一般的にオシロスコープは、電位差を2次元のグラフに表示します。これを時系列に表示しますが、アナログ入力で2次元表示する為にサンプリングレートが非常に高くなっている為、入力本数が2〜4CHであるのが一般的であり、非周期的な複数の波形を同時に観測する用途には向いていません。
逆に、非周期的な複数の信号を同時に取得する場合に、ロジックアナライザは向いていると言えます。ロジックアナライザは、一般的に、16〜48CHといった多くの入力を備えており、波形記憶用のメモリを持っている為です。また、多くのトリガ機能を備えている為、特定のタイミングでの波形を取得したい場合に有効です。
ロジックアナライザは、デジタル回路用ですので、電圧の高低は精密には表示されず、単純にHiかLoで表示される仕様になっていることが多いです。
使用方法を、順を追って説明します。
今回、例として、シリアル通信の送信データを確認したいと思います。
シリアル通信に関しては、
2005年9月7日発行の技術レポート「シリアル通信とは?」をご参照ください。
マイコンと、ロジックアナライザの設定を以下に示します。
| 表1 マイコンの設定 |
| 設定項目 |
設定内容 |
| 通信モード |
調歩同期式モード |
| パリティビット |
無し |
| ストップビットレングス |
1ビット |
| 通信速度 |
2400bps |
| 転送データ |
0x55 |
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| 表2 ロジックアナライザの設定 |
| 設定項目 |
設定内容 |
備考 |
| 測定する端子 |
RS-232Cコネクタ 2pin(TXD) |
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| 分解能 |
100MHz |
(3)-3 参照 |
| トリガ設定 |
端子の立ち下がりエッジ/立ち上がりエッジ |
(3)-3 参照 |
| スレッショルドレベル |
0V |
(3)-3 参照 |
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(3)-1 機材の準備
まずは、機材の準備を行います。
必要な機材は、以下の2点となります。なお、ロジックアナライザには、プローブ(*1)やグラバー(*2)などを含みます。これらの基板との接続を行う機器に関しては、ロジックアナライザ本体の付属品として用意されている場合がほとんどです。
| a. |
ロジックアナライザ(図1) |
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Hewlett-Packard(現Agilent Technologies)製
54645D MIXED SIGNAL OSCILLOSCOPE
16チャネルのロジック・チャネルと、2チャネルのオシロスコープを持つ。 |
| b. |
波形を取得する端子が搭載されている基板(図2) |
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ルネサス テクノロジ製
Renesas Starter Kit for H8/38347
当社にて新入社員研修用に購入した市販のH8/38347マイコンの学習/評価ツール |
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| 図1 ロジックアナライザ |
図2 使用基板 |
| (*1) |
プローブ: |
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測定する回路からの信号をロジックアナライザ本体に入力するケーブル。 |
| (*2) |
グラバー: |
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プローブの先端に接続し、端子を掴む為のクリップ。近接している端子とショートしづらい構造になっており、細かい端子などを掴むのに使用する。 |
(3)-2 基板とロジックアナライザの接続
基板波形を取得したい端子とロジックアナライザを接続します。
基板の電源が入っている状態で、グラバーを接続しようとすると、特に端子が密集している場合などには、グラバーの先が他の端子と触れてしまい、測定対象となる端子と他の端子がショートしてしまい(図3)、場合によっては基板の故障にも繋がります。
必ず電源が入っていない状況で接続を行う必要があります。
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| 図3 ショートする危険のある接続 |
最初に、ロジックアナライザのGNDプローブに接続されたグラバーと基板上のGND端子を接続します。
次に、基板上の波形を取得する対象となる端子と、ロジックアナライザのプローブを接続します。(図4)
今回の例の場合は、グラバーをRS232CコネクタのTXD端子に接続します。
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| 図4 グラバーの接続 |
(3)-3 ロジックアナライザの設定
しっかり接続されていることを確認したら、ロジックアナライザの電源を入れ、各設定を行います。
・ 分解能と時間の設定
分解能の設定を行います。
これは、測定の細かさの限界を設定します。どのくらいまで設定可能かは、使用するロジックアナライザの性能に依ります。
例えば、分解能50MHzであれば、50MHzの周期で、サンプリングを行います。
よって、何秒毎に入力信号のサンプリングを行うかは、以下の式で求められます。
サンプリング秒数 = 1/(50×106) = 0.02×10-6 = 20ns
また、表示される時間の設定を行います。
この設定は、例えば1秒間の範囲の波形を見たいのか、それとも1μ秒の範囲の波形を見たいのかというところで、画面上で表示される範囲の設定を行います。
・ スレッショルドレベル(threshold level)の設定
スレッショルドレベルとは、閾(しきい)値のことで、この設定によって、ロジックアナライザで、「何VまでをHiとし、何VまでをLoとするか」の表示を決めることが可能です。
このスレッショルドレベルを超えているか否かで、ロジックアナライザのHiかLoかの表示(出力)が切り替わります。以下に、実際に入力されているアナログ波形と、スレッショルドレベルとの関係を示します。(図5)
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| 図5 実際に入力されるアナログ波形とロジックアナライザで表示される波形 |
