのときのような感動です。
装置の威圧感も去ることながら、現場ではまだ30人以上もの方々が、せっせと装置の設計や組立て、I/Oチェックなどを行っているのです。
「ソ、ソフト入れるの怖いなぁ・・・壊しちゃったら・・どうしよう・・・」なんてことは言っていられません。早速届いた荷物を開封し、パソコンを起動します。
装置はお客様の方でI/Oチェックまで完了しているため、安心してソフトインストールすることができました。初日からすぐにデバッグに入ります。ソフト内にインターロックを仕掛け、アームを少し動かしてみたり、シリンダーを動かしてみたりと、ほんの少しずつ装置を動かして行きます。
「ふぅ〜、やっぱり想像以上に神経使うなぁ」
そうです。工場内の作業は常に緊張の連続です。

2.デバッグ数日目

まずは1台の装置に絞ってデバッグを集中して行います。
ある程度動作を確認したところで他の装置に展開してデバッグを行うことになります。装置によっても調整のレベルがまちまちなので、社員同士で調整レベルの高い装置を取り合ったり譲り合ったりして作業を進めました。
始めは一番基本となるI/Oまわりから確認を始め、徐々に連続した動作を伴う処理の確認を行っていきます。ロボットアームが物を掴む動作や、搬送ロボットが移動する処理を確認します。
私たちはドライバー片手にメカの微調整も並行して行います。センサーの取り付け位置の修正や、感度を調整して、ようやくマニュアル操作によりアームが自由自在に動けるようになりました。
途中ではハードソフトともに様々なトラブルが発生し、そのたびに一つずつ確実に解決して進めてきました。当然ですが、装置はセンサーの位置がほんの少しずれても、数十万ステップに及ぶプログラムが1文字間違っていても正しい動きをしてくれません。

3.単体試験完了/組み合わせ試験開始

作業を始めて3週間近く経った頃、ようやく装置内部の6台のPLC単体デバッグが完了しました。
これまでは、それぞれ開発した担当者がモジュール単体で確認を進めてきましたが、これからは全てのPLCを組み合わせて1台の装置として動作を確認します。他のPLCと同期が取れずに機械をぶつけてしまうことも考えられるため、この作業も予断を許しません。工場内での作業は機械を壊してしまうだけでなく、作業者に怪我をさせてしまう可能性もあるので、普段会社で作業しているのとは違う緊張感があります。
組み合わせ試験が開始されると、ようやく装置としての機能が確認できるようになります。この段階になると、お客様から動作の指摘が入ったり、仕様変更が入ったりするようになります。システムの規模が大きくなるほど、後に仕様変更が行われる可能性が高くなります。変更があることを考慮して、開発当初から保守性と汎用性に優れた構造で設計しておく必要があります。

4.システム試験

ようやく一通りの装置動作の確認が終わりました。
次はようやくシステム試験です。一般的にデバッグなど、ソフトの中を見ながら一つひとつの動作を確認していくテストをホワイトボックステスト、システムテストのように、ソフトに蓋をして出荷後と同じような環境で動作確認する方法をブラックボックステストという呼び方をします。
開発の種類によっては、システムテストで全ての機能や異常処理を確認して開発完了となるものもあります。通常のソフト屋さんの開発であればここで終了。さぁ引き上げよう!となるでしょう。
ソフテックの場合はここからが違ってきます。メカ物の開発はソフトだけでは成り立ちません。ここから長い長いランニングと調整が始まります。
長時間立て続けに装置を動かしていると、締まっていたはずのネジが緩んできたり、水が漏れ出したりなど様々なトラブルが発生する場合があります。どういう訳か同じように組立てた装置でも、デバッグの段階でよく面倒をみてあげなかった装置に限ってトラブルが発生します。装置が生きているように感じられることもあります。

5.システム試験完了!

装置デバッグ開始からおよそ2ヶ月、ようやく11台の装置の動作確認が完了しました。
途中の長い道のりでは、ケアレスミスを繰り返して反省のため丸坊主になった社員1名が出ましたが、立ち上げは無事に完了しました。たくさんの方々の膨大な努力が一つの果実として実を結んだのです。
工場での作業はここで終了です。この後は装置を実際の現場に搬入しての動作確認になります。当然ソフテックの社員は最後の現地調整まで担当します。
後は出荷までひたすらランニングを続けるばかり、「あぁ、ぼ、僕の装置が出荷されてしまう・・・」まるで娘が嫁に出るのを見送る父親の気分です。「少し寂しいけれど、これから世の中のためにたくさんの半導体を作り出しておくれ。」
開発者一同のささやかな願いを装置に託すのでした。


これはソフテックの開発のほんの1ページに過ぎません。
ソフテックでは日夜こうした開発物語が繰り広げられています。ソフテックがこうして楽しく仕事をして行けるのも全てはお客様のおかげです。ソフテック一同、日ごろから感謝の気持ちを忘れないよう、気を引き締めて仕事に取り組んで行きたいと思います。

(K.I.)


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