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ソフテックだより 第113号(2010年5月12日発行)
技術レポート
「IICバス通信ドライバのデバッグ」

1. はじめに

第79号 2008年12月3日 技術レポート「I/Oポートを使用したIICバス通信の実現方法について」で、IICバス通信の通信例について説明されています。
本号では、私が担当したCPUのIICバスインタフェースを使ったドライバソフト開発を例として、紹介します。

2. IICバス通信とは

IICバス通信は、フィリップス(PHILIPS)社で開発した同期式のシリアル通信の規格で、複数のEEPROMやLCDドライバ(スレーブ)を接続することができます。
一般的に、通信は基板内などの近距離のものに使われます。また、I2Cと書くこともあります。

信号線は、シリアルクロック線(SCL)と、シリアルデータ線(SDA)があります。
この2線だけで、制御側(マスター)と、IC(スレーブ)の通信を行います。
スレーブは、個別のアドレスがあり、それを元にひとつのマスターと複数のスレーブとで通信を行います。

SCLは、同期をとるための信号線でマスター側から出力します。
SDAは、個別のデバイスアドレス、リード/ライトの区別、デバイス内のメモリーアドレス、実際のデータ、といった形式になります。

実用例

IICバス通信は、主に以下の用途で使われます。

3. 構成

担当したドライバソフト開発では、図1の構成で、EEPROMとIICバス通信を行いました。
マスターを起動して、EEPROMからデータを読み込んで、そのデータをアプリケーションの設定値として使います。
また、アプリケーションの動作中に設定値の変更がある場合、変更後のデータをEEPROMに書き込みます。

開発時の構成

図1. IICバス通信の構成


4. IICバス通信の実現

CPUのIICバスインタフェースを使って、実現する場合、スタート、リード・ライト指定、ストップなどの手順、動作をレジスタの設定により、簡単に行えます。その他にレジスタの設定で行えるものは、マスター・スレーブの設定、送信・受信設定、通信速度があります。

EEPROMのドライバは、IICバス通信を行っている部分の上位に、EEPROMのデータの読み書きを管理する部分を追加して、2重の構成として、ドライバを使うアプリケーションは、データの読込みと書込みだけを行う構造にしました。
ドライバのデバッグでは、プログラムの確認だけでなく、ロジックアナライザで通信波形の確認も行います。
以降にプログラムと通信波形を並行して、確認を行うメリットについて、紹介します。

デバイスドライバの構造

図2. EEPROM I/Fの構成

5. 通信波形の確認

デバッグ、テストする際は、レジスタ値だけでなく、通信データの確認のため、SDA, SCLの波形確認も行います。
SDAとSCLの状態をロジックアナライザにモニタして、実際にマスタ-スレーブ間で流れているデータの確認をしながら、プログラムとハードの確認をします。
レジスタ値と実測波形を個別で見るだけでなく、比較しながら確認を行いますので、問題があるときには、ハードとソフトで問題を切り分けることができます。
特に、基板が開発中の場合、回路に問題がある場合も十分にありえるため、基板のチェックという意味でも大切な作業です。

通信時のSCL信号とSDA信号の波形

図3. SCL, SDA 計測波形
上:SCL, 下:SDA


データの送受信ができることを確認してから、通信速度の設定値とSCL信号の波形を比較しました。
設定速度156kbpsに対して、実測値78kbpsでしたので、半分の速度でしか通信していませんでした。
レジスタの設定に問題ないことを確認して、SCL信号のアナログ波形とデジタル波形を計測することにしました。

6. 通信速度の計測

6-1. SCLのアナログ波形とデジタル波形の計測

ビット同期した場合のSCL信号SCL信号のアナログ波形とデジタル波形

図4. ビット同期回路SCL 計測波形
上:アナログ波形、下:デジタル波形(1.00V 2.00μs)


上記の実測波形から以下のことが分かります。

アナログ波形

電圧が上がりきるまでに時間がかかっています(立ち上がりが遅い)。
ONの時間がOFFの時間の約3倍になっています。

デジタル波形

アナログ波形が上がりきるまでをLowとして、そこから0Vに落ちるまでHighとしています。

結果としては、本来出力するべきタイミングにSCLが追従(同期)できずに、次のタイミングでクロックのHighを検出して、通信を行っていました。
それでも通信ができる理由をCPUマニュアルで調べたところ、使用したマイコンには、ビット同期機能という機能があり、その機能が働いていました。

動作は、図3の場合、CPUがクロックをHighにしてから、約1uS後に出力状態をチェックし、High判定の値(スレッショルド値:2.50V)に達していなければ、クロックが出ていないと判断して、次のクロック出力タイミングまで出力を継続します。
信号を見ると、CPUがクロックをHighにしてから、約1uS後には1.4Vまでしか到達出来ていないため、次のクロックタイミングに出力状態を再チェックしています。

アナログ信号の立ち上がり時間は、以下の式で計測できます。

[立ち上がり時間(時定数)] = [静電容量] × [プルアップ抵抗の抵抗値]

対策としては、静電容量が一定のため、プルアップ抵抗の抵抗値を22kΩから2kΩに下げて、立ち上がり時間を短くすることにしました。

6-2. ビット同期回路

図4の実測波形で働いているビット同期機能の概要は、以下の通りです。
SCL(クロック)を出力した後で、実際の出力状態をチェックし、出力されていなければ、次のクロック出力タイミングまで、出力状態を保持します。

ビット同期した場合のSCL信号

図5. ビット同期回路

7. 終わりに

広く使われているIICバス通信ですが、今回のようにIICバスインタフェースを使う場合やIICバスインタフェースを使わずI/Oポートを使用する場合など実現方法はいくつかあります。また、ビット同期回路のように、回路を補助する機能があり、それぞれの機能を考えて、正しく使う必要があります。

(T.M.)

参考文献
ルネサス32ビットRISCマイクロコンピュータ SH7080グループ ハードウェアマニュアル



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