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ソフテックだより 第42号(2007年5月23日発行)
現場の声編

「はじめての出張作業」

1.はじめに

私は、4月で入社してちょうど一年の新米社員です。
今回は、私が入社1年目の3月に初めて社外へ1ヶ月という長期出張に出たときのことについてお話します。ある装置を制御するプログラムを作成し、装置の動作確認を行うために出張にいきました。初めての社外作業となり、色々と苦労したり良かったことなどがありましたが、このときの出張作業について紹介したいと思います。

2.システム概要

システムは、半導体を作る過程の一つで半導体製品となるウェハ(※1)に膜付けする装置です。このシステムは、PC4台、PLC(※2)4台とHOST(上位システム)から構成されていて、ウェハを搬送する装置、ウェハの表面に膜付けする装置の2つに分かれます。私は、主にウェハを搬送する装置に携わりました。

システムは、ウェハ処理装置とウェハ搬送装置に分かれています。また、各装置のPLCはネットワークで繋がっています。
図 . 1システム構成図

3.社内作業

今回の開発では、装置を制御するためにPLCを使用したラダ−プログラムを作成しています。
ラダ−プログラムは、シーケンス制御(※3)を行うために用いられるプログラムです。
パッと見はまるで回路図のようで、他のC言語など一般的な言語とは、全然違う印象を持ちました。命令を書いていくというよりも、図を描いていくという感じです。

見た目は、プログラムというよりも回路図のようになります。
図 . 2ラダ−プログラム

今までWindowsアプリケーションの開発しか経験が無く、ラダ−プログラムは初めての経験となります。ソフテックの社員でもほとんどの人がそうですが、私は学生時代にPLCのラダ−プログラムを作成したことがありません。
ただ、そんなことは関係なく上司や先輩に色々と教えて頂きながら、戸惑いながらもソフトを作成していきました。

4.緊張のデバッグ初日

社内でのソフト製作が終了したので、いよいよお客様の元へ行っての装置を使用したデバッグとなります。

少し緊張をしながら現地へと向かった初日、「どうすればいいのかな?」と思いながらドキドキしていたら、担当者の方が私達の前にやってきて、「時間も無いのでさっそく始めましょう」と言って簡単な挨拶のみで作業へと移っていきました。
出張前に私は、入社時の研修で使用した名刺交換の方法の資料に目を通し、多少ですが準備をしていました。そのため、その時はなんだか安心したようながっかりしたような複雑な気分でした。
何はともあれ、それからはソフトのデバッグ作業に入っていきました。
まず、先輩社員は当然のように「I/Oチェックから始めるぞ」と言い出し、私はその手伝いをすることになりました。I/Oチェックはお客様の方で一通り確認済みでしたので、ソフテックでは基本的に装置に取り付けてあるリミットセンサ(※4)の確認を行いました。その他に、非常停止のスイッチの確認を行い、機械制御の開発では安全を第一に作業していくということがわかりました。考えてみれば当たり前のことですが、今までWindowsアプリケーションの開発を行っていて危険はないので気軽に動かしてみていた私には、「なるほどね」と感心した進め方でした。
最低限の安全確認が出来て、いよいよソフトを入れて装置を動かすことになります。だんだんと緊張してきてソフトを入れて動かすのが怖くなっていきます。「大丈夫かなぁ、壊れたりしないよなぁ・・・」と考えながらも、そんなことを言っているヒマはなく、さっそく動かしていくことになりました。

開発を行った装置には大きく分けて2つの動作があります。
1つ目は、PCやタッチパネルからのマニュアル操作で行う動作です。
2つ目は、オートモードでの自動搬送動作です。このモードでは、ウェハに膜付けするための装置まで、ウェハを搬送する動作を自動で行うことが出来ます。
いきなりオートモードでは危険なので、まずはマニュアル操作で少しずつ動かしていきます。タッチパネルから操作ボタンを押すと装置が動いてしまいます。一人で「おぉ〜」と驚いていました。
その後は、装置を動かしてリミットセンサがONしたらちゃんと停止できるかなどの確認をしていき、一通りの安全確認を終了し出張初日は終了となりました。
1日の作業が終了してみると神経を使っていたので、一気に疲れがでました。その日は、1日が一瞬で過ぎてしまったような気がします。

