タイへの出張は私にとって初めての海外出張でした。初めてだったのはそれだけではなく、初の本格的な設備立上げ作業、初の飛行機搭乗と、初体験の連続でした。それだけに出発前は、
「ちゃんと仕事をこなせるかな・・・」
「もし現場でトラブルが起きたらどうしよう・・・」
「現地のタイ人スタッフとのコミュニケーションは大丈夫かな・・・」
「現地の生活面で困ることはないだろうか・・・」
「空港でちゃんと飛行機に乗れるだろうか・・・」
などなど、何かと不安が多かったです。
特に初の設備立上げ作業ということが一番の不安要素でしたので、出発前にやれることはやり尽くして出張に備えました。
私の役割は電気担当者として、設備がお客様の要求する機能を果たせるように電気/PLCの両方を立上げていくことです。
PLCのCPUは3台あり、モータやバルブの制御はもちろん、計重機、油圧機器、LED表示器などの各機器の制御も行います。またPLCは上位ホストとの通信も行っています。I/O点数は約2000点ありました。
本案件ではすでに基本となるプログラムが存在し、その基本プログラムを元に装置立上げを行います。PLCプログラムを確認した時点で総ステップ数は実に10万ステップ近くありました。
私の本職はソフトウェアの設計製作なので、基本プログラムを確認し、どういったロジックで各機器を制御させているのかを把握し、現場でトラブルが発生したときにすぐ問題箇所を特定し修正できるよう解析を進めていきました。
電気担当者としてはプログラムだけ分かっていても円滑な立上げはできないことは分かっていましたので、電気に関する作業ついて経験の浅さを補うべく準備を行いました。
電気理論の習得や盤図、配線図の読み方の習得、テスターの扱い方やケーブルの作成方法といった実戦的な技術習得を行いました。
初体験となる空の移動を満喫し、飛行機から降りた最初の感想は・・・
「暑い!」
でした。こんなに暑くて工場の中での作業は大丈夫か?とも思いました。
空港ロビーでは数多くのタクシー勧誘に遭遇し、海外初心者らしく引きつった笑顔で「ノーサンキュー」と足早にやりすごし、やっと目的のバスに乗りこみホテルに向かいました。
バスに乗っている間はタイの町並みや風景を見て、異国情緒溢れるとまでは感じませんでしたが、やはり日本のそれとはどこか違い、
「外国に来たんだなぁ」
と改めて実感しました。そして、
「これからどんなことが待ち構えているのだろう」
と胸に期待と不安が交錯したままホテルへと向かうのでした。
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| ホテルから見た風景 |
初日、現場に到着するとまだ機械や配管の据付を行っている状態であり、いろんな箇所で現地の業者さんが作業をしておりました。
そんな状態を見て「これだけの人間が働いているのだから、安全第一を徹底しなければならないな」と肝に銘じました。
はじめの1〜2週間はまだ体がタイの暑さに慣れていませんでした。ちょっとした配線をするだけでも汗が噴出して体をつたっていくのが分かり、すぐ疲れてしまいました。
しかし1ヶ月ほど経つと体が慣れてきたのか暑さが気にならなくなり、疲労感もさほど感じなくなりました。人体というものは不思議なものです。
設備立上げ期間は約2ヶ月半あり、その間機械担当のスタッフと電気担当のスタッフが協力して立上げ作業を行っていきました。
私が所属した電気側の設備立上げは、基本的に下記の流れで行いました。
電気工事(現地業者さん担当)
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配線チェック
↓
電源投入
↓
I/Oチェック
↓
機器などの設定
↓
動作確認
↓
試運転
↓
お客様へ引き渡し
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・電気工事&配線チェック
工事は私が現場入りしたころにはあらかた完了しておりました。配線チェックは基本的に現地業者さんが行い、余裕があるときは私もいっしょに行いました。タイの滞在期間が浅くまだタイ語はよく分からない状態でしたが、配線チェックで『ダイ(良い)』、『マイダイ(悪い)』、『マイチャイ(違う)』というタイ語を覚えました。
・電源投入
配線チェックを終えた後、いよいよ制御盤に電源投入を行います。タイ人の現地業者さんに「電源投入しても大丈夫か?」と聞き、「OK。マイベンラーイ(大丈夫)」と確認が取れ次第電源投入を行いました。
・I/Oチェック
設備が大きかったので2人1組で、トランシーバーを用いながら行いました。
I/Oチェック中に、どうも正常に動作しない信号があり調査すると、なんとトランシーバーの電波(ノイズ)が原因でした。こんなこともあるのかと勉強になりました。この頃には何の違和感も無く『ダイ(良い)』、『マイダイ(悪い)』、『マイチャイ(違う)』の3点セットを使う自分がいました。
・動作確認
I/OがOKとなればいよいよ動作確認に入ります。最初は無負荷・単体での確認を行い、徐々に負荷をかけていきながら連動で確認を行っていきます。自動の動作確認では手などでセンサをさえぎり次々と運転条件を成立させていくので、高速でモノが流れるコンベア部分は大変でした。この頃にはタイ人・日本人問わずスタッフ全員顔見知りになっていました。
・試運転
試運転の初日は朝からピリピリとした空気が流れていました。いつもは笑顔のタイ人スタッフも顔つきが違いました。みんな緊張感を持って試運転に望みました。そして試運転が無事完了したときはみんなで喜びを分かち合いました。
その日は仕事が終わった後、仲の良いスタッフと食事に行きました。おめでたいときに酒を飲むというのは万国共通のようです。
そこから約1ヶ月試運転を続け、試運転後のミーティングでその日に発生した問題点について検討を行い、都度調整して設備のクオリティを高めていくという日々が続きました。
ミーティングでは通訳さんがおられましたので大変助かりました。毎日タイ語と日本語が飛び交う白熱したミーティングとなりました。