当社では本システムのリプレースを担当させていただきました。本紹介ではシステムそのものの紹介よりも本システムのリプレースに焦点を当ててご紹介いたします。
年月の流れと共にシステムを構成する機器が廃品種となりやむを得ずリプレースを行うとき、様々な問題が浮かび上がってきます。
ここで紹介する自動計量システムにおいて既存システムはYEWMACを使って構築されていました。
しかし、YEWMACは販売停止となっており、保守サービスも2007年5月末に停止となっています。これをWindowsおよびSQL Serverを搭載したPCにリプレースを行いました。
その過程で以下のような問題点に遭遇しています。
こうした問題を抱えながらどのように対応していったのか、ご紹介したいと思います。
図1. リプレース前と後の構成図
最初に遭遇した問題は、既存システムの仕様が不明という重大な問題でした。
既存システムは開発されてから15年も経っているので全体を詳細まで把握する担当者がいませんでした。
そして、度重なる変更で複数のバージョンのドキュメントが存在し、最新と思われるドキュメントも本当に最新かどうかは実機で確認する必要がありました。
さらに、ドキュメント自体が紛失している機能もありました。
その上、既存のMLバスやFA500ラダー開発ツール、FA500BASICプログラム作成ツールなどを使いこなせるエンジニアが必要ですが、若手の作業担当レベルにはいません。
図2. 既存プログラムの徹底的な解析が必要
対策として以下のことを実施しています。
既存プログラムのドキュメントがある部分はそれを利用して解析を行いました。
ドキュメントに細かな変更が反映されていなかったり、間違っていたりすることもあって、現地の実機との照合は欠かせませんでした。
既存システムに使われているYEWMAやFA500に関連する機器やツールあるいはソフトについて熟知するエンジニアは希有です。当社では若手の作業担当レベルにはおりませんでした。しかし、幸いにしてプロジェクトの推進や管理を担うレベルの担当者にはそうした人材に恵まれ、参入させることが出来ました。既存システムの仕様を完全に把握するためには熟知する人材の参入あるいはサポートが不可欠です。
コモン領域、SIGNAL、ファイル、フィールド定義、などを基準に使用箇所や方法などを解析する上での手順と書式を決め、効率よく解析を実施しました。
以上のように実際に現場で稼働しているコードの確認と既存ソフトウエアのドキュメントの解析を行って、製作に取りかかる前に仕様を完全に把握することで後の工程での手戻りを無くし効率よく作業することが出来ました。
図3. YM-BASIC解析画面例
以上によって以下の4つの問題を克服しました。
実際に旧システムを新システムに入れ替えを行うときには生産工場を停止する必要があります。
しかし、当然ですが生産工場を止める期間はできるだけ短くしたいというのがお客様の希望です。
それに添うためには、新システムの立ち上げに際して発生する問題も迅速に解決する必要があります。
こうしたことを実現するためにソフテックは以下のことを実施しました。
このシステムで試験を実施し、現地でのシステム稼働以前に新システムの十分な品質を確保。 上位は上位コンピュータシミュレータを設置して実際のホストコンピュータの代わりに通信させ、下位はFA-M3に情報を書き込むことでFA500とのやり取りを擬似的に実現して動作確認を行いました。
現地でのシステム稼働以前に新システムの十分な品質を確保することは、同時に現地でFA500を接続して稼働することで発見される既存システムの不適合をスムーズに解決できる環境を作ることにもなりました。
現地での新システムの動作確認をスムーズに効率よく進めるために、早い段階で接続確認をきちんと行い、接続間違いなどは新システムの動作確認を行う以前に修正を完了させておきました。
そのことによって接続確認もせずに通電して機器を破損するような事態、また、動作確認を開始しても新システムの不適合による問題なのか、単純な配線間違いの問題なのかわからずに混乱するような事態、を回避しました。
当たり前のことをちゃんとやることで生産ライン停止期間を短縮しました。
現地で新システム立ち上げ時に問題が発見されたとき現場の環境では確認に手間取る場合もあります。
そういうケースでは待機していたエンジニアが社内に立ち上げたシステムで迅速に確認し現地に情報をフィードバックしました。
こうすることで新システムの不適合を確認し、既存システムの不適合との切り分けがスムーズに行えました。
リプレースする部位の上位や下位に当たる部分については安易なプログラム変更は行いませんでした。
基本的には上位システムおよび下位システムのインターフェース仕様は従来通りとしました。
もちろん、既存システムの不適合を発見したときには下位システムのプログラムにも修正を加えました。ただし、既存システムにも新システムにも問題の無いように修正しました。
こうして修正した既存システムの不適合は11件にもおよびます。
お客様から「時々おかしかった、直って良かった」との声がありました。
さらに、既存システムから新システムに切り替える期間中は既存システムのYEWMACを撤去せずに置いておき、いざとなったら既存システムに戻して稼働させられるようにして進めました。
図4. 社内に構築したシステムの構成
こうして、さらに以下の4項目を克服しました。
以上によって、以下の残り2項目を解消いたしました。
本件ではPCアプリケーション開発、SQLデーターベース開発、およびPLCソフトウエア開発、くわえてYEWMAC、FA500などの旧機種やその周辺の機器やソフトウエアツールなども熟知しているエンジニアが必要でした。
これらの技術は複数の分野にまたがっており、これらすべての技術を習得しているエンジニアは稀有です。
さらにこれだけの技術を要する仕事は大きなプロジェクトになることが多く、プロジェクト管理能力も要求されます。
こうしたニーズに答えられるエンジニアが多数在籍します。
図5. 複数の分野に対応可能なエンジニアたち
当社は以下のような複数の分野、あるいは複数のメーカーに対応可能です。
社内では1人1人のエンジニアについても複数の分野の技術を習得することを推奨してマルチスキル化を推進しています。具体的には2010年4月現在で38名のエンジニアが在籍しますが、そのうち23名が複数の分野の技術を習得しています。こうしたことが本件のようなリプレース案件を成功させるために大切なことであると考えています。
(K.S.)
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