今回使用しているロジックアナライザには、入力電圧の設定として4つから選択可能です。それぞれの内容を以下に示します。
| 表3 入力電圧の設定値 |
| 名称 |
スレッショルドレベル |
論理レベル |
| TTL(*3) |
1.4V |
Hiレベル:2V〜VCC
Loレベル:0V〜0.8V |
| CMOS(*4) |
2.5V |
Hiレベル:0.7V×VCC〜VCC
Loレベル:0V〜0.3V×VCC |
| ECL(*5) |
-1.3V |
Hiレベル:-0.8V
Loレベル:-1.8V |
| 任意設定 |
任意 |
- |
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| (*3) |
TTL : Transistor-Transistor Logic |
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通常5V単一電源のモノリシック集積回路として作られている。 |
| (*4) |
CMOS : Complementary Metal Oxide Semiconductor |
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単一電源でCMOSレベルの入出力インターフェースで統一された集積回路。 |
| (*5) |
ECL : Emitter-Coupled Logic |
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バイポーラトランジスタよって電流を制御することで論理回路機能を実現する集積回路の論理素子の一種である。 |
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これらの設定を行い、出力波形を観測します。
今回の測定では、RS-232Cコネクタの端子にプローブを接続する為、スレッショルドレベルを0Vに設定しています。
RS-232Cインターフェースの規定では、出力電圧は、"1"で-5〜-15V、"0"で+5〜+15Vに、入力電圧は-3V以下で"1"、+3V以上で"0"と判断することが決まっている為です。
なお、上述した種類の他の端子から波形を出力する場合でも、それぞれの端子の特性、電圧に沿った設定にする必要があります。
例えば、対象とする端子がオープンドレイン出力であれば、(基板設計の話ですが)予めプルアップしておくなどの対処が必要です。
・ トリガの設定
トリガ(TRIGGER:引き金)の設定では、入力されている波形の、どのタイミングから波形を取得するかを設定します。
例えば、SRAMなどの外部メモリとの制御信号である、CS(チップセレクト)信号がアサート(ローアクティブとする)されたときの波形をとりたい、といった場合には、CS信号に接続してあるプローブCHに対して、Hi→Loの立ち下がりをトリガに設定します。そうすると、CSが入った時点から波形が取得できます。
単純な立ち上がり/立ち下がりの設定の他に、5回立ち下がりが発生した場合や、10秒以上Lo状態が続いた場合、などの設定や、複数チャネルのエッジの組み合わせなども可能です。(これはロジックアナライザの性能に依存します)
・ 実際に波形が取得できるのかの確認
ほとんどのロジックアナライザ/オシロスコープには、波形確認用の端子がついており、それにプローブを接続することで、動作チェックが出来ます。
今回使用しているロジックアナライザでは、Loレベル:0V、Hiレベル:5V、1.2kHzでトグル出力されます。
(3)-4 測定
ロジックアナライザ側の設定が完了したら、基板の電源を入れます。
マイコンでは、表1で示した内容のソフトを動作させます。
以下に、主要な操作を紹介します。
・ RUN/STOP
設定した端子からの出力波形のサンプリング開始/停止を操作します。
・ Single/Auto
SingleとAutoのモードを切り替えます。
トリガに設定した信号の変化が発生した時に、1回でストップするのか、一度ストップして繰り返すのか、という指定をします。
Singleでは、こうなったときの波形を見たい、という時に便利であり、Autoであれば、連続した長い波形を目視で取得したい場合に便利です。
・ Auto-Scale
取得対象となる波形の出力中に、波形サイズが上手く設定出来ない、ノイズが大きくて全体像が見えない、などといった場合に、自動的に適切な範囲の表示をする機能です。
この操作は、「取りあえず繋いでどのような波形が出ているのか確認する」といった場合に有効です。
RUNの操作で、サンプリング開始し、マイコンでシリアル通信を開始すると、波形が動き、ロジックアナライザの画面上で波形が出ていることが確認出来ます。(図6)
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| 図6 シリアル通信の波形(トリガを立ち上がりエッジにした場合) |
波形を取得し、もう少し大きい幅の波形が見たい、違う信号線を見たいなどといった場合には、上述したロジックアナライザの設定を変更します。
トリガの設定を変更した場合を図7に示します。
入力端子に対して、立ち上がりエッジで設定していましたが、立ち下がりエッジに変更した為、表示が開始されるタイミングが変わっています。
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| 図7 シリアル通信の波形(トリガを立ち下がりエッジにした場合) |
次に、スレッショルドレベルを変更します。
RS-232Cの信号は、矩形波として入力されますので、時間の設定で、全体が見える設定では、スレッショルドレベルの違いによる変化は見られません。
そこで、時間の設定で、表示する時間を短くし、電圧値の変化が確認できるようにします。
今回、使用しているロジックアナライザは、オシロスコープの機能も備えており、電圧レベルの変化も確認出来ますので、両方表示させ、違いを確認します。
あらかじめ設定しておいたスレッショルドレベル(0V)での波形を図8に、変更後のスレッショルドレベル(+4V)での波形を図9に示します。
画面上側のオシロスコープでの波形で、トリガがかかるタイミングの電圧が違っていることが確認できます。
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| 図8 シリアル通信の波形(スレッショルドレベル0V) |
図9 シリアル通信の波形(スレッショルドレベル+4V) |