5.デバッグ2日目 〜 動作確認完了

2日目からは、どんどん動作確認に入っていきました。
タッチパネルのボタンを押している間だけ装置が進む単純な移動から始めて、指定した位置に移動する絶対移動、現在の位置から相対的に見た距離を移動する相対移動などの各機能の確認をしていきました。
そして、数日経過し私が作成した部分のデバッグを開始しました。
先輩の作業を見ていて、

(1)
非常停止やリミットセンサで止まるかの安全確認
(2)
マニュアル操作での動作確認
(3)
オートモードでの自動搬送動作確認

と順に確認していけばよいことがわかりましたので、同様に確認作業を進めていきました。
最初は、当然のように上手く動かなくて、
「はぁ、やっぱりダメか・・・」という感じで落ち込んでいましたが、少しずつ動くようになり、なんとかある程度の確認が済みました。
装置が動くようになったときには、自分が装置を制御しているという実感が湧いてきて、最初上手く動かなかった分、余計に嬉しくなりました。

ところが、ある日の朝にお客様からリミット位置に移動しても停止しないという問題を指摘されました。
「何で? 昨日まで止まっていたのに・・・」
と思いながら、原因を調べます。調べてみると、リミットセンサの取り付け位置が悪かったことが直接の原因でした。このときは、ソフトの知識だけではダメでハードのことも知り、そこから問題の原因をどちらにあるか切り分けていく能力が必要となることを知りました。正直言って、ソフトのことだけでも難しいのに、さらにハードの知識が必要なんて大変だなと感じました。

そして、出張に出てから1、2週間が過ぎた頃マニュアルでの個別動作の確認が終了し、いよいよオートモードでの連動動作の確認に入りました。PCから動作の種類を選択し、実行します。
「・・・」
周りが静かになりました。
そして、
「ヴィ〜〜〜ン」
と装置が一斉に動き出しました。
「おぉ〜〜〜!!」
またまた初めて装置を動かしたときのように驚いていたら、今度は自分だけではなくてお客様も一緒に驚いていました。気づくとお客様も集まってきていて、自分達の装置が動いている姿を見ることができて嬉かったようです。
まだ製品を持って移動していたわけではないのに、お客様にも喜んで頂けたことで私には完成した装置の動きのイメージが浮かんできて、とても嬉しかったことを覚えています。

ところが、「これは順調に進んでいくかな?」と思ったら予想外で、動きに変更があったり、色々と問題も発生したりして、ソフトに大きな改造を加えたりなど大変で、そんなに甘い世界ではありません。1週間である程度の動作確認ができていたのに、予想とは裏腹に完成まで1ヶ月ほどかかってしまいました。
結局は、一つ一つ問題を解決していき、色々とドタバタしましたが何とか無事にお客様にソフトを引き渡すことができました。
こうして私の初めての出張作業は終了となりました。

6.初めての長期出張を終えて

この開発は、今までに経験した開発とはずいぶんと内容の違った仕事となり色々と苦労しました。
初めて装置を使用したデバッグで、最初は動かないということもあり、問題が出たときに原因がソフトにあるのか装置側にあるのか判断するのも難しく苦労しました。
また、慣れていない環境であることや装置を動かすということで危険も付きまとってきて大変です。
しかし、苦労した分だけ仕事を終えたときの達成感や満足感はとても大きくなります。
また、機械制御の場合は目の前で自分が作ったソフトが動いている姿を見ることができて、技術者としてはとても嬉しいことでした。
今回の開発に参加し、今までとは違った技術者としての喜びを実感することができました。この気持ちは重要で、今後の作業に影響を与えてくれると思います。
今後も自分が嬉しいと感じることができ、またそれがお客様に高く評価されるような作業をしていきたいと思います。

(Y.R.)

[注釈]
※1
ウェハ:半導体の製造に使われる薄い基板。シリコン製のものが多く使用されています。
※2
PLC(Programmable Logic Controller):
生産設備の自動化に最も多く利用されている機械制御用途に特化したコンピュータ。(シーケンサとも呼ばれます)
※3
シーケンス制御:
決められた順序に沿って、処理を実行していく制御。
※4
リミットセンサ:
動作可能な範囲のリミットを知らせるセンサです。このセンサが入力を受け付けると装置の動作を停止します。